超科学

対決

    葵ちゃんが次々に繰り出してくる攻撃を大宣はかわす。

    大宣は次にどんな意図のあるどんな攻撃が来るかわかっているのだ。

    だが逃げているだけでは勝利は訪れない。

    いつかは逃げ疲れて攻撃を食らってしまうだろう。

    そして葵ちゃんの攻撃はかすっただけでも大宣に致命傷を与えるのに充分な威力があったのだ。

    そしてその時はすぐに訪れた。




    葵ちゃんの攻撃をかわしていた大宣の足が疲れからかもつれたのだ。

    大宣は地面にうつ伏せに倒れた。

    倒れた大宣を無表情の葵ちゃんが見下ろす。

    そして無言の葵ちゃんは魔術であたりを爆煙で包んだ。

    あたりの煙やら埃やらがおさまってきて視界がハッキリしてくると、そこには焦げた死体の跡らしきものだけがあり大宣はいなかった。

    そこで葵ちゃんが意識を取り戻した。

    「あ・・・あ・・・私・・・大ちゃんを・・・」

    葵ちゃんは操られていた時の記憶はあるようで、大宣を殺した事は覚えていた。

    葵ちゃんは記憶も魔術も全て取り戻したようだ。

    だが記憶を失っていた時の事も覚えているようで、大宣を殺したショックに堪えきれず意識を失った。

    葵ちゃんが倒れると、それを支えるように抱きしめた大宣が現れた。

    大宣は以前、洋子先輩の真似をして見当識を騙す魔術の不完全版を身に付けていた。

    大宣が消えていたように感じていたのは葵ちゃんだけなのだ。

    だが葵ちゃんだけが「大ちゃんは自分の魔術で焼け死んだ」 と思うだけで良かったのだ。

    早坂教授にかけられた葵ちゃんへの暗示魔術は「大宣が死ぬまで暴走・攻撃は終わらない」というもので「大宣が死んだ」と葵ちゃんが思い込む事で暗示は解けた。

    葵ちゃんの魔術で焼け焦げたと思われた大宣の死体の跡は、実は早坂教授の死体であった。



    再び目を醒ました葵ちゃんに大宣は平謝りした。

    謝る事は山ほどある。

    葵ちゃんの実の母親を殺してしまった事。

    魔術の研究をしていた事を隠していた事。

    死んだフリをした事・・・。



    だが葵ちゃんは大宣の無事をよろこび、泣いてくれた。

    母親の死に思うところはあったようだが「お母さんにはいつ殺されてもおかしくなかったから・・・大ちゃんが殺してなかったら私が殺してたかも知れないし、逆に殺されてたかも知れないから」と気にはしてもしょうがないと自分に言い聞かせている様子だった。

    そして記憶を取り戻した葵ちゃんは早坂教授が何を考えてこのような行動に出たのか、知っているとの事だった。