超科学

海星

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人道的

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 大宣は久しぶりに家に帰ってきた。

 アルバイト出来るようになり、自分で金をある程度稼げるようになった高校一年には家を出て行き寄り付かなくなったので、4年以上ぶりになるだろうか?

 義母である和美と話すとなると何年ぶりだろうか?

 きちんと話し合うのは初めてかも知れない。

    「全ての事を私が知ってる訳じゃないよ。

    むしろ先に卒業した私が知っている事なんてたかが知れているさ。

    知りたい事があるなら他を当たりな」林田さんは突き放すように大宣に言った。





   和美と大宣は交渉する土壌がない。

   紗季から情報を探るべきだと菅原さんは言った。

   電話で事情を聞いた洋子先輩も同意見だった。

 函館の魚市場の食堂で海鮮丼を頼んでいる洋子先輩の周りには沢山人がいる。

 洋子先輩は電話内容を人には聞かれないよう簡単な音声遮断の結界を自分の周りに展開した。



   むしろ洋子先輩は「紗季さんを人質に取って交渉を優位に進めるべきね。

   大宣君、もしかして『人質を取るのは人道的ではない』とか思ってない?

   君は人を殺したのよ?

   厳しい言い方かも知れないけど君に『人の道云々』を語る資格はないわ。

   確かに『一人殺すのも百人殺すのも同じだ』とは考えるべきではないわ。

   それは虐殺者の思考ね。

   ただ『被害を最低限に減らすべきだ』と考えるなら紗季ちゃんを人質に取るのは人道的とすら言えるわね。

   何せ交渉材料は『紗季ちゃんの無事』よ?

 菅原さんにも小紫さんにも危険は及ばない。

 戦闘にすらならない可能性もある。

 その人が死なないかも知れない人道的な可能性を大宣君のくだらない『妹は巻き込まない』ってこだわりで捨てて、本来何の関係もない菅原さんや小紫さんを命の危機に追いやるつもりなんでしょ?

 人道的が聞いて呆れるわ」と少し怒っている様子だった。

 そりゃ怒るだろう。

 菅原さんや小紫さんは洋子先輩にとって「可愛い後輩」であるし、紗季は他人、良いとこ「後輩の血の繋がらない妹」でしかない。

 その血の繋がらない妹の安全を優先する大宣を洋子先輩は「頭おかしいんじゃないか?」と思っていたのだ。





 「洋子先輩の考えはわかりました。

 義母さんと話す前に紗季の周辺を調査してみます。

 何も手掛かりが出て来なければ紗季を人質にする事も考えます。

 それで良いですね?」電話口で大宣は洋子先輩のご機嫌をうかがうように言った。




 「甘い」

 洋子先輩は短く小さな声で吐き捨てた。 
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