超科学

海星

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スパイ

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    洋子先輩は近くにいない。

    もう一人「怪しい」と言われていた菅原さんと小紫さんと合流する事になった。

     しかし、こういった場合どうすれば良いんだろう?

    「お前怪しいんだよ」とでも言えば良いのだろうか?

    良く考えたら、林田さんを疑うなら林田さんの紹介で来た小紫さんも同様に疑わなきゃいけない。

    洋子先輩、菅原さん、小紫さん、林田さん・・・結局葵ちゃんと父親と紗季以外全ての味方を疑わなきゃいけない。

    一度態勢を整えようと自分のアパートに戻ると、そこには葵ちゃんが待っていた。

    ここまでの事を葵ちゃんに話すと葵ちゃんは意外な事を言い出した。

    「・・・で、大ちゃんはどちらの味方につくの?

    別に化学研究室に恩もなければ義理立てする必要も無い訳でしょ?

    場合によっては科学研究室の味方をする訳でしょ?

    私は大ちゃんについていくだけで特にこだわりはないけど」

    そうか、別に化学研究室にこだわる必要はないんだ。

    今までの仲間を全て敵に回してまで化学研究室に義理立てする謂れはない。

    問題は今までの仲間が分かれて戦う事だ。

   そうならない可能性の方が低い。

 化学研究室にこだわりがある人がいるとしたら洋子先輩だけだろう。

 別に守らなければいけない物もなく科学研究室に転籍する事にもこだわりはない。

 だが、スパイをしていた人に「今更化学研究室に戻る気はない」し、洋子先輩には化学研究室に愛着があって離れられないかも知れない。

 だとしたら仲間との決別は決定的になる。

 大宣はいつの間にか「裏切ったのが洋子先輩なら良いのに」と思うようになっていた。

 そうすれば二回生達は裏切った洋子先輩についていけば良いのだ。

 誰一人仲間が欠ける事を心配しなくて済む。





 洋子先輩が帰って来た。

 行きは気ままな列車旅だったようだが、帰りはさすがにこちらの状況を逐一連絡していた事もあり千歳から羽田まで飛行機で帰ってきたようだ。

 魔術師は子弟関係を重んじる。

 大宣が洋子先輩を裏切る事はあってはならない。

 魔術師の社会制度がそうでなくても、大宣が洋子先輩を裏切るような事はあり得ない。

 だがそんな事を大宣が思っている事を洋子先輩は知らない。

 
 洋子先輩は研究室に入ってくるなり大宣に言った。

 「いつ頃から私がスパイだと気づいていたの?」
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