超科学

不可避

　「一度の裏切りは裏切りとは言わないものよ。最初にいた陣営に恵まれていなかったなんて言う事はよくある事なの。

　でもね、何度も裏切る人を信用する人は信用されないのよ？

　私達は一度早坂教授を裏切っているのよ。

　私達のどちらもが化学研究室を裏切るとしても私達はお互いを信用するべきじゃないわ」洋子先輩は言い放った。

　洋子先輩は「私を信じるな。

　私もお前を信用しないから」と言っているのだ。

　確かに忠臣というのはそれだけで価値がある。

　いくら力があっても裏切りを繰り返す呂布のような武将は信用すべきではない。

　「一つだけ聞かせてください。

　どうして化学研究室を裏切ったのですか？」大宣は洋子先輩に言った。

　「私は大学に入った時から、すでに科学研究室のスパイだったわよ？

　別に科学研究室に特別な思い入れがある訳じゃないの。

　私は以前に言ったわよね『私は野良魔術師だ』って。

　私が大学に入れたのも、魔術師としての道がスタートしたのも科学研究室の暗躍のお陰よ？

　そういう意味では私は一度も誰も裏切っていないわ。

　前に私はあなたに言ったわね。

　『正直、早坂のババアの事大嫌いだ』って。

　一度も早坂のババアへの恩を感じた事はないし、私の魔術師としてのスタイルって早坂のババアと似てるのよね。

　あのババア、私にほとんど何も教えてくれなかったのよね。

　私は最初に魔術師としてスタートした時に早坂のババアの魔術師としてのスタイルを真似するしかなかったのよ。

　それで私が魔術師としてなんとか形になった後に、あのババア私のスタイルを真似したのよ。

　私は魔術を教えてくれない指導者の下で、他の魔術師と戦わされたのよ。

　あんた達が敵と戦う時があったでしょ？

　私の場合は全くの経験のない状態で一人で捨て駒として戦わされたのよ。

　今自分が生きてるのも不思議なくらいね。

　でも偶然の要素は一つもなかった。

　利用出来るものは全てを利用して生き残るために出来る全ての事をやって今、私は生きているの。

　そして生き残るためにどんな状況でも自分の信念は曲げなかったわ。

　だからこそ私は生き残ったの。

　その信念がね『二度目の裏切り者を許すな。二度の裏切りを許す者を信じるな』という事よ。

　自分の味方を信じないなんて理不尽を言っているのは承知よ？

　だけどね、たとえ私があなたを信じたとしても科学研空室の連中は大宣君を信用せずに私に大宣君を殺すように言ってくるわ。

　私と大宣君との闘いは不可避なのよ」