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魔法
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「後方で起こった大爆発・・・アレ何だと思います?」アーレスは言う。
神々はジリジリと間合いを詰める。
アーレスは丸腰だ。
何も武器は持っていない。
「アレが魔法ですよ。
もっとも彼女は魔法をマスター出来ず、魔力を暴発させて爆発を起こすくらいしか出来ませんでしたけどね。
彼女に魔法を教えていたのが私です。
彼女に魔法を教えていただけなのに、『いつも二人っきりで何をやっているんだ』なんて嫉妬して喧嘩をしかけてくるヤツもいましたけどね」アーレスは昔を懐かしむように言う。
今となっては魔法を教えた少女も、いつも顔を見れば口喧嘩をしていた男もこの世にはいない。
(寂しいのは数刻だけだ。
私もすぐに後を追うだろう。
涅槃で待っていて欲しい)アーレスは心の中で呟く。
直感の鋭いマールスの読み通り、アーレスはヴァルキュリアに叶わぬ恋心を抱いていた。
マールスの「アイツらを二人っきりにしてはいけない」という焦りは的外れではなかったのだ。
だが、ヴァルキュリアは「魔法を教わっているだけなのに、男の嫉妬はみっともない」とマールスを叱りつけていた。
それはともかく魔法を使える人物は非常に少なかった。
魔法とは「あると話には聞いた事があるが見た事はない。
御伽噺に登場する一角の羽がはえた馬や火を吹く大蜥蜴と一緒で実在しないんじゃないか?」と考えられていた。
しかし魔法は存在した。
人々、とりわけ王族は魔法を恐れた。
見た事のない物を人々は恐れる。
魔法を恐れるのは幽霊を恐れるのに良く似ている。
王は魔法を取り締まり、「魔女狩り」を大々的に行った。
アーレスの母親は魔法による治療院をしていた。
魔法で人を傷つけた事は一度もなかった。
だがアーレスの母親は魔女狩りで火炙りになった。
その時からアーレスの王国嫌いは始まった。
アーレスは魔法が使える事を隠し、魔女の息子であるという差別主義者を優秀さで黙らせ、学者を目指していた。
ある日、アーレスは神討伐で街を訪れていたマリクと出会う。
忌み嫌われていた邪神を育ての親に持ちながら、「神殺しの英雄」の名を欲しいままにしているマリクにアーレスは憧れた。
「運命に翻弄されつつも実力で英雄にまで登り詰めた男・・・私も斯くありたい」そう思った。
アーレスは学者への道をアッサリ捨て、マリクの弟子になる事を熱望した。
アーレスは最初魔法は使わなかった。
だがマリクは言う。
「武器は壊れる。
神々相手ならば尚更だ。
お前は神すらも持たない強力な武器のかわりになる物を持っている。
なぜ使わないんだ?」
魔法にこだわる意味はないとアーレスは思っていた。
だがいつの間にかアーレスは魔法を使わない事にこだわっていたようだ。
アーレスはマリクの指摘により拘りを捨て、魔法をもう一度使おうと決意した。
こうして神殺しの魔法使いは誕生した。
だがアーレスの王国嫌いはかわらず、王国への神殺しのレクチャーは拒否したため、王国に魔法使いはいまだに存在しない。
アーレスは魔法の他に投げナイフを使った。
混戦で魔力を使い続けられないからだ。
魔力切れが命運が尽きる時にならないように、魔法なしでも戦えるようにしていたのだ。
アーレスは相手の眉間、つまり急所をめがけて投げナイフを投げる。
そして魔法を使いながら投げナイフを回収する。
上着の裏には投げナイフが無数に仕込まれていたのだ。
戦場で投げナイフの代わりになるものを拾いながら、魔力を回復させながら戦えば半永久的に戦う事ができる。
実際にはそうは上手くいかない。
投げナイフは欠けるし、敵の体に刺さって回収出来なかったり、どこか回収出来ない場所へ飛んでいってしまったり、激戦の最中で回収が困難だったり・・・。
だが、そんな事は百も承知で理想の戦闘の形を目指すのだ。
アーレスは投げナイフの切れ味にこだわっていた。
かつては「神に刃は通らない」と言われていたのだ。
投げナイフを眉間に突き刺すにはテクニックと投げる腕力と、そして投げナイフの切れ味が必要とされた。
アーレスが神の眉間に突き刺したナイフはしばらく経つと、ナイフの自重で顔を二つに切って下に落ちた。
そこまで切れ味に拘ったからこそ、投げナイフと魔法を使った戦法をアーレスは確立したのだろう。
そこまで投げナイフを研ぎ上げた鍛冶士も大したものだ。
鍛冶士を兼任している男はトールというマリクの弟子だ。
トールはマリクの持つ魔剣グラムに魅せられ「いつしかこのような剣を打ちたい」とマリクやマリクの弟子達の鍛冶士をかって出た。
トールは切れ味を見るために自分でも剣を振るう変り種で、鍛冶士兼マリクの弟子になったのだ。
トールは魔剣はまだ打てないが、鍛冶の腕は確かで成人男性の親指ほどの厚みがあるキュクロープスの斬馬刀でも神を切れるほどの切れ味を実現した。
アーレスは初めて思い通りに事を運んでいた。
投げナイフを神々の眉間めがけて投げ、ある程度投げナイフを放ったら、魔法を使い周囲を火の海にし、神々を近付けなくしつつ投げナイフを回収する。
ある程度投げナイフを回収したら魔力を使うのはやめて投げナイフで神々と戦いつつ、魔力の回復につとめる。
今までは、この作戦が成功することは珍しかった。
・・・といってもアーレスはめざましい戦果をあげていたのだが。
戦いがそこまで長引くことはなかったのだ。
つまり、アーレスの作戦が成功しようが、失敗しようが、マリク達の勝ちは動かなかったのである。
アーレスが眉間に向けて投げた投げナイフを弾き飛ばした神がいた。
アーレスはニヤリと笑うと言った。
「探しましたよ。あなたがこの兵士達を統率して作戦を練っている上官ですね?
この中で探してたんですよ、投げナイフをかわす頭を持つ神が統率者のはずだって。
神は『人間の刃をかわすのは恥だ』なんてあえて受けるのが普通なんですよね?
『神の中に勝利のために人間の真似をするものがいる』としたら、手っ取り早くソイツを見つけるのが早いですよね?
怖かったのはソイツが本当に頭が良くて、偶然外れた風を装って、投げナイフを急所以外で受ける事だったんですよ。
そこまで賢くはなかったみたいですね。
所詮は能なしの中で、少し頭が回るといった程度でしたね。
ホッとしました。」アーレスは挑発しつつ種明かしをした。
「調子に乗るなよ、人間。我が上級兵士長だと見破ったところで貴様はここを突破できないのだ」挑発された上級兵士長は真っ赤な顔で言った。
「ここを私が突破出来なくても、すでにここを突破している者が数名いるじゃないですか。
あなた方は神族の軍勢にとって切り札な訳ですよね?
そのあなた方はすでに突破されてしまっている。
もうあなた方の負けは確定しています。
まぁ、貴方のかしこさは人間と会話出来る、というだけのものでしたね」アーレスは更に上級兵士長を挑発した。
そこまで状況は芳しくない。
マリク達が苦戦して足踏みしてしまいアーレスが敗れる事で上級兵士達はマリク達に追い付いてしまう。
アーレスがここですべき事は最低でも上級兵士長をここで破り、上級兵士達の軍団を無力化させる事だ。
しかし、敵は強敵揃いでしかもその長である上級兵士長はその中でも別格だ。
今までどんな苦境でも迷わず献策してきたアーレスが初めて迷いをみせていた。
「さぁ、どうしましょうかね?」
神々はジリジリと間合いを詰める。
アーレスは丸腰だ。
何も武器は持っていない。
「アレが魔法ですよ。
もっとも彼女は魔法をマスター出来ず、魔力を暴発させて爆発を起こすくらいしか出来ませんでしたけどね。
彼女に魔法を教えていたのが私です。
彼女に魔法を教えていただけなのに、『いつも二人っきりで何をやっているんだ』なんて嫉妬して喧嘩をしかけてくるヤツもいましたけどね」アーレスは昔を懐かしむように言う。
今となっては魔法を教えた少女も、いつも顔を見れば口喧嘩をしていた男もこの世にはいない。
(寂しいのは数刻だけだ。
私もすぐに後を追うだろう。
涅槃で待っていて欲しい)アーレスは心の中で呟く。
直感の鋭いマールスの読み通り、アーレスはヴァルキュリアに叶わぬ恋心を抱いていた。
マールスの「アイツらを二人っきりにしてはいけない」という焦りは的外れではなかったのだ。
だが、ヴァルキュリアは「魔法を教わっているだけなのに、男の嫉妬はみっともない」とマールスを叱りつけていた。
それはともかく魔法を使える人物は非常に少なかった。
魔法とは「あると話には聞いた事があるが見た事はない。
御伽噺に登場する一角の羽がはえた馬や火を吹く大蜥蜴と一緒で実在しないんじゃないか?」と考えられていた。
しかし魔法は存在した。
人々、とりわけ王族は魔法を恐れた。
見た事のない物を人々は恐れる。
魔法を恐れるのは幽霊を恐れるのに良く似ている。
王は魔法を取り締まり、「魔女狩り」を大々的に行った。
アーレスの母親は魔法による治療院をしていた。
魔法で人を傷つけた事は一度もなかった。
だがアーレスの母親は魔女狩りで火炙りになった。
その時からアーレスの王国嫌いは始まった。
アーレスは魔法が使える事を隠し、魔女の息子であるという差別主義者を優秀さで黙らせ、学者を目指していた。
ある日、アーレスは神討伐で街を訪れていたマリクと出会う。
忌み嫌われていた邪神を育ての親に持ちながら、「神殺しの英雄」の名を欲しいままにしているマリクにアーレスは憧れた。
「運命に翻弄されつつも実力で英雄にまで登り詰めた男・・・私も斯くありたい」そう思った。
アーレスは学者への道をアッサリ捨て、マリクの弟子になる事を熱望した。
アーレスは最初魔法は使わなかった。
だがマリクは言う。
「武器は壊れる。
神々相手ならば尚更だ。
お前は神すらも持たない強力な武器のかわりになる物を持っている。
なぜ使わないんだ?」
魔法にこだわる意味はないとアーレスは思っていた。
だがいつの間にかアーレスは魔法を使わない事にこだわっていたようだ。
アーレスはマリクの指摘により拘りを捨て、魔法をもう一度使おうと決意した。
こうして神殺しの魔法使いは誕生した。
だがアーレスの王国嫌いはかわらず、王国への神殺しのレクチャーは拒否したため、王国に魔法使いはいまだに存在しない。
アーレスは魔法の他に投げナイフを使った。
混戦で魔力を使い続けられないからだ。
魔力切れが命運が尽きる時にならないように、魔法なしでも戦えるようにしていたのだ。
アーレスは相手の眉間、つまり急所をめがけて投げナイフを投げる。
そして魔法を使いながら投げナイフを回収する。
上着の裏には投げナイフが無数に仕込まれていたのだ。
戦場で投げナイフの代わりになるものを拾いながら、魔力を回復させながら戦えば半永久的に戦う事ができる。
実際にはそうは上手くいかない。
投げナイフは欠けるし、敵の体に刺さって回収出来なかったり、どこか回収出来ない場所へ飛んでいってしまったり、激戦の最中で回収が困難だったり・・・。
だが、そんな事は百も承知で理想の戦闘の形を目指すのだ。
アーレスは投げナイフの切れ味にこだわっていた。
かつては「神に刃は通らない」と言われていたのだ。
投げナイフを眉間に突き刺すにはテクニックと投げる腕力と、そして投げナイフの切れ味が必要とされた。
アーレスが神の眉間に突き刺したナイフはしばらく経つと、ナイフの自重で顔を二つに切って下に落ちた。
そこまで切れ味に拘ったからこそ、投げナイフと魔法を使った戦法をアーレスは確立したのだろう。
そこまで投げナイフを研ぎ上げた鍛冶士も大したものだ。
鍛冶士を兼任している男はトールというマリクの弟子だ。
トールはマリクの持つ魔剣グラムに魅せられ「いつしかこのような剣を打ちたい」とマリクやマリクの弟子達の鍛冶士をかって出た。
トールは切れ味を見るために自分でも剣を振るう変り種で、鍛冶士兼マリクの弟子になったのだ。
トールは魔剣はまだ打てないが、鍛冶の腕は確かで成人男性の親指ほどの厚みがあるキュクロープスの斬馬刀でも神を切れるほどの切れ味を実現した。
アーレスは初めて思い通りに事を運んでいた。
投げナイフを神々の眉間めがけて投げ、ある程度投げナイフを放ったら、魔法を使い周囲を火の海にし、神々を近付けなくしつつ投げナイフを回収する。
ある程度投げナイフを回収したら魔力を使うのはやめて投げナイフで神々と戦いつつ、魔力の回復につとめる。
今までは、この作戦が成功することは珍しかった。
・・・といってもアーレスはめざましい戦果をあげていたのだが。
戦いがそこまで長引くことはなかったのだ。
つまり、アーレスの作戦が成功しようが、失敗しようが、マリク達の勝ちは動かなかったのである。
アーレスが眉間に向けて投げた投げナイフを弾き飛ばした神がいた。
アーレスはニヤリと笑うと言った。
「探しましたよ。あなたがこの兵士達を統率して作戦を練っている上官ですね?
この中で探してたんですよ、投げナイフをかわす頭を持つ神が統率者のはずだって。
神は『人間の刃をかわすのは恥だ』なんてあえて受けるのが普通なんですよね?
『神の中に勝利のために人間の真似をするものがいる』としたら、手っ取り早くソイツを見つけるのが早いですよね?
怖かったのはソイツが本当に頭が良くて、偶然外れた風を装って、投げナイフを急所以外で受ける事だったんですよ。
そこまで賢くはなかったみたいですね。
所詮は能なしの中で、少し頭が回るといった程度でしたね。
ホッとしました。」アーレスは挑発しつつ種明かしをした。
「調子に乗るなよ、人間。我が上級兵士長だと見破ったところで貴様はここを突破できないのだ」挑発された上級兵士長は真っ赤な顔で言った。
「ここを私が突破出来なくても、すでにここを突破している者が数名いるじゃないですか。
あなた方は神族の軍勢にとって切り札な訳ですよね?
そのあなた方はすでに突破されてしまっている。
もうあなた方の負けは確定しています。
まぁ、貴方のかしこさは人間と会話出来る、というだけのものでしたね」アーレスは更に上級兵士長を挑発した。
そこまで状況は芳しくない。
マリク達が苦戦して足踏みしてしまいアーレスが敗れる事で上級兵士達はマリク達に追い付いてしまう。
アーレスがここですべき事は最低でも上級兵士長をここで破り、上級兵士達の軍団を無力化させる事だ。
しかし、敵は強敵揃いでしかもその長である上級兵士長はその中でも別格だ。
今までどんな苦境でも迷わず献策してきたアーレスが初めて迷いをみせていた。
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