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一流
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「お父ちゃん『一流の男』ってどういう意味?」
「何だ?藪から棒に・・・」
「クラスメイトのお父ちゃんがが言ってたらしいよ?父親が一流だとその背中を見て育った子供が一流になるんだってさ」
「ふーん、『一流』はよくわかんねーけど『一級』ならわかるぜ?
今、おまえが飲んでるのが沸かした一級河川の水だ。
『一級』も『一流』も大差ないだろう。
ほぼ同じもんだ」
「そっかー。
一流って汚く濁ってるものなんだねー」
子供の頃の夢を見た。
ガスも水道も止められていた家では飲料水、生活用水は川から汲んできていた。
そしてドラム缶の中に汲んだ川の水を入れ、火を起こし焚火で沸かしていたのだ。
悠子さんは私にオーダーメイドの制服を私に作らせる時、
「一流になりたければ一流の物を食べ、一流の服を着なさい。
まず形から入る事を私は否定しません。
要は志を高く持ちなさい」と言っていた。
それまでの私は『一流』と『一級』は似たような意味で一級河川の水を飲んでいる父親はほぼ一流だと思っていた。
だから悠子さんに言われ「まず形から入る」事の大事さはわかっているはずなのに・・・。
「早、お前の変装は全くダメだ。
お前の男装は学芸会レベル以下だ。
お前は悠子様に『本当は男だ』と言っていたらしいな?
だったら男くらい普通に演じてみせろ。
形だけで良いんだ。
知ってるか?
喜劇役者のチャップリンは酔っ払いの演技でスターダムに上り詰めたんだ。
でもチャップリンは本当は下戸だったんだぞ?
演じるのに必要な物は経験じゃない。
観察力だ。
早、お前は全く男を見ていない。
お前を見ていたらお前が可愛い物が本当に好きなのはわかっている。
買い物に行っても可愛いぬいぐるみばかりを見ているのを私は気付いている。
だが命令だ。
変装のため可愛くない物も見ろ。男の仕草も学べ。
お前の男装は可愛すぎて思わず抱きしめたくなる」
そう言っている聡子さんは無意識に胸に早を抱きしめ窒息しそうな早が「むーむー!」と暴れている事に気付いていない。
相変わらず『双忍術』の修行は前途多難だが、私は忍者としてそこそこ形になってきている。
火遁、水遁、土遁の術はマスターしたし、勉強を悠子さんや聡子さんに教わり、二人に教わっているからにはあまり情けない成績は取れないと頑張っているせいか、学年で上から20位以内に入るようになった。
今であれば学生としても忍者としても底辺ではないだろう。
そんな自負を抱いている時、二年生の女子の先輩が呼んでいる、との事だった。
「放課後に体育館裏へ来い」との事。
目立つことは何もやっていない。
休み時間はほとんど着席して編み物や縫い物をしているか、料理の本を読んでいる。
休日に友人と遊ぶ事もあるが、友人達は私があまり裕福でない事はわかっているので繁華街で遊ぶ事もない。
生徒会活動にも積極的で品行方正を絵に描いたような模範生徒で成績も上昇している。
異性不純交遊も全くしていないし、本気で先輩に呼び出されるような事はしていない。
友人達は「あぁ・・・アンタ入学してから何回告白された?
私らは『また告白されたの!?まあ早だからしょうがないか』ってあきらめてるけど、好きな男がアンタに告白した挙句フラれた上級生は『〇〇君が一年の女にたぶらかされた』って思っても不思議はないかもね。
アンタ、刺されても大丈夫なようにお腹に雑誌入れときなさい」と私に言った。
確かに告白は一週間に数回だが、ラブレターをもらった数はもう数えていられないほどだ。
きちんと誠意ある告白をしてきた人にはきちんと誠意ある返事をさせてもらっている。
ただ今のところ全員断っているだけだ。
もしかしたら「この人となら是非付き合いたい」と思う男の人がいるのかもしれない。
でもそれで逆恨みして刺されるなんて納得出来ない。
『分身の術』じゃなくて『変わり身の術』を聡子さんに習っておくべきだった。
逆恨みだったとしても何発かは叩かれよう。
相手の女の子は本気で私に告白してきた男の子の事が好きだったのかも知れない。
私を叩いてそれでいくらか気が済めばそれで良い。
私は覚悟しながら放課後、体育館裏に行った。
悠子さんや聡子さんに相談したら、おそらく私が叩かれないようにおさめてくれるだろう。
だけどそれは何か卑怯な気がした。
私が悠子さんや聡子さんとつるんでいる事は知れ渡っている。
私を逆恨みでシメようとする女の子がいないのは、私の後ろにいる悠子さんや聡子さんを恐れてだろう。
だけど今回私を呼び出した彼女はおそらく悠子さんや聡子さんを恐れつつ、それでも私と二人で話をつけようと私を体育館裏へ呼び出したのだろう。
私はその勇気を意気に感じなくてはいけないと思う。
私が一人で体育館裏へ行き、何発か叩かれてそれで話が終わるなら私は叩かれるべきだと思う。
そんな覚悟を決めながら私が一人で体育館裏に行くとそこにいたのは予想外に華奢な少女だった。
背は160センチほどあるので、小柄ではないがとにかく体が柳の枝のように細い。
私は勝手にゴリラのような女に呼び出されたと思っていたので軽く安堵した。
「私の名前は高山晶。
アンタは何にも悪くない。
アンタには恨みもない。
アンタが悪い事をしたと言うなら私と同じ『鬼斬忍法帖』を読んだ事だけよ。
だけど私はアンタの身柄を攫わなきゃいけない。
ごめんなさい。
でも孝行様の治療のためには伊吹様に従うしかないの!」
私は漂ってくる煙をかいでしまった。
そうか、これが煙を嗅がせて敵を眠らせる『眠り火の術』か。
私は薄れていく意識の中でまた悠子さんや聡子さんに心配をかけてしまう事を申し訳なく思っていた。
「何だ?藪から棒に・・・」
「クラスメイトのお父ちゃんがが言ってたらしいよ?父親が一流だとその背中を見て育った子供が一流になるんだってさ」
「ふーん、『一流』はよくわかんねーけど『一級』ならわかるぜ?
今、おまえが飲んでるのが沸かした一級河川の水だ。
『一級』も『一流』も大差ないだろう。
ほぼ同じもんだ」
「そっかー。
一流って汚く濁ってるものなんだねー」
子供の頃の夢を見た。
ガスも水道も止められていた家では飲料水、生活用水は川から汲んできていた。
そしてドラム缶の中に汲んだ川の水を入れ、火を起こし焚火で沸かしていたのだ。
悠子さんは私にオーダーメイドの制服を私に作らせる時、
「一流になりたければ一流の物を食べ、一流の服を着なさい。
まず形から入る事を私は否定しません。
要は志を高く持ちなさい」と言っていた。
それまでの私は『一流』と『一級』は似たような意味で一級河川の水を飲んでいる父親はほぼ一流だと思っていた。
だから悠子さんに言われ「まず形から入る」事の大事さはわかっているはずなのに・・・。
「早、お前の変装は全くダメだ。
お前の男装は学芸会レベル以下だ。
お前は悠子様に『本当は男だ』と言っていたらしいな?
だったら男くらい普通に演じてみせろ。
形だけで良いんだ。
知ってるか?
喜劇役者のチャップリンは酔っ払いの演技でスターダムに上り詰めたんだ。
でもチャップリンは本当は下戸だったんだぞ?
演じるのに必要な物は経験じゃない。
観察力だ。
早、お前は全く男を見ていない。
お前を見ていたらお前が可愛い物が本当に好きなのはわかっている。
買い物に行っても可愛いぬいぐるみばかりを見ているのを私は気付いている。
だが命令だ。
変装のため可愛くない物も見ろ。男の仕草も学べ。
お前の男装は可愛すぎて思わず抱きしめたくなる」
そう言っている聡子さんは無意識に胸に早を抱きしめ窒息しそうな早が「むーむー!」と暴れている事に気付いていない。
相変わらず『双忍術』の修行は前途多難だが、私は忍者としてそこそこ形になってきている。
火遁、水遁、土遁の術はマスターしたし、勉強を悠子さんや聡子さんに教わり、二人に教わっているからにはあまり情けない成績は取れないと頑張っているせいか、学年で上から20位以内に入るようになった。
今であれば学生としても忍者としても底辺ではないだろう。
そんな自負を抱いている時、二年生の女子の先輩が呼んでいる、との事だった。
「放課後に体育館裏へ来い」との事。
目立つことは何もやっていない。
休み時間はほとんど着席して編み物や縫い物をしているか、料理の本を読んでいる。
休日に友人と遊ぶ事もあるが、友人達は私があまり裕福でない事はわかっているので繁華街で遊ぶ事もない。
生徒会活動にも積極的で品行方正を絵に描いたような模範生徒で成績も上昇している。
異性不純交遊も全くしていないし、本気で先輩に呼び出されるような事はしていない。
友人達は「あぁ・・・アンタ入学してから何回告白された?
私らは『また告白されたの!?まあ早だからしょうがないか』ってあきらめてるけど、好きな男がアンタに告白した挙句フラれた上級生は『〇〇君が一年の女にたぶらかされた』って思っても不思議はないかもね。
アンタ、刺されても大丈夫なようにお腹に雑誌入れときなさい」と私に言った。
確かに告白は一週間に数回だが、ラブレターをもらった数はもう数えていられないほどだ。
きちんと誠意ある告白をしてきた人にはきちんと誠意ある返事をさせてもらっている。
ただ今のところ全員断っているだけだ。
もしかしたら「この人となら是非付き合いたい」と思う男の人がいるのかもしれない。
でもそれで逆恨みして刺されるなんて納得出来ない。
『分身の術』じゃなくて『変わり身の術』を聡子さんに習っておくべきだった。
逆恨みだったとしても何発かは叩かれよう。
相手の女の子は本気で私に告白してきた男の子の事が好きだったのかも知れない。
私を叩いてそれでいくらか気が済めばそれで良い。
私は覚悟しながら放課後、体育館裏に行った。
悠子さんや聡子さんに相談したら、おそらく私が叩かれないようにおさめてくれるだろう。
だけどそれは何か卑怯な気がした。
私が悠子さんや聡子さんとつるんでいる事は知れ渡っている。
私を逆恨みでシメようとする女の子がいないのは、私の後ろにいる悠子さんや聡子さんを恐れてだろう。
だけど今回私を呼び出した彼女はおそらく悠子さんや聡子さんを恐れつつ、それでも私と二人で話をつけようと私を体育館裏へ呼び出したのだろう。
私はその勇気を意気に感じなくてはいけないと思う。
私が一人で体育館裏へ行き、何発か叩かれてそれで話が終わるなら私は叩かれるべきだと思う。
そんな覚悟を決めながら私が一人で体育館裏に行くとそこにいたのは予想外に華奢な少女だった。
背は160センチほどあるので、小柄ではないがとにかく体が柳の枝のように細い。
私は勝手にゴリラのような女に呼び出されたと思っていたので軽く安堵した。
「私の名前は高山晶。
アンタは何にも悪くない。
アンタには恨みもない。
アンタが悪い事をしたと言うなら私と同じ『鬼斬忍法帖』を読んだ事だけよ。
だけど私はアンタの身柄を攫わなきゃいけない。
ごめんなさい。
でも孝行様の治療のためには伊吹様に従うしかないの!」
私は漂ってくる煙をかいでしまった。
そうか、これが煙を嗅がせて敵を眠らせる『眠り火の術』か。
私は薄れていく意識の中でまた悠子さんや聡子さんに心配をかけてしまう事を申し訳なく思っていた。
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