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名案
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イチローとすると訳がわからない。
寛ごうとしていたら突然あらわれた少女に軍部に連れてこられたのだ。
しかもイチローは来客のはずなのに歓待されるどころか敵意丸出しの態度を取られる、その上「勝負しろ」と吹っ掛けられ、一方的に不利なイカサマ勝負をさせられる。
イチローが生きてきた中で女性にここまであからさまに嫌われた経験はなかった。
しかも目の前にいる、対戦に関わった3人の女性達だけでなく観戦していた女性達、恐らくは大河の部下達に汚物を見る目で見られている。
適性検査の結果が全て良ければ少しは尊敬されたかも知れない。だが、適性検査は模擬戦を除き酷い結果だったのだ。
「何だか帰りたくなってきたなぁ・・・それが無理ならさめざめと泣かせてくれ・・・」イチローは落ち込みながら呟いた。
大河は人工授精のため、両親をほとんど知らない。
だが書類上両親が誰であるのかは理解している。
母親とは生後二ヶ月までしか一緒にいなかったが、彼女の名前をつけたのは彼女の母親であった。
彼女の「大河」という名前は第二次世界大戦で活躍した「タイガー戦車」もしくは「ティーガー戦車」から取られている。
大河の母親は自衛官だ。
会った事もないが大河の父親は前時代の防衛大学校卒業のキャリア自衛官だ。
大河は生まれた時から軍人になる事を望まれ、自分でもその道を歩んで来たのだ。
大河にとって今回の大敗北は初めての挫折であった。
イチローに言わせれば「一度くらい負けたからって何だって言うんだよ?負けから学ぶ事も多いだろ?」というものだ。
だがこの時代の、特に軍部の勝負はとにかく数が少ない。
それに「負けちゃった。いや~良い勉強になった」では国同士の戦いで許されない。
軍人に求められるのは「常勝不敗」である。
大河はどのように上司に報告すれば良いか、頭を抱えていた。
適性検査は確かに酷い結果だった。イチローのパイロット適性は低い・・・というかパイロット適性はない。
だが何のための適性検査なのか?パイロットとしての資質を見るためのものではないのか?
「パイロットとしては資質は低いですが、模擬戦では彼に全く歯が立ちませんでした」とでも上司に報告すれば良いのだろうか?そんな報告をすれば自分自身のパイロット適性を疑われてしまう。
ふと大河は名案を思いついた。
イチローを部下にしてしまおう。
ここでイチローを手放す事は簡単だ。なんせイチローはパイロット適性がないのだから。
だがイチローは民間に放たれたとしても「イザナミ」で驚異的なスコアを叩き出し、早かれ遅かれもう一度軍部に連れてこられるだろう。
そうすればイチローは軽蔑すべき男達の部下になるかも知れない。
しかもイチローが男達の部下になってしまうと大河の部隊では模擬戦闘でイチローのいる部隊には勝てない。
男共にデカい顔をさせるのは大河にとって我慢ならない。
「おめでとう、試験合格よ」大河はイチローに右手を差し出した。
訳がわからない。何故マイナス点で試験合格なのか?この時代の一般常識は全くわからなかったので、適性検査と一般常識テスト双方で最低点の自信がある。それより何よりイチローにとって女性の手を握るのは初めての行為だった。
大河は「何でこの男はこんなにびびっているのだろう?」と思ったという。
寛ごうとしていたら突然あらわれた少女に軍部に連れてこられたのだ。
しかもイチローは来客のはずなのに歓待されるどころか敵意丸出しの態度を取られる、その上「勝負しろ」と吹っ掛けられ、一方的に不利なイカサマ勝負をさせられる。
イチローが生きてきた中で女性にここまであからさまに嫌われた経験はなかった。
しかも目の前にいる、対戦に関わった3人の女性達だけでなく観戦していた女性達、恐らくは大河の部下達に汚物を見る目で見られている。
適性検査の結果が全て良ければ少しは尊敬されたかも知れない。だが、適性検査は模擬戦を除き酷い結果だったのだ。
「何だか帰りたくなってきたなぁ・・・それが無理ならさめざめと泣かせてくれ・・・」イチローは落ち込みながら呟いた。
大河は人工授精のため、両親をほとんど知らない。
だが書類上両親が誰であるのかは理解している。
母親とは生後二ヶ月までしか一緒にいなかったが、彼女の名前をつけたのは彼女の母親であった。
彼女の「大河」という名前は第二次世界大戦で活躍した「タイガー戦車」もしくは「ティーガー戦車」から取られている。
大河の母親は自衛官だ。
会った事もないが大河の父親は前時代の防衛大学校卒業のキャリア自衛官だ。
大河は生まれた時から軍人になる事を望まれ、自分でもその道を歩んで来たのだ。
大河にとって今回の大敗北は初めての挫折であった。
イチローに言わせれば「一度くらい負けたからって何だって言うんだよ?負けから学ぶ事も多いだろ?」というものだ。
だがこの時代の、特に軍部の勝負はとにかく数が少ない。
それに「負けちゃった。いや~良い勉強になった」では国同士の戦いで許されない。
軍人に求められるのは「常勝不敗」である。
大河はどのように上司に報告すれば良いか、頭を抱えていた。
適性検査は確かに酷い結果だった。イチローのパイロット適性は低い・・・というかパイロット適性はない。
だが何のための適性検査なのか?パイロットとしての資質を見るためのものではないのか?
「パイロットとしては資質は低いですが、模擬戦では彼に全く歯が立ちませんでした」とでも上司に報告すれば良いのだろうか?そんな報告をすれば自分自身のパイロット適性を疑われてしまう。
ふと大河は名案を思いついた。
イチローを部下にしてしまおう。
ここでイチローを手放す事は簡単だ。なんせイチローはパイロット適性がないのだから。
だがイチローは民間に放たれたとしても「イザナミ」で驚異的なスコアを叩き出し、早かれ遅かれもう一度軍部に連れてこられるだろう。
そうすればイチローは軽蔑すべき男達の部下になるかも知れない。
しかもイチローが男達の部下になってしまうと大河の部隊では模擬戦闘でイチローのいる部隊には勝てない。
男共にデカい顔をさせるのは大河にとって我慢ならない。
「おめでとう、試験合格よ」大河はイチローに右手を差し出した。
訳がわからない。何故マイナス点で試験合格なのか?この時代の一般常識は全くわからなかったので、適性検査と一般常識テスト双方で最低点の自信がある。それより何よりイチローにとって女性の手を握るのは初めての行為だった。
大河は「何でこの男はこんなにびびっているのだろう?」と思ったという。
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