鋼鉄のアレ(仮題)

海星

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出産

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    ほぼ全ての女性が処女である。
    そしてほぼ全ての男性が童貞である。
    だがほぼ全ての女性が出産を経験する。
    30歳までに二人の子供を産む事が女性には義務付けられている。
    だが出産後二ヶ月間は育児をせねばならず、出産はやりたい事がある女性にとっては足枷となった。

    出産が免除される職がいくつかある。
    あまりいない農業従事者は出産が免除された。彼女達が食物を生産しないという事は国で生活する全ての人々が飢えてしまうからだ。
    医療関係者も出産が免除された。リサは出産が免除されていた。
    リサは母親を嫌っていたわけではないが、自分に母親と同じ血が流れていて、自分やその子供が母親のようになる可能性も排除出来なかったので「自分は母親になるべきではない」と思っていた。この時代遺伝が重視されていたのだ、だからこそ女性達は優秀な遺伝子を求め、偉人の冷凍精子に人気が集まり近親化が進んだのだ。
    なので母親の人となりがわかるような年齢になると、リサは出産しなくても良い職業を目指し、結果的に看護師になった。

    大河も出産は免除されている。
    自衛官も出産は免除されているのだ。
    免除されていても、出産が禁止されている訳ではない。「自分の遺伝子を未来に残したい」と思うのは当然の欲求であり、自衛官でも看護師でも出産を希望するものは少なくない。
    大河も遠くない未来に退役し、出産しようと思っていた。

    イチローは自衛官になった。
    だが厳密な意味では他の自衛官とは違った。
    何に近いか・・・良く言うと「芸能人」「プロスポーツ選手」悪く言うと「派遣社員」「契約社員」と言ったところか、いや「プロゲーマー」と言うべきかも知れない。

    イチローは雇用契約を結んで自衛隊で働くが、正確には個人事業主で契約が切れれば自衛官ではなくなる。当然社会保険にも加入していない。必要なら自分で加入しなくてはならないのだ。
 「つまり傭兵か」イチローは呟いた。
 「俺が国家公務員でなくて傭兵である、という事はつまり俺は雇われればどこの国の味方になっても良いという事か?雇い主が国でなくとも傭兵部隊でも最悪テロ組織であってもかまわないって事だよな?」イチローは大河に尋ねた。
 「その質問には答え辛いわね。仮にあなたがテロ組織に与する存在だとしたら、私はあなたを立場的に殺さなくてはいけないわ。あなたが他の国に味方しようとしてもそれは同様ね、『亙一郎が日本の敵である』という事になった時点で私はあなたを殺さなくてはならないわ、つまりはそういう事よ。質問の答えになったかしら?」大河は肩をすくめそう言った。
 なるほど「味方になれば捨て駒として利用するし、敵になるなら全力で排除する」という事だ。
 自衛隊からイザナミの機体を借りねば何も出来ない現時点では、自衛隊に入るしかないって事か。

 「それともう一つ言い忘れてたけど」大河はイチローに白々しく言った。

 「公式な模擬戦で国同士の争いで命を落とす事はないけど、国境沿いでの小競り合いやテロ組織掃討任務では相手はこちらの命を狙ってくるからね。こちらも相手を殺す気で挑んでるし」
 「そういう命にかかわる事は一番最初に言わなきゃダメなんじゃないの!?聞いてないよ!」
 「聞いてる訳ないでしょ?言ってないんだから」
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