彼女の独裁は止められない!? 〜超絶美女たちが支配する一党独裁国家に転生したら、絶対美少女の次期総書記様に気に入られた〜

歯牙内かつきち

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第一章:独裁の萌芽!?華の国ツバキ市の腐敗

第4話:大スキャンダル!?オウとターニャの関係

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 どのくらいそこで呆けていただろうか……。
 
 俺はずっと尻餅をついた体勢のまま動けずにいた。
 
 不意にコテージの入り口が開き、玄関から人が出てきた。
 
 出てきたのはもちろんオウであった。しかし、もう一人若い女が出てきた。
 
 煌びやかな服装で上流階級のファッションを身に付けた、明らかに警察関係者ではない姿だった。
 
  オウが肩を抱いており、大事そうにエスコートしている。顔はうつむいてよく見えない。

「ターニャ様、まずは自宅に戻って落ち着きましょう」
 
 足元がおぼつかない女を支えながらオウは言った。
 
 あのオウが、こうまでして丁寧に対応する相手、そして、ターニャという名前。
 その二つで女が誰か俺は心当たりがついた。
 
 女はターニャ・ライ。
 
 この市のトップの妹だ。
 確か弁護士をやっており、やり手だという噂だ。もちろん、それは弁護士としての能力でなく、姉の権力を上手く使って蓄財する能力のことだが。

 この市のVIP中のVIPが、死体が出たというコテージから出てきた。
 しかも、憔悴した様子で。
 
 当然、ターニャはその死体と何らか関わっているのであろう。ターニャが殺したという可能性も大きい。

 これは大スキャンダルとなる。いくら市を牛耳っていようとも、親族が殺人事件を起こしたら、中央が黙ってない。
 
 だとしたら、権力者がやることはひとつ……、
 ――隠蔽だ。

 つまり、ターニャは誰かをこのコテージで殺害した。
 そして、それを揉み消すためオウはここに来た。いや、呼ばれたのか。

 先ほどの思力は、コテージの中にいるであろう捜査関係者を隠蔽に協力させるためであろう。
 
 だとすると、俺の立場は今非常にマズい。
 なぜなら俺は今、オウとターニャが事件の現場から出てくるところを目の当たりにしている。

 もし、先ほどのオウの思力が俺を廃人にするつもりで放たれたものなら……、そして、コテージから数メートル離れた俺のところまで届く思力を使ったということは十分その可能性はあるのだが、俺がただ尻餅ををついてるだけなのは、オウにとっては、都合が悪い。

「おい、そこのお前!!」

 案の定、オウは俺の存在に気づき怒気を向けてきた。
 
 「どっかでサボってやがったな。だから男は!手間をかかせやがって。」
 
 そう言って俺を支配するための思力を練りだした。

  もう一瞬後には覚悟を決める時間もなく俺は廃人になってるであろう。
 
 なんとかならないか、せめてもの抵抗で、俺はオウが炎を作れないよう、辺りを湿らせるイメージの思力を練った。こんな弱い思力ではすぐにオウの炎は勢いよく燃え盛り、時間稼ぎにもならない。

 その時、ターニャがよろめいた。

「ターニャ様!」

 オウは、俺に向けようとしていた思力を、霧散させ、ターニャを抱き止めた。

「大丈夫です。オウ様。ただ今日はしばらく一緒にいてくださりませんか」

「わかりました。もちろんですとも」
 
 オウはそう言ってターニャをより強く支えた。そして、俺を睨み、

 「おい、お前は明日までここを見張れ。私の許可なく誰も入れるな」

 と怒鳴った。

「は、はい!!。承知しました!」
 
 俺は尻餅の体勢から急いで直立不動の体勢になり、大声で命令を受けた。
 
その時には、オウはターニャを支えながらこのホテルの本館に向かっていった。


□ ■ ◆ ■ □
 
「あ。危なかった」
 
 今日の仕事が明日までの見張りになってしまったが、命があるだけましだ。
 
 オウも俺を廃人にするより、見張りにでも使った方がましだと思ったのだろう。
 
 後は適当に関係者がいなくなるまでここに突っ立って、隙を見つけて帰るだけだ。
 
 誰も俺の所属なんか覚えてないし、後から咎められることもないだろう。
 
 しばらくするとコテージから捜査員が数名出てきた。もちろん、全員女性だ。
 
 オウの思力を受けているだろうにも関わらず見た目はまったく普通の表情だ。
 
 思力の弱い者(=男)には、致命的であるが、強い者(=女性)にとっては、少し脅されたくらいなのだろうか。
 
 反対にコテージに入っていく者もいた。
 死体を運ぶ救急だ。
 誰も入れるなとは言われたが、流石にこれはノーカンだろう。
 
 救急は捜査員と相談しながら中に入っていった。
 
 ホテルは、敷地内が全面立ち入り禁止になっており、野次馬がいない。そのため視線避けなどのめんどくさいことをしなくていい。

 俺は本当に立っているだけであった。
 
 少しして死体が運ばれてきた。

 顔は隠されているが、他はそのままだ。
 ちらりとしか見えなかったが、外傷はない。服装や肌の色から外国人らしかった。
 
 「合星国人か?いや、英聖国人か」
 
 死んだのが外国人なら、さらに外交問題にもなる。
 
 つくづく今日この現場に配属になったことを呪った。

 いつ、どんなことが下っ端に降りかかるのかわかったもんじゃない。
 
 死体をのせた運搬車が出発し、他の捜査員も本館の方へ移動し始めた。
 
 とりあえず、現場での捜査は一旦終了となるわけだ。
 あとは、俺がここで1日現場保全という体裁で突っ立っているだけだ。
 
 現場監督が、俺の交代の手配を忘れずにしてくれるのを俺は祈った。
 
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