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第二章:独裁の予兆!?中央政治局常務委員《フラワーナイン》の選抜

第7話:高級茶ではお口に合わない!?ティータイムで話される事

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   中央政治局常務委員会ティータイムが開催される部屋は予想に反して質素であった。

 華の国の最高権力機関の会議なのだから、豪華絢爛な部屋で、高級な飲食物が出されるようなものを想像してたが、実際は本当にどこでもあるような会議室に、シンプルな円卓があるだけであった。
 
 俺が茶を淹れなければ、基本的に飲み物もでないそうだ。
 
 その円卓に座る面々。中央政治局常務委員フラワーナインの存在感は、質素な部屋と逆に、圧倒的であった。

 一人一人が、美の化身や女神、天使などと形容しても足りないほど美しい。
 
 エリートが集まる武装警官部隊でも美女揃いで驚いたが、中央政治局常務委員フラワーナインは、当然であるがレベルが何段も違う。
 
 シーの付き人のようなことをしているので、美女には慣れたと思っていたが、シーと同じ、いやそれ以上の美女が九人揃うと、その存在感だけでクラクラして立っているのがやっとのほどだ。

 「シー同志。君のお気に入りが淹れた茶か。ここで、君のお気に入りが粗相を起こせば、昨日のようには済まないからな」
 
 シーの言葉に最初に反応したのは、序列三位、国務院総理のオンだ。童顔で本来は天使のような美しさだが、今日は昨日に続き、シーに怒気を向けている。
 
 「もちろんです。オン様。ルーはただの給仕です」
 
 シーは相変わらず澄ましている。
 
「では、本題に入る前に少し、シーが用意させたお茶楽しみましょう。文字通りティータイムですね」
 
 女神のような柔らかい声でフーが中央政治局常務委員フラワーナインの面々に声をかけた。
 
 「ふん、この茶が美味しいか。ただの安物ではないか」
 
 フーの掛け声に反発するように一人の女が声を発した。
 
 シュウ・シンヒョウ。
 序列九位。現、党中央政法委員書記長ガーデンキーパーだ。
 
 それぞれが圧倒的な存在感を放つ中央政治局常務委員フラワーナインの中でも、異質な存在感を出していた。
 
 中央政治局常務委員会ティータイム参加者は、スーツか国民服を着用している。
 そして、各々さらにさり気ない装飾をしている。

 例えば、フーは薄手のスカーフを国民服に合わせている。
 華の国では、人の上に立つには、お洒落も重要な要素なのだ。
 
 とはいえ、派手な格好は当然ご法度だ。あくまでさり気ないお洒落が重要なのだ。
 
 そんな中、シュウだけは、ひと目で高級と分かるスーツに、場に相応しくない、胸の開いたシャツを合わせて、肉体美をこれでもかとアピールするような格好だ。
 
 芸能人がするようなら華の国で、誰もが憧れるようなファッションであるが、為政者がするには派手過ぎる格好だ。
 
 どことなくボアに通ずるものがある。
 
 実際、シュウとボアは繋がっていたのだから似た者同士なのだろう。
 
 「ルー。この茶葉は安物なのか?」
 
 シュウの発言に対して、シーは突如俺に質問投げてきた。
 
 「い、いえ。ロサ・キネンシス市の量販店で購入しましたが、売っているものの中では高級なものを購入しました」
 
 「ルーの実家ではこのくらいの茶葉を使っていたのか」
 
 「い、いえ、まさか。こんな高級な茶葉、特別なお客様が来たときなど以外はもったいなくてとても使えないです」
 
 「そうか。庶民が特別な時にしか使えない茶葉。それを安物とこき下ろすのですか。一体いつから、我々中央政治局常務委員フラワーナインは、そんな傲慢で贅沢者になったのでしょうか」
 
 最後の一言は明らかにシュウに向けた発言だ。
 
 シーの発言を受けて、シュウは明らかに表情に怒気がこもった。ただ何も言い返しはしなかった。
 
 「いつもより少し高級な茶葉を使って丁寧淹れる。そして、それを特別な日に楽しむ。そんなささやかな喜びを華の国全土に広げるのが我々、党の使命だったはず。それが今や、経済成長に踊らされ、強者だけが享楽を得て、さらに、それが正しいかの風潮さえある。ボアの暴走は、そんな空気感が起こした必然だったのでしょう。華の国を歩みを本来の道に戻すためにも、ボアには厳罰を与えるべきです」
 
 「な、これとボア同志の事件とは話が違うだろう!!」
 
 これが俺に茶を入れさせた理由なのか。

 シーは茶を批判したシュウ発言を逆手に取りボアの話まで膨らませてしまった。
 
 ボアは、現在党に拘束されツバキ市の書記長は解任されてるが、まだ、罪状は確定されていない。取り調べの結果、無罪とし、カムバックも可能なのだ。
 
 シュウはじめ、ハクモクレン閥はそれを狙っているのだろう。
 ボアほど力と欲を兼ね備えた者はそうはいないのだ。
 
 「そもそも、国家を裏切り亡命しようとした輩の証言自体が疑わしいのだ。ボアは、その犠牲者だ。本来は、私、党中央法政委員書記長ガーデンキーパーが取り調べ行う管轄のはずだ。それをフー同志の権限で行っている。これは越権行為だ」
 
 「シュウ。あなたとボアが、懇意であったことはすでに分かってます。公平には出来ないんでしょう。また、オウの亡命は国家の危機的状況です。当然、党総書記である私が責任を持って対処すべき事件です」
 
 緊張感が一気に高まった。すでにフーとシュウは、薄っすらとではあるが思力装ドレスを纏い出している。一触即発という雰囲気だ。
 
 フーとの会談のあと、中央政治局常務委員会ティータイムではよくあることだと、シーは笑って言っていた。

 だから、俺は半分冗談だと思っていたのだか、こんな臨戦態勢になるとは。
 
 他の面々も思力を練り上げつつある。
 
 なにかのきっかけで、フー率いるブルーローズ閥とシュウを中心としたハクモクレン閥の闘いになる状況になった。
 
 「党員資格永久剥奪と無期懲役。それがボアに相応しいかと」
 
 そんな緊張感の中、いつも通りの澄んだ声が部屋に響いた。
 
 
 
 
 
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