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第二章:独裁の予兆!?中央政治局常務委員《フラワーナイン》の選抜

第19話:オウキの秘密!? 和やかな夕食を囲む党幹部

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「ありがとうございました。アカリ様」

 買い出しの往復に俺を運んでくれたアカリに俺は感謝を伝えた。

 アカリはアカリの思力様式スタイルである朱雀をつかって買い出しに付き合ってくれた。
 アカリは朱雀の背に乗り、俺は朱雀の足に囚われた魚のよう掴まれていたのだが。

「うむ。オウキ様は大食らいじゃ。料理頑張ることじゃな」

 そう言ってアカリは執務室に入ろうとせず、立ち去ろうとした。

「え、アカリ様もご一緒しないのですか?」

「わ、私は、忙しいのじゃ。ル、ルー。事務方というのは、ルーが想像している以上に仕事があるのじゃ」

 そう言ってアカリは逃げるように文字通り飛んで行った。

 (アカリ様、オウキ様が苦手で逃げたのですね……。)

 気持ちは分からなくもない。党の次期トップの二人との食事なんて、下の者からしたらプレッシャーで楽しくもなんともないだろう。

 偉い者との距離感は適切に保つ。

 それは日本でも華の国でも下の者の処世術だ。

 俺はオウキのためにいつも以上に買った食材を抱えて、シーの執務室に入った。

 入った瞬間、俺は目の前の信じられない光景に目を奪われ、抱えていた荷物をどっさり落としてしまった。

「も、申し訳ありません。まさか、オウキ様が!」

 部屋に入った瞬間、目の前には素っ裸のオウキがいたのだ。
 
 バスタオルで頭をふいており、明らかにシャワーを浴びた後であった。

 一糸まとわぬその美しい肉体に目を奪われると同時に俺の生存本能が、俺に回れ右させて、執務室から出るよう動かした。

 党のトップの裸を見るなんて、不敬以外何者でもない。

 (確かに、いつもの癖でノックをしなかった!)

 俺は致命的なミスを犯していたのだ。

 処刑されてもおかしくないが、まずは、この場を去るのが先決だ。

 執務室から出ようとしたその時、俺は後ろに引っ張られた。

「ルー!!貴様!見たなー!。私の秘密を!」

 俺はオウキに締め上げられながら持ち上げられた。

「も、申し訳ありません。まさか、オウキ様がシャワー浴びてるとは知らず」

「貴様!!見ただろう。私の裸を!!見た光景を忘れろ!」

「は、はい。も、もちろんです。ほとんど何も見てませんしっ」

「ほとんど見てない?ということは、やはり見たのだろが!!忘れろ!忘れろ!」

「も、申し訳ありません、許してください!」

 俺は目を閉じながらも、必死に誤った。
 
 オウキの表情は当然見えないが、憤怒していることは間違いない。

「何の騒ぎだ……」

 そこにシーがやって来た。

「シー、ルーが私の裸を見たのだ!!見られたくない私の秘密を。生かしておくことはできないが、しかし、ルーは特別だ。殺せない」

「……だから、胸など盛らず、ありのままの姿でいればいいと言っていただろう。見栄をはるからだ」

「むぅー、だめだ。私は、オウキだ!オウキは肉体も皆の憧れの肉体をしているのだ。実は貧乳だったなんて事実、今更明かせない!!」

 一糸まとわぬオウキのそんなところまで記憶に残るほど見てないが、普段のオウキは不自然なくらいの巨乳ではあった。
 
 あれは作りものだったのか……。

「ふん、そんなこと、気にすることか? そもそもお前は、党員からは厄介者と思われてるだけで、憧れの対象ではないぞ」

「ハァ?シー、そんなことあるか!私は、オウキだぞ。華の国の清風と呼ばれ、能力も見た目も皆の憧れの的だ」

「華の国の暴風だ……。 まあ、いい。ルーを離してやれ。飯食うのが遅くなるぞ」

「まあいい……、じゃない!。シーは気にしなさずきだ。女たるもの出てるとこは出てないとなめれるだろっ!」

「そんなことはない。気にし過ぎだ。胸などあってもなくても変わらん」

「いや、あったほうが美しいのだ」

 その後もオウキとシーは胸と美しさについて漫才のような掛け合いを続けていた。

 結局、オウキは俺を解放して、服を着るためにバスルームに入っていった。

「まあ、ルー、貴様もよく気をつけろよ」

 心底呆れたような表情で俺にそう言ったシーは「胸なんかなくてもいいだろ……」とつぶやきながら、奥の部屋に入っていった。

 (まさか、シー様も貧乳を気にしてるのか?)

 そういえば、珍しくムキに反論していた。

 しかし、シーは党幹部の中では、珍しく、全く着飾らず地味な恰好を好んでいる。

 まさか、そんなシーが胸の大きさなんて世俗的なことを気にしてるのが想像でぎず、俺は自分の妄想を否定して、料理に取りかかった。
 

「……ご準備出来ました。大したものではなく恐縮ですが、お召し上がりください」

「……ふん。ま、まあ見た目は、地味だな。庶民の飯ということか」

オウキはまだ先程の騒動を根に持っているのか、不機嫌そうに、腕を組んでいる。明らかに不自然な大きな胸の上で。

「ルー! 貴様何を見てる!」

「い、いえ、何も、なにも見てないです。ただお口に合うか心配で」

「そうか、それならいい。貴様変なこと吹聴したら命はないからな」

「も、もちろんですっ」

「もういいだろう。飯が冷めるぞ。食べよう」

 シーがそう話を終わらした。

 今回俺が作ったのは、まずは焼餃子と肉じゃだ。味は調味料が違うので、完全にな日本と同じ味にはならない。そして、故郷のツバキ市の名物料理である辛鍋も出した。
 
 華の国も地方、地方で料理が異なり多様性がたかい。ルーの故郷の辛鍋、痺れるような辛さが特徴だ。

 ただ、ルーの家庭では、辛さを控え目にしていた。だから、ツバキ市というより、俺の家庭の味だ。

 オウキは焼餃子(華の国では、焼肉包みとなる)を箸でつまんで、疑うやうに凝視している。

 シーはそんなオウキを気にせず、黙々と食べている。特に感想も言わず、表情も変えず。

 それを見たオウキが、意を決するように、焼餃子を口に入れた。

「……ほう。……、んー、……おー、美味いな、これ」

 そう言って、オウキはまた一つ餃子を口に入れた。

「……うん。焼くのかっと思ったが、皮が違うのか、普通より薄いな。それでこの食感か、うん、美味いぞ、ルー!」

「あ、ありがとうございます。お口に合ったようで安心しました。」

「あ、シー!貴様、取り過ぎだ。私の裸を見たお詫びにルーは作ったのだぞ。どれこっちも食べてみるか……。……おー、この料理もなかなかだな。ガツンとはこないが丁寧な優しい味だ」

 オウキは次に肉じゃがに手を出していた。

「ルーの料理は、派手さはないが丁寧で優しい味なのだ。この鍋もツバキ市の一般的なものとは全然違うな。辛さが刺々しくなく、心地よい」

 シーが、珍しく俺の料理の感想を口にした。

「ありがとうございます。父から教わった料理です。母が辛い味が得意ではなかったので」

「……そうか。いい家庭だな」

「ん?ルー、この珍しい料理と両親から教わったのか?」

「あ、いえ、それは……、えーっと、実家を出て自分で料理をするうちに学びました」

「ほう、そうか。ふーん」

 まさか、転生前に作っていたとは言えないので、俺は、オウキの質問を答えるのにまごついてしまった。

 ただ、オウキは特に気にも止めず、食事を続けた。

 食事中もシーとオウキはそれぞれマイペースであった。

 オウキは食べ方も豪快で、他愛もない話を大袈裟にシーに話かけていた。
 シーはいつものように、無表情に相槌を打ちながらも黙々と食事をしていた。

 俺は給仕をしながら、この華の国の権力を握るであろう二人の普段見られない姿を眺めるのを楽しんだ。
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