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あの日の記憶

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俺は、彼女の部屋に行きそっとベッドに彼女を横たえ、彼女のぬくもりを感じるように頬に触れた。
彼女の寝顔を見て少し顔を曇らせた。
ここにいる子達は気がついていなかったが、ここに来て数十年経っているのに、誰も年をとっておらずいつまでも変わらない姿をしていることに...、
彼は、彼女の頬に触れていた手を外し、ベッドの横においてある姿見の前に行き自分の姿を見つめた。
あの日から数十年経っても変わらない自分の姿に吐き気がして顔をそらした。

「あいつの言ってたあことは正しかったていうのか・・・?」

そう彼は憎々しげに呟きあの日を思い出していた、ボスと決別したあの日を・・・、



俺は、十年前話があるとボスに呼び出され話す前にとジュースを出されたのでそれを飲んだ途端意識が遠のいた。
次に、意識が戻ったときには、液体の中で目が覚めた。
少し薄目を開けると円柱のガラス張りの中にいてその前でボスが、機械に何かを入力しながら笑いながらブツブツ何かを呟いていた。
俺は、目を開けていられなくなり、目を閉じた。
意識が朦朧としている中ボスの声が聞こえてきた。

「あの教会から何人もマスター候補を集めてきたが、誰も覚醒する気配がない、なら俺が人工的に作ればいい、そうすれば不老不死や世界を超越した力も手に入れる事もできる。」

ボスのその言葉を聞き俺は、ショックを受けた。
前世の記憶を取り戻した俺を救い出して居場所をくれた彼を、尊敬していた彼に裏切られ実験台にされている。
その事実に、俺は、彼への尊敬や信頼が怒りと憎しみに変わった。
かあれは、俺が聞いているのに気づかずブツブツと呟いていた。

「あいつらを協会から連れ出して十年経つが誰も年を取っていないし、そのことに誰も気がついてない・・・、これは、彼が封印された際にできた副産物、とでも言うのか・・・それとも、隔離した環境でアンドロイドのオーナーに世話をさせていたのが良かったのか、まあ俺にとっては好都合ではあるがな・・・」

その言葉を聞いた瞬間ドアの開く音が聞こえた。

「ボス一体何をしているんですか‼」

その言葉が聞こえたのか機械をいじる音がやんだ。

「オーナーどうしたんだ? そんな大声を出して・・・」
「それはこっちのセリフだ‼ 今すぐこの子達を開放しろ」
「どうしたんだそんな感情的になって、どこか故障したのか?」

その後手を払う音が聞こえてきた。

「俺にさわるな、俺はお前が作ったアンドロイドじゃない‼ 俺は、そいつと入れ替わって潜入したんだ、俺にそっくりで助かったよ、俺は、あんたみたいな、唆された奴らを封印するために旅をしてきたんだ」
「唆された・・・?」
「もう何も考える必要はない、何も考えないで眠れ・・・」

すると、話し声が聞こえなくなった。
誰かが近づいて来る音が聞こえてきた。
僕の入っているガラスに触れた。

「本当にすまない、まさかこんなことになるとは思わなかった、他の子達は手遅れだったが君だけは手遅れにならなくってよかった。」

そう言うとガラスにヒビがはいり次の瞬間割れ、液体と一緒勢いよく飛び出した俺を誰かが抱きとめられたのを感じた。
その腕の暖かさに安心して意識を手放した。
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