念願の悪役令嬢に!!

コロンパン

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先生が

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「こんな所で何をしている?」

秋葉先生は、まるで不審者を見る目つきで私を見ている。

「あ、あの、友人に渡したい物が、ありましたので、教室に取りに来たんです。」

本当の事なんだけど、尋問を受けている様な緊張感で挙動不審になってしまった。
それを見越してか秋葉先生は警戒を解かない。

「・・・一人でか?」

「は、はい・・・。」

秋葉先生は攻略対象なので、当然顔が整っている。
少しだけ長めの黒髪のサラサラ髪。
頭が良い人が掛けていそうな眼鏡。(途轍もない偏見)

切れ長の瞳は冷たい印象を持つ。
実際、最初は凄くヒロインにも冷たい。
所謂クーデレタイプなのだ。

この学園で異質なヒロインを気には掛けていて観察している内に、
ヒロインが一生懸命この学園に馴染もうとしている姿に好意を抱くようになる。

教師と生徒だから、そんな感情許されないと葛藤するけど、
それは、この私、悪役令嬢の西園寺愛良が出張ってくる。

ヒロインを贔屓しているとまたヒロインを虐め抜くのだ。


虐めを受けてもめげずに前を向くヒロインにとうとう秋葉先生は陥落し、
彼女を守ろうと心に決める。

愛良を糾弾し、退園処分にする。
その後西園寺家までも没落させる。

愛良は路頭に迷い、誰にも知られる事無くひっそりと死ぬ。

今の私は路頭に迷う事は無いが、家族に迷惑を掛ける事はしたくない。


なので、彼に目を付けられない様に大人しくしていようと思ったのだが、
目の前の彼は、何故か私に対してもう悪感情を抱いている様に感じる。


まだ何もしていないのに・・・。
顔か!顔が悪いのか!

こればっかりはどうしようも無いのになぁ・・・。

好きになって貰いたい訳では無いけど、こうも嫌われているのを実感すると悲しいものだ。

気分が沈み下を向く。



「ならば、早くそれを取って来い。
今日はオリエンテーションが主だ。
教室に居る事は出来ない。
俺が講堂まで送ろう。」

「え!?」

送るって言った?

「何だ?」

怪訝な顔で私を睨む。
怖いのよ、顔が。
そんなんで送られても気まずいだけだ。

「え、あ、いえ。
一人で戻れるので、大丈夫です。」

丁重にお断りをする。

「いいや、駄目だ。
只でさえ君は入園式に怪我で出席していない。
西園寺財閥の娘に何かあれば、俺の責任になる。」

ああ、そうか。
私がではなく、自分が心配なのか。
それはそうか。

一応学園の中でも上位階級の西園寺家の娘だもの。
私の不注意とは言え、怪我で入園式に出ていなかった事を、理事長か何かに咎められたのだろう。

それでまた私がふらふら教室に来たから、
何かやらかすのではないか、と監視に来た、と。

要らぬ心配を掛けてしまったみたい。
ここは大人しく従おう。

「分かりました。お言葉に甘えてお願いします。ありがとうございます。」

お礼を言って、自分の机にある鞄の中から、プレゼント包装をした袋を取り出す。
それを持って、秋葉先生の元へ。

「講堂に戻ります。」

先生を見て言うと、私の持っている袋を一瞥して一言。

「分かった。」

とだけ言って前を歩いて行った。
私もそれに続く。





案の定無言。
ああ、気まずい。
嫌われている人間に気安く話しかける程、私のメンタルは強くない。

取り敢えず、講堂に戻ったら鷺宮に渡さないとな~。
ぼーっと窓を眺めながら考えていたら、前から不意に声がした。


「それは何だ?」

秋葉先生が私の袋を指して言った。
私は手に持つ袋を少しだけ上に掲げて言う。

「これは、鷺宮君へのお礼です。」

「お礼?」

秋葉先生は少しだけ歩みの速度を落としてくれた。
おかげで並んで歩く羽目になったが。

私は秋葉先生の言葉に頷きながら答える。

「はい、昨日の件で鷺宮君にお借りしたハンカチを汚してしまったので、
代わりのハンカチと、クッキーを焼いて来たのでそれを渡そうと思って。」

「君が?クッキーを焼いた?」

秋葉先生の切れ長の瞳が真ん丸に見開かれる。
お前の様なお嬢様がクッキーを焼いたのか?
という表情だろう。

以前の愛良ならそんな事はしないだろうが、
今の愛良は庶民感覚の愛良なのだ。
クッキー位焼くのだ。

「はい。クッキーは簡単に焼けますよ?
ちゃんとコックにも味見をして貰って、味の保証もして貰ったし不味くは無い筈です。」

まだ信用していない顔をしている。
何だかちょっとムッとする。

「そんなに信じられないのなら、食べます?」

「い、いや結構だ。」

何だと!?
全く信用してないじゃない!

「先生、結構失礼ですね?私だってクッキー位焼けるんですよ?」

「・・・済まない。君はそういうのに無縁だと思っていたから。」

プッと頬を膨らませる。

「お礼を自分じゃなく他人に任せるのは、お礼じゃないです。
自分でやってこそ、誠意を伝えれると私は思います。」

「そうだな・・・。」

フッと秋葉先生は笑った。
私は幻を見たのかと思い、ジーッと先生を見てしまう。

「何だ?」

一瞬で顔が元の仏頂面に戻る。

「・・・先生、笑ったら優しい顔になるんですね。
もっと笑ったらいいのに、折角綺麗な顔なのに勿体無い。」

「な、何を、言っているんだ!?大人を揶揄うな!」

あ、怒らせてしまった。

「ご、ごめんなさい。怒っている顔は何だか近寄りがたくて、さっきの笑顔の方単純にいいなと思っただけです。
気を悪くさせたなら、ごめんなさい。」

近寄りはしないけど、悪感情を緩めてくれたらいいな。
謝ると先生はバツが悪そうな顔でぼそりと呟く。

「怒っている様に見える、のか?」

「はい。」

「これが、地顔なんだけどな。」

「そ、それは、ごめんなさい・・・。」

なんてこった!
自分を棚に上げた発言をしてしまった。
自分だって、この顔で誰も寄って来ないのに、

「私も他人の事言えない顔をしているのに、
偉そうに言ってしまいました。」

「いや、君は違うと思うが。」

「え?」

「・・・いや、いい。」

そっぽ向かれてしまった。
大分怒らせてしまったな。

「・・・君は皇家の息子と、婚約しているのだよな?」

「あ、はい。一応は。」

「一応?」

「将来、何があるか分からないので、今の状況に胡坐をかいてはいけないと思うんです。」

婚約破棄されるかもしれない未来の為、勘当される時の為、入念に準備をするのだ。

「・・・君は、まだそんな歳でそこまで考えているのか、いや、西園寺家なら当然なのか。」

「家は関係無いです。もしもの時に対処が出来る様に心構えをしているだけです。
臆病なんですよ、私。」

「君位の年齢で自分を客観的に見れるのはそう居ないと思うがな。」

そう秋葉先生は言って、私の頭にポンと手を置いた。
突然の事で思考が止まる。
あれ?嫌われているんじゃなかったのかな?

秋葉先生を見る。
すると、ハッとした顔で直ぐに手を引っ込める。

「あ~、何だ。君は随分と危なっかしそうだから、気を付けた方が良い。」

「はい。」

キリリッと顔を引き締める。

「分かってないな・・・。」

秋葉先生は溜息混じりに呟いた。
分かってない?
うん?と首を傾げるが、先生はそれ以上何も言ってくれなかった。
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