念願の悪役令嬢に!!

コロンパン

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餌付け

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一応蘇芳の許可が下りたので、一安心。
これで萌香にクッキーをあげる事が出来る。

「愛良、愛良!」

私の肩を指でトントンと叩く。
萌香が満面の笑みを浮かべている。

余程お腹が空いていたのね。
空腹は辛いのだ。
身を持って体験したから、萌香の気持ちは良く分かる。

「萌香、はいどう「あーん。」・・・ぞ。はえ?」

萌香がひな鳥の様に口を大きく開けている。
いいのかな?
ヒロインだよね?この子。

疑問に思いつつも、クッキーを1枚取り、萌香の口へ運んだ。


瞬間、周りがどよめいた。
びっくりして辺りを見回したけど、皆固まったままで動かない。


「ん~~~~!美味しい!!愛良、このクッキー美味しいよ!」

「そ、そう?良かった。もう一枚要る?」

「うん!」

そしてまたカパッと口を開ける萌香。
う~ん、動物を餌付けしている感覚。

さっきはプレーンのクッキーだったから、次はチョコレートの方をあげよう。
チョコレートのクッキーを手に取り、萌香の口へ。


「!!!!????」

その前に私の手を掴み、私の手ごと自分の口へ持って行く。


「本当だ。美味しいね。」


蘇芳がクッキーを飲み込んで妖しい笑みを浮かべた。


「あ、な、え?す、蘇芳?え?え?」

私の脳内は大混乱だ。
萌香にあげる筈のクッキーが何故か蘇芳の口に。
私の指は蘇芳の口に。
厳密に言うと指は蘇芳の唇に触れただけ。
でも、私にとってはかなりの衝撃だった。

「皇君、それ私のクッキーなんですけど?」

萌香が半目で蘇芳に抗議する。

「君のではない。愛良のクッキーだ。」

「私が!愛良から貰う筈だったクッキーですけど?」

また言い争いをしている。
蘇芳が此処まで喧嘩腰なのは初めて見た。

仲裁に入ろうかとオロオロとしていると、
冷泉と鷺宮が私の両隣に立つ。

「放っておいたらいいよ。
お互い同じ者を巡っての争いだしね。」

「確かにクッキーの争いですものね。
沢山あるのにそんな言い争いをしなくてもいいのに。」

「愛良ちゃん、それ本気で言ってる?」

「え?」

冷泉が信じられないという顔で私を見る。
本気って何?

「東矢、西園寺はこういう奴だ。」

鷺宮が何か失礼な事を言っている。

「わ~。やっぱり?そうだよねぇ。
愛良ちゃんだもんねぇ。」

「ちょっと、どういう意味ですか?」

冷泉ににっこりと笑顔で問う。
冷泉もにっこりと笑顔で言う。

「ん~、何でも無いよ~。
それが愛良ちゃんの良い所だから。
あ、俺もクッキー食べたいなぁ~?」

「冷泉君にはあげません。
鷺宮君どうぞ?
ふふふ。というか本当は鷺宮君にあげたものですけどね。」

「え!?愛良ちゃん?」

冷泉にそっぽを向き、鷺宮にクッキーの袋を差し出す。
鷺宮は何故だかほんのり顔が赤くなり、

「・・・ありがとう。」

クッキーを一枚取り、口に運ぶ。

「美味しいな。甘さが控えめで触感もサクサクして良い。
鼻に抜けるバターの匂いも好ましい。」

「ほ、褒め過ぎじゃないですか?」

私は鷺宮の感想を聞いて、物凄く恥ずかしい気持ちになった。

「?本当の事を言ったまでだが?」

「うは・・・。そ、そうですか・・・。
それは、その・・・・、嬉しいです。
ありがとうございます。」

素人の焼いたクッキーをそこまで褒めてくれた。
嬉しいしかない。
お礼のつもりが、またお礼を言う羽目になってしまった。

「ずるい!ずるい!俺も食べたいのにぃ!!
愛良ちゃ~ん、お願い!!俺にも頂戴!」

「・・・どうしようかなぁ・・・。」

考える振りをする。

「・・・駄目?」

首をコテンと右に倒して、私を見つめる冷泉。
何故、瞳を潤ませている!
くっ!それは卑怯だぞ!
イケメンのそのポーズ!
あざと過ぎる!!

「仕方ないですね。はい、どうぞ?」

私は冷泉のおねだりに負けた訳では無い。
初めからあげるつもりだった。
断じてイケメンのおねだりヒャハー!ってなっていない、断じて。

冷泉にもクッキーを差し出すと、

「やった~!愛良ちゃんありがとう!!」

パッと笑顔に変わって、私のクッキーをパクリと口に頬張る。

「おいひい!!」

「冷泉君、お行儀が悪いですよ。」

口に含みながら話す冷泉を窘める。
冷泉はクッキーを飲み込んで、笑顔を浮かべる。

「いや、でも本当においしいよ。
愛良ちゃんにこんな特技があったなんて驚きだよ。」

「特技という程では無いですよ。
今回は偶々おいしく出来ただけですし。
クッキーは簡単に作れます。
ケーキとか作るのが難しいお菓子は失敗する事もありますしね。」

前世からお菓子作りが趣味の私。
暇さえあればお菓子を作って一人で食べていた。
そう一人で。
誰にあげる事も無く。

「ええ!!ケーキも作れるの!?
本当に凄いじゃん!!
今度作って来てよ。ケーキも食べたい。」

「私も食べたい!愛良、私、ショートケーキがいいなぁ。」

「ずるくない?草薙さん。
俺ね、俺ね。チョコレートケーキ!」

萌香と冷泉がリクエストをしてきた。

「・・・俺はフルーツタルトが良い・・・。」

さ、鷺宮まで、しかもフルーツタルトとか。

「ちょっと?何勝手に愛良に頼んでるの?
あ、僕はチーズケーキが良いかな?」

どさくさに紛れて蘇芳まで、全員違うケーキ言ってる!!

「・・・一個ずつ持って来ますから、それでもいいですか?」

皆一様に笑顔で頷く。
そんなに私のケーキを楽しみにしてくれているのかと考えて、胸がじんわり熱くなる。

前世では誰にあげる事も無かったお菓子を、
今はこんなにも求めてくれる人がいるんだ。

嬉しくて顔がにやける。


「!!!」

あれ?また周りがどよめいた。

「あらら~。蘇芳、大変だね。
これは、敵が多くなりそ。」

冷泉が心なしか顔が赤い。
話し掛けられた蘇芳は顔は赤いが、少し怒ってるみたいだ。

「だろうね、でも誰にも負けるつもりはないよ。」

何の話?

「愛良~!クッキー頂戴?」

また萌香が口を開ける。
まぁ、いいか。
私は冷泉達の話にはそこまで気にする事なく、
萌香の口にせっせとクッキーを運び続けた。


萌香の親鳥になった気分がして、何だか面白かった。

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