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麗しき西園寺愛良姫(1)
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西園寺愛良様。
中等部に入園して、一瞬で注目の的となった女の子。
艶のある黒髪は、滑らかでそして美しい程にサラサラで真っ直ぐだ。
あの髪に触りたい人間は数多の数居ることだろう。
透き通るほど白い陶器の様な肌。
形の良い小さなお顔に、黄金比で配置された顔のパーツは全て整っている。
完璧なまでのアーモンドアイ。
すらりと通った鼻梁。
目を奪われる程に色気のあるプリっとした唇。
中等部でこの完成された美しさに、見る者は一様にどうにかしてお近づきになりたいと思った。
勿論、私もそうだ。
西園寺家と言えば、言わずと知れた大財閥の一つ。
成り上がりの私の家にしてみれば、西園寺家と何か繋がりを持つ事が出来れば、
これからの事業で動きやすくなる。
父さんにも西園寺家の娘と仲良くなれと言われたし、
それでなくても、あの美しい女の子と友達になりたい、そう思った。
幸運にも私は西園寺愛良様と席が隣になれた。
話す機会は幾らでもある。
余裕綽々だった。
でも、現実は甘く無かった。
遠巻きで拝見する西園寺愛良様と間近で見る西園寺愛良様とは神々しさが段違いで、
隣の席である事を後悔する位、緊張した。
横目でちらりとお顔を覗くだけで精一杯。
話しかけるなんて、畏れ多くて出来なかった。
というか、周りからの圧も怖かった。
『西園寺愛良様に気安く話しかけるなんて。』
そんな声が聞こえてきそうだった。
更には西園寺愛良様の婚約者である、こちらも大財閥、皇家のご子息の皇蘇芳様の溺愛振りが凄まじく、
休み時間の度に西園寺愛良様の元へやって来るのだ。
話し掛ける隙が無かった。
怖いもの知らずの男子が度々、西園寺愛良様に話しかけようとする度、
皇蘇芳様がどす黒いオーラを放ち、牽制してくる。
中等部でその殺気を放つのは、将来が末恐ろしいと感じた。
皇蘇芳様だけではなく、冷泉東矢様、鷺宮宗近様も西園寺愛良様の元へよくやって来る。
お二人共も西園寺愛良様や皇蘇芳様と懇意であるようで、四人がお話ししている光景は壮観だった。
宛ら姫を守る王子と騎士達の様だった。
その事もあり、西園寺愛良様は一部の生徒から密かに愛良姫と呼ばれる様になった。
中々、話し掛ける事が出来ずに、数ヶ月経ったある日。
私は時間割を1日間違えるという情けないミスを犯した。
重複する時間割もあったのがまだ救いだったが、
それでも持ってくるのを忘れた教科書をどうしようかと悩んでいた。
自分の弱みを見せる事は家柄的に良くない。
だが、大衆の面前で自分の恥を晒すのはもっと良くない。
絶望的な気持ちで居ると、
「あの・・・、」
鈴のなる様な美しい声がした。
一瞬、何処からの声かと辺りを見渡す。
「あの?こっちですよ?」
絶対にお声を掛けられる筈が無いであろう方向からの声。
恐る恐るその声の方へ顔を向けると、
コテンと可愛らしく首を傾げた西園寺愛良様が、
あろう事か私を見ていたのだ。
やっぱり声を掛けて来られたのは西園寺愛良様だったのか。
ザッと周りが私と西園寺愛良様を注目する。
周囲の目を気にしていないのか西園寺愛良様は、ニコリと天使の様な微笑みを私に向ける。
「失礼かもしれないですけど、教科書を忘れた様に見えたのですが?」
気を遣って下さったのか、私に近づき耳元で囁く西園寺愛良様。
周囲がどよめく。
当たり前だ。
姫と囁かれているご令嬢が、只の女生徒に耳打ちしているのだ。
私は顔が真っ赤になっているのを自覚しながら、言葉を発せられずおもちゃの様にコクコクと頷くだけだった。
すると西園寺愛良様はこう告げられた。
「じゃあ、机を合わせますから、私の教科書を一緒に見ませんか?
教科書が無ければ授業にならないでしょう?」
「ひえっ!いえ!でも!西園寺様にご迷惑をお掛けするのは・・・。」
私は焦った。
そんな罪深い行いをする事は憚られた。
でも、西園寺愛良様は全く気にするそぶりを見せずに
「迷惑だなんて思う訳ありませんよ。
・・・もしかして・・・余計なお世話でしたか・・?」
少し不安気な顔をする西園寺愛良様に私は全力で否定する。
「そんな事全然思ってません!!」
西園寺愛良様は一瞬びっくりした顔をするけど、また直ぐに笑顔になり、
「なら、問題無いですね?机合わせましょう。」
そこからは記憶が定かではない。
折角のご厚意も虚しく、授業も疎かだった。
同じ同性な筈なのに、どうしてこんなにドキドキするのか、分からなかった。
同じ人間とは思えないほど、お顔が小さく、
そしてとても良い匂いがした。
時折、
「私、こんな風にクラスメイトの人と同じ教科書を見て授業を受けるの夢だったんです。」
など嬉しそうに顔を緩ませる西園寺愛良様に、
クラス中がウットリと溜息を吐いた。
一人を覗いて。
私を殺さんばかりの視線を向けるのは、
皇蘇芳様。
「余計な事をしてくれたね?」
と聞こえてくるようだった。
殺される、私は恐怖で震えた。
それから、何回か西園寺愛良様が話しかけてくれるたのだが、目を合わす事が出来ずにいた。
最後に見たのは、悲し気に笑う西園寺愛良様の横顔だった。
胸がズキンと痛んだ。
彼女が悪い訳では無いのだ。
私に勇気が無いだけだ。
そうしている内に西園寺愛良様から話しかけられる事は無くなった。
今でも後悔しない日は無い。
中等部に入園して、一瞬で注目の的となった女の子。
艶のある黒髪は、滑らかでそして美しい程にサラサラで真っ直ぐだ。
あの髪に触りたい人間は数多の数居ることだろう。
透き通るほど白い陶器の様な肌。
形の良い小さなお顔に、黄金比で配置された顔のパーツは全て整っている。
完璧なまでのアーモンドアイ。
すらりと通った鼻梁。
目を奪われる程に色気のあるプリっとした唇。
中等部でこの完成された美しさに、見る者は一様にどうにかしてお近づきになりたいと思った。
勿論、私もそうだ。
西園寺家と言えば、言わずと知れた大財閥の一つ。
成り上がりの私の家にしてみれば、西園寺家と何か繋がりを持つ事が出来れば、
これからの事業で動きやすくなる。
父さんにも西園寺家の娘と仲良くなれと言われたし、
それでなくても、あの美しい女の子と友達になりたい、そう思った。
幸運にも私は西園寺愛良様と席が隣になれた。
話す機会は幾らでもある。
余裕綽々だった。
でも、現実は甘く無かった。
遠巻きで拝見する西園寺愛良様と間近で見る西園寺愛良様とは神々しさが段違いで、
隣の席である事を後悔する位、緊張した。
横目でちらりとお顔を覗くだけで精一杯。
話しかけるなんて、畏れ多くて出来なかった。
というか、周りからの圧も怖かった。
『西園寺愛良様に気安く話しかけるなんて。』
そんな声が聞こえてきそうだった。
更には西園寺愛良様の婚約者である、こちらも大財閥、皇家のご子息の皇蘇芳様の溺愛振りが凄まじく、
休み時間の度に西園寺愛良様の元へやって来るのだ。
話し掛ける隙が無かった。
怖いもの知らずの男子が度々、西園寺愛良様に話しかけようとする度、
皇蘇芳様がどす黒いオーラを放ち、牽制してくる。
中等部でその殺気を放つのは、将来が末恐ろしいと感じた。
皇蘇芳様だけではなく、冷泉東矢様、鷺宮宗近様も西園寺愛良様の元へよくやって来る。
お二人共も西園寺愛良様や皇蘇芳様と懇意であるようで、四人がお話ししている光景は壮観だった。
宛ら姫を守る王子と騎士達の様だった。
その事もあり、西園寺愛良様は一部の生徒から密かに愛良姫と呼ばれる様になった。
中々、話し掛ける事が出来ずに、数ヶ月経ったある日。
私は時間割を1日間違えるという情けないミスを犯した。
重複する時間割もあったのがまだ救いだったが、
それでも持ってくるのを忘れた教科書をどうしようかと悩んでいた。
自分の弱みを見せる事は家柄的に良くない。
だが、大衆の面前で自分の恥を晒すのはもっと良くない。
絶望的な気持ちで居ると、
「あの・・・、」
鈴のなる様な美しい声がした。
一瞬、何処からの声かと辺りを見渡す。
「あの?こっちですよ?」
絶対にお声を掛けられる筈が無いであろう方向からの声。
恐る恐るその声の方へ顔を向けると、
コテンと可愛らしく首を傾げた西園寺愛良様が、
あろう事か私を見ていたのだ。
やっぱり声を掛けて来られたのは西園寺愛良様だったのか。
ザッと周りが私と西園寺愛良様を注目する。
周囲の目を気にしていないのか西園寺愛良様は、ニコリと天使の様な微笑みを私に向ける。
「失礼かもしれないですけど、教科書を忘れた様に見えたのですが?」
気を遣って下さったのか、私に近づき耳元で囁く西園寺愛良様。
周囲がどよめく。
当たり前だ。
姫と囁かれているご令嬢が、只の女生徒に耳打ちしているのだ。
私は顔が真っ赤になっているのを自覚しながら、言葉を発せられずおもちゃの様にコクコクと頷くだけだった。
すると西園寺愛良様はこう告げられた。
「じゃあ、机を合わせますから、私の教科書を一緒に見ませんか?
教科書が無ければ授業にならないでしょう?」
「ひえっ!いえ!でも!西園寺様にご迷惑をお掛けするのは・・・。」
私は焦った。
そんな罪深い行いをする事は憚られた。
でも、西園寺愛良様は全く気にするそぶりを見せずに
「迷惑だなんて思う訳ありませんよ。
・・・もしかして・・・余計なお世話でしたか・・?」
少し不安気な顔をする西園寺愛良様に私は全力で否定する。
「そんな事全然思ってません!!」
西園寺愛良様は一瞬びっくりした顔をするけど、また直ぐに笑顔になり、
「なら、問題無いですね?机合わせましょう。」
そこからは記憶が定かではない。
折角のご厚意も虚しく、授業も疎かだった。
同じ同性な筈なのに、どうしてこんなにドキドキするのか、分からなかった。
同じ人間とは思えないほど、お顔が小さく、
そしてとても良い匂いがした。
時折、
「私、こんな風にクラスメイトの人と同じ教科書を見て授業を受けるの夢だったんです。」
など嬉しそうに顔を緩ませる西園寺愛良様に、
クラス中がウットリと溜息を吐いた。
一人を覗いて。
私を殺さんばかりの視線を向けるのは、
皇蘇芳様。
「余計な事をしてくれたね?」
と聞こえてくるようだった。
殺される、私は恐怖で震えた。
それから、何回か西園寺愛良様が話しかけてくれるたのだが、目を合わす事が出来ずにいた。
最後に見たのは、悲し気に笑う西園寺愛良様の横顔だった。
胸がズキンと痛んだ。
彼女が悪い訳では無いのだ。
私に勇気が無いだけだ。
そうしている内に西園寺愛良様から話しかけられる事は無くなった。
今でも後悔しない日は無い。
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