念願の悪役令嬢に!!

コロンパン

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麗しき西園寺愛良姫(2)

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結局、西園寺愛良様に話しかけられないまま、中等部が終わった。
エスカレーター式であるので、余程の事情が無い限り、私達はそのまま高等部へ上がる。

願わくば西園寺愛良様と同じクラスになれますように。

入園式を祈る様な気持ちで歩く。

偶然にも前を西園寺愛良様が歩いていた。

朝の挨拶位は、私でも出来る。

意を決して私は歩みを早める。

私の決意を嘲笑うかの様に、西園寺愛良様に話しかける男性陣。
冷泉東矢様、皇蘇芳様、鷺宮宗近様。

彼等はまた西園寺愛良様を騎士の様にお守りしている。
私はその場で立ち尽くす。

ああ、私は運も悪いのか。

四人は少しだけ立ち話をして歩き出す。
私も肩を落とし歩き出す。


私の横を凄い速度で走り抜ける女の子。
そのまま緩める事無く、前方の西園寺愛良様へ向かっていく。

まさか、まさか・・・。

「あ・・・。」



もっと、大きい声を出せばよかった。


女の子と西園寺愛良様はぶつかり、バランスを崩した西園寺愛良様はそのまま前へ倒れ込む。
周りが騒然とした。
西園寺愛良様を下敷きにしたその子はいつまでも上から退く事をしない。

次第に、あの女の子は誰なんだ、いつまで西園寺様から退かないのかと、
皆がざわつき始めた。


西園寺愛良様が声を掛けて漸く彼女は動いた。
どうやら、驚きの余り思考が停止していたみたいだった。

大声で謝罪を述べる。

西園寺愛良様は全く気にしていない様だ。
何て心が広いのだろう。
只々尊敬の念を抱いていると、また周りがどよめく。

私も身が凍りつく。
西園寺愛良様が、
あの麗しき西園寺愛良様が、

あの美しいお鼻から出血されている・・・・。

何て事!何て事!何て事!!!

あの子、西園寺愛良様に何て事を!


鷺宮様がハンカチを手渡され、お顔に当てる西園寺愛良様がお痛わしい。


誰が西園寺愛良様を保健室に連れて行くか揉めている。

早くお連れしないと、出血は止まらない。

勇気を出せ!
私が!お連れすると言うのよ!

足を一歩踏み出そうとする。

でも、あの女の子が連れて行くと名乗り出た。
西園寺愛良様もそれを了承して、二人で校舎へ向かった。


本当に私は何て意気地が無いのだろう。
トボトボと講堂へ。

全然式の内容が耳に入らなかった。

式が終わると皇蘇芳様は、風の如き速さで講堂を後にした。

きっと西園寺愛良様を心配し、居ても立ってもいられなかったのだろう。
皇蘇芳様は誰の目から見ても、西園寺愛良様を大切に思っているから。

けれど西園寺愛良様は、何処か一歩引いた距離で接しているのは何故だろう。






暫くして、西園寺愛良様が戻って来られた。
皇蘇芳様と何故かあの草薙萌香様が両脇で手を、繋いで。

何故?皇蘇芳様なら分かる。
だって婚約者だもの。

草薙萌香様は何故?
何故手を繋いでいるの?

しかも『愛良』と呼び捨てに。
この短時間で何があったの?
とても近しい距離で二人は話す。
西園寺愛良様は敬語ですら無く、草薙萌香様と話す。
草薙萌香様も西園寺愛良様と気安い感じで話す。


何故?
無理矢理?
いいえ、違う。
西園寺愛良様はとても嬉しそうだもの。




ずるい。


私が保健室へお連れしたら、あんな風になれた?

それは無い。
きっと西園寺愛良様はあんな笑顔を見せてくれない。

草薙萌香様はどうやって、西園寺愛良様の信頼を得ることが出来たの?


ずるい。ずるい。




幸いな事に私は西園寺愛良様と同じクラスになれた。
また隣の席だった。

幸運だろうか。
これを逃してはならない。

明日はオリエンテーションだから、授業は無い。

だから、明後日。
声を掛ける。


オリエンテーションの日。

西園寺愛良様のドレスは本当にお美しかった。
皇蘇芳様のお見立ては流石としか言えなかった。

皆彼女に見惚れている。

男性陣は彼女と踊りたくて堪らない様で、様子を窺っている。

皇蘇芳様の牽制が激しい。
冷泉東矢様ですら、踊らせないみたい。


ずっと揉めている間、西園寺愛良様は上の空の様だった。
やっぱり昨日の事故で、御体が良くないのかしら。

「お腹空いたあ・・・。」

彼女の言葉に講堂は静まり返る。

そして、皆が穏やかな表情を浮かべる。
何て、可愛らしいのだろうか。

それまで皇蘇芳様達の揉め合いでピリピリしていた雰囲気が、一瞬にして和らいだ。

彼女は皆の心を癒す力でもあるのだろうか。



突然、西園寺愛良様が走り出した。

慌てて後を追う、皇蘇芳様達。
皇蘇芳様が手を引き、二人は外へ出る。


何があったのだろう。
心配だ。


数分後、二人は戻ってきた。

何事も無かったかのように、西園寺愛良様は上機嫌だ。
良かった・・・。


安堵したのも束の間。
また彼女がやって来た。
草薙萌香様。

また西園寺愛良様の元へ、
彼女はとても目を引く。
西園寺愛良様程では無いが。

楽しそうに会話をしている二人。
いきなり、草薙萌香様が西園寺愛良様に抱き着いた。

・・・何を、しているの?

西園寺愛良様に抱き着くなんて。



ずるい。ずるい。ずるい。

胸に怒りが渦巻く。
西園寺愛良様が嫌がっているに違いないのに!


西園寺愛良様は嫌がっていなかった。
はにかみながら、嬉しそうにしている西園寺愛良様を見た皆は、その愛らしさに魅了される。
更に草薙萌香様が抱き締める。




ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。

何故?草薙萌香様に心を許しているの?

流石に皇蘇芳様が引き離してくれたけれど、
何故かお二人が睨み合っている。


そうしていると、西園寺愛良様がまた走り出して何処かへ行ってしまった。

教室へ行くと言っていたみたいだから、きっと直ぐに戻ってくる筈。
でも皇蘇芳様達は西園寺愛良様の言葉が聞こえなかったご様子で、
何処に行ったか分かっていないみたい。

教えてあげればいいのだろうが、
皇蘇芳様達に向かってお話する度胸も無い私は、
じっと彼等を傍観するだけだった。



10分後、西園寺愛良様は手に何かを持って戻って来られた。

誰かへのプレゼントみたいだ。

それを鷺宮宗近様へ渡された。
あの時のハンカチのお礼と言っていた。

手作りのクッキー。
信じられなかった。
西園寺愛良様はそんな事、絶対にしないと自分勝手に思っていた。

そのクッキーを巡って、皇蘇芳様と草薙萌香様がまた揉めている。

結局、そのクッキーは皆で食べる事になった。


・・・私も食べたいなぁ・・・。


そう思っていたら、またあの草薙萌香様があろう事か、
西園寺愛良様から手ずからでクッキーを貰っていた。



ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。

何故なの?
西園寺愛良様は、何故あんな子を?

もっと勇気を出せば、私はあそこに居る事が出来た?
西園寺愛良様が笑いかけてくれた?

私には出来ない。
あんな気安い態度で、彼女に接する事なんて。

草薙萌香様はこれまで、普通の学校に通っていたと聞いた。

物珍しさで彼女の気を惹けたのかもしれない。

そんなの、私には出来ない。


どんどん私の中で醜い感情が育っていく。






草薙萌香様、私は、

貴女が嫌いです。











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