転生?乙女ゲーム?悪役令嬢?そんなの知るか!私は前世の夫を探しに行く。

コロンパン

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一人

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ガキィン!!!

金属と金属が強くぶつかる音。

私がウルフィンの首元に向けた刃を、咄嗟に自分の剣で受ける。
その目は信じられない者を見る様に大きく、正に驚愕の眼だ。

惜しかった。油断しきっていたから、いけると思ったが、
一応この学園で一番と自負している位だ、反応は早かった。


「約束違えないでくださいよ。」

私はそう言い、一歩後ろに下がる。
ウルフィンも漸く私とちゃんとやり合う気になったのか、
構えの姿勢を取る。

「驚いた。確実に俺の首を狙って来るほど正確な突きを、まさか貴族のご令嬢がしてくるなんて。」

口角を上げているが、瞳は全く笑っていない。
あのまま負けていたかもしれない焦りと、私の様な女の不意打ちとは言え、攻撃を受け流す事が出来なかった屈辱に満ちた表情をしている。

「だが、そうまぐれが続くかなっ!」

今度はウルフィンが踏み込み、私の体を貫かんと突きを放つ。
私は剣先を自分の剣で滑らせる。

「!!」

更にウルフィンは目を見開く。
良かった。巧く往なせた。
顔には出ないが、安堵する。

「ミリアム嬢、何処かで剣術の手解きを受けたのか?」

「いいえ。書物で読んだことがあるだけです。」

まあ、嘘だ。
前世での経験なんて言える訳が無い。

「読んだだけ、だと?
それだけでこんな動きを女性の身で?
それもそんな書物、君が何故読む機会がある?」

あ、滅茶苦茶疑われてる。

「自衛の為に、覚えておこうと思いまして。
一応、体の流れとかは実践しましたよ。」

「・・・・。」

納得いってない顔してる。
脳筋ならば、そのまま鵜呑みにしてくれよ!!

「お喋りしている余裕はあるんですか?」

気を逸らすため、もう一度挑発する。

「・・・!!そうだな!
どうやら、君を舐めていた。」

私を見据えて、剣を構えるウルフィン。
よし、上手く誘導できた。

「では、こちらから参ります!」

ふっと息を吐いて、また私は距離を詰める。
今度は脳天目掛けて大きく振り下ろす。

ギンッ!!!!
これも、ウルフィンが剣を横に倒し防ぐ。

「これだけの実力があるのなら、是非とも騎士団に入団して欲しいものだ!」

「褒めて頂いてありがとうございます。ですが、私も色々やる事があるので、お断りします。」

ウルフィンが反撃しようと剣で押し負かそうとするのを避け、
跳ねる様に飛び退く。


「はあああああ!!」

声を上げながら、ウルフィンが剣を下に向け突進してくる。
薙ぎ払い。
そう感じ、剣を上に突き上げると同時にすっとしゃがみ込み、ウルフィンを足払いする。

「うお!!」

バランスを崩し、ウルフィンは尻餅をつく。
その反動で、剣が手から離れる。


すかさず、切っ先をウルフィンの首元へ。
数ミリの所でピタリと止める。




「・・・・参った。」

すっと剣をウルフィンから外し、鞘に納める。

「私の勝ちですね。」

「ああ・・・。君を舐めていた俺の負けだ。」

「では、私の事も。」

「分かっている。諦めよう。」

やった!!
思わず顔がにやけそうになるのを、必死で押さえる。

「鍛え直して、出直してくる。」

「・・・はい?」

何か私に謎の言葉が聞こえたのだが、気のせいだろうか?

「もっと鍛練を積んで、また君に勝負を挑む。
そして、今度こそ俺が勝つ!
それまでは求婚はしない。」


「ちょ、ちょっとま・・・。」

私が言い終わる前にウルフィンは私に背を向け、歩き出す。

追い掛けようとしたら、後ろからの大歓声に体がビクっとなり、
反射的に後ろを振り返る。

あ・・・しまった・・・。

頭に血が上って、周りを見てなかった・・・・。

「ミリアム様!!!」

「かっこいいい!!!」

「ウルフィン様に勝ってしまうなんて、信じられませんわ!!」

「本当に騎士様の様に凛々しくて、もう私・・・・。」

あっという間に周りを囲まれて、お嬢様達の熱い視線、黄色い声を受ける。


「あ、ありがとうございます。」

「これでまた、ミリアム様のファンクラブの会員がもっと増えますわね!」

ハンナちゃんが、恐ろしい事を宣う。

やってしまった、完全にやってしまった。

縋る様な目で遠くに居るアリスに目線を送ると、
口パクで



『ば・か』

ですよね~。
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