ああ、もう

コロンパン

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彼女はなんて

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お優しいのでしょう。

「アイリーン様、今日こそは一緒にお茶をしましょう?
私、アイリーン様ともっとお話をしたいのです。」

こうやっていつも彼女、コーデリア様は誘って下さるのです。
ですが、その場には殿下が居らっしゃる。
お二人の仲睦まじい姿を見続ける事は今の私にはまだ無理なのです。

「・・・申し訳ございません。これから書物庫で読みたい本がありますの。
残念ですが、また誘ってくださいませ。」

私は当たり障りのない理由でお断りをします。
無理強いをなさらないコーデリア様は私の言葉で、本当に残念そうな顔をなさり、

「そう、ですか・・・。それはとても残念ですが、次こそは一緒にお茶して下さいね?」

そう言って下さるのです。
心苦しくもありますが、いつも気にかけてくださる彼女に胸が温かくなるのです。

早く殿下と彼女を心から祝福出来る様にならねばなりません。

諦めの悪い私の心に苦笑しながら、私は書物庫へ向かいます。





私が此処へ来たのは、今貴族のご令嬢方の間で密かに熱を持ちつつある恋愛小説の為です。
以前ならば、そんな俗っぽい小説などに興味を持つ事は無かったのですが、婚約が解消されるであろう今、
その恋愛小説を読む事で自分の心を慰めようと逃避なのでしょう、我ながら何て情けないと思います。

何度か足を運びましたが、やはり人気な小説でいつも誰かがお読みになっているのです。

今日こそはと意気込み、いつもの棚へと一直線に足を進めます。

「あ・・・。」

ありました。
何て運の良い事でしょう。

早速手に取り、誰も座っていないテーブルへ。






ひどい。
これは今の私には酷です。

王子様とお姫様のお話。
王子様には決められた婚約者のご令嬢が居ますが、二人の関係は冷え切っていて。
王子様は彼女を愛していなかった。

ある日隣国からお姫様がやって来ます。
それはそれは美しく可憐なお姫様です。
王子様とお姫様は一目見てお互い恋に落ちたのです。

ですが、王子様には婚約者が居ます。
婚約者を蔑ろにしてお姫様と一緒になるなんていけないと王子様は悩みます。

婚約者のご令嬢は王子様が好きでした。
王子様の気持ちがお姫様に向いている事が許せずに、お姫様に陰湿な嫌がらせをします。
お姫様はどんな扱いを受けようとも決して弱音を吐かず、
ご令嬢に毅然とした態度で立ち向かいます。

ご令嬢の行いが明るみに出て、彼女は隣国のお姫様にした仕打ちを咎められ婚約破棄を申し立てられます。
ですが、それ以上の罪は問われませんでした。

お姫様がそんな事を望んでいなかったのです。
寧ろ、
「貴女の苦しみを分かっていながら、私は貴女の想い人を奪ってしまった。
本当にごめんなさい。でも、どうしても諦められなかったの。」

お姫様がご令嬢に謝罪します。
ご令嬢はお姫様の優しい心に打たれて身を引きます。

そうして王子様とお姫様は結ばれます。






ああ、こんな話、酷すぎる。
読むのではなかった。
後悔しました。
思わず涙が零れ落ちそうになるのを堪え、唇を噛み締めます。


「珍しい。貴女がこんな本を読むなんて。」

突然の声。
バッと本を閉じ、目の前から聞こえた声の方へ顔を上げました。

「ははは。そんなに慌てる貴女を見たのも珍しいな。」

目の前に居たのは殿下の兄である王太子殿下。
何故、こんな所に。
私は混乱を極めます。

「お、王太子殿下・・・・。
ご機嫌麗しゅう。」

何も答えないのは不作法ですが、私にはこれが精一杯で、日頃の勉強がこうも活かせない自分を恥じました。

「そんなに畏まらなくてもいい。
この学園では誰もが平等なのだから。」

王太子殿下のお心遣いに感謝しました。
彼は穏やかに微笑み、私に告げます。

「いつも凛としているアイリーン嬢が、こんなに取り乱すなんて余程、この本に惹きつけられたのかな?」

「い、いいえ、そのような事は。」

惹きつけられたのではありません。
打ちのめされたのです。

言葉を濁した私に、スイと王太子殿下はハンカチをお渡しになられました。
私は手渡されたハンカチを見つめ、首を傾げます。

すると王太子殿下はクスリと声を微笑を浮かべて仰ります。

「今にも零れ落ちそうだよ。貴女の美しい瞳から。」

私はその言葉で顔が熱くなり、目尻に溜まった涙を急いで拭います。

「貴女のそんな顔、初めて見た。」

私は羞恥で顔を手で覆います。

「どうか、忘れて下さいまし・・・。」

「それは、無理かな?だって、」

「そこで何をしている。」

王太子殿下の言葉に被せる様に、低く剣のある声が聞こえてきました。
焦がれてやまない声。


「アイリーン、何故貴女が兄上と一緒にいるのだ。」

殿下の声が重く響き渡りました。
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