げに美しきその心

コロンパン

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4章

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「え・・・。」

シルヴィアは言葉を失う。

「先程、馬車で運ばれて帰って来られました。今医者を呼ぼうとしていたのですが、この時間ですので御者を呼ぶのに時間がかかっておりまして・・・」

「・・・旦那様はお部屋よね。」

「は、はい。」

「伺ってもいいかしら。」

「いけません!!」

大きい声でゴードンが拒否をする。
シルヴィアは少し驚く。

「どうして?」

ゴードンは言いにくそうにシルヴィアに伝える。

「そ、その・・・ただの病気では無さそうな容体ですので、何か感染症だとしたら、シルヴィア様にうつしてしまう恐れがあります。」

シルヴィアの顔色が青くなる。

「感染症・・?だ、旦那様は今どういう状態なの?」

ゴードンは更に険しい顔をする。

「・・・赤い発疹のようなものが・・・全身に・・・。」

「・・・・まさか・・・。」

呟くシルヴィア。

「・・・・・?シルヴィア様、ご存知なのですか!?」

「ゴードン、旦那様は赤い発疹の他には何か症状は無い?」

「あ、後は、酷い熱と・・・」

「嘔吐、咳、それと幻覚症状?」

「な、何故それを・・・!」

「・・・まずいわね。大分進行しているわ。」

俯き少し考えこんだ後、シルヴィアは顔を上げ鋭い眼差しでゴードンを見定める。
いつものシルヴィアでは考えられない程、静かにそして強い瞳にゴードンはたじろいだ。

「・・・ゴードン、この病は貴方が言ったように、人に感染する病よ。」

ゴードンの顔が強張る。

「旦那様に接触したのは、今の所誰がいるのかしら。」

「御者と私と後は、ケビンですね・・・」

シルヴィアは玄関を見つめながら、ゴードンに確認する。

「御者の方は、この屋敷の御者では・・無い?」

ゴードンは小さく頷く。

「はい、・・・レイフォード様が・・・滞在していた・・・その、屋敷の御者のようです。」

言葉を濁しながら、ゴードンは答える。
シルヴィアは少しも意に介さず、更にゴードンに尋ねる。

「その屋敷の方もレイフォード様と接触した・・・
いえ、そのお屋敷はどちらにあるのかしら?」

ゴードンはどう答えたら良いのか、少し間が空く。
焦れたシルヴィアは言い募る。

「お願い!
もしそのお屋敷の誰かにレイフォード様が病をうつされていたら、そのお屋敷の方から感染が広がってしまう。
どこのお屋敷かで、発生源が絞れるかもしれないの。知っているのなら教えて?」

シルヴィアの必死さに折れてゴードンが白状する。

「・・・ここより北東のノックス領の屋敷です。」

「ノックス領・・・。確かご令嬢がお二人いらっしゃった筈よね・・。」

ゴードンの言葉に考え込むシルヴィア。
ゴードンは慌てて弁明する。

「あ、あのですね、ご令嬢と一緒に居たという訳では無いと思うのですが「北東、やはりそうなのだわ!」

ゴードンが最後まで言う前にシルヴィアが言葉を発する。

「シ、シルヴィア様?」

ゴードンが呼ぶのも気が付く事無く、シルヴィアは一人で呟き始める。

「あの時も、北東から来た商人の方の介抱をした後で・・・。」

「シルヴィア様・・・?」

はっとするシルヴィア。

「ご、ごめんなさい!
・・・ゴードン、お医者様は此方で手配するわ。」

「そ、それは構いませんが・・・。」

「この病は普通のお医者様には手に負えないわ。
ビルフォード家の専属医はこの病に明るいから、
心配無いわ。」

シルヴィアの力強い言葉にゴードンは安堵する。

「応急処置は私でも出来るから、旦那様の所へ連れて行って頂戴。」

安堵したのも束の間、ゴードンは目を見開いて

「感染する病なら、尚の事シルヴィア様をお連れするにはいきません!!」

ゴードンを落ち着かせる様に静かにシルヴィアは話す。

「大丈夫。この病は一度罹ってしまえば、もう二度と罹らないから。」

「えっ・・・。」

今度はゴードンが言葉を失う。
ゴードンを見据えゆっくりとシルヴィアが口を開く。

「私は、この病に罹って、・・・私だけじゃないわ、ビルフォード領の多くの人達がこの病に苦しめられたわ。」

ゴードンは、恐る恐る声を出す。

「ま、まさか、それは・・・。」

シルヴィアは目を逸らさず、ゴードンに告げる。

「そう、五年前に罹った病。






・・・・・血斑症よ。」










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