げに美しきその心

コロンパン

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6章

さぁ、話し合おう

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談話室へ二人は入る。


テーブルを挟んで向かい合って座るレイフォードとシルヴィア。


ソニアが紅茶を淹れて二人に差し出す。

その間、お互いは無言のまま淹れられた紅茶を感情無く眺めていた。



「・・・すまないが、二人で話がしたい。
外してくれないか?」


レイフォードがソニアに命じる。


「畏まりました。」

一礼して、ソニアは退室する。
ソニアを縋る様な目で見ていたシルヴィアを敢えて見る事無く。







シルヴィアは紅茶を口に含み、カップに揺らぐ波紋をじっと見つめる。



「んんんっ、シルヴィア。」

咳払いをしたレイフォードがシルヴィアに声を掛ける。

バッと顔を上げる。

「は、はい!」

遂に来た!身構えるシルヴィア。


「あー、あの、シルヴィアは・・・
シルヴィアの好きな色は何色だ?」

「す、好きな色、ですか・・・。」

唐突な質問に面食らうシルヴィア。

「青とか緑です・・・ね。」

「緑!そうか!緑か!」

シルヴィアの返答にレイフォードの顔が輝く。

(ソニアの髪の色の青、新緑のあの瑞々しい緑が好きなのだけれど、
何かレイフォード様のお気に召したようだから、取り敢えず良かった?のかしら。)


(俺の瞳の色が好きだと言う事で良いんだよな!?
そうか、緑。緑のドレス。シルヴィアにきっと似合う。)


「因みに俺は銀と紫が好きなんだ。」

頬を紅潮させ、レイフォードが告げる。

「そう、なのですか・・・・。銀色も綺麗な色ですものね。紫もサイの花。可愛らしいですよね!」

にこりと笑うシルヴィア。

途端に肩を落とすレイフォード。

(つ、伝わってない・・・。)

銀はシルヴィア髪の色。紫はシルヴィアの瞳の色。
アピールしたつもりだが、やはり伝わらなかった。

「でも、意外ですね。」

「え?」

「私、レイフォード様は赤が好きなのだと思っていました。」

シルヴィアはカップの縁を指でなぞりながら呟く。

「レイフォード様のお部屋に初めて挨拶に行った時に、ロゼのお花の香りがしたので、
ロゼのお花が好きなのだと。
勝手に思っていたんです。
ロゼのお花、赤いから。」

「ロゼの、花?・・・・・・!!!!」

花を飾る事をしていないレイフォードにとって、
部屋にロゼの花の香りがしたという事は、

女性の香水の残り香しかあり得なかった。



シルヴィアが来る前まで、女性がレイフォードの部屋に居たという事になる。

レイフォードの顔に、嫌な汗が流れる。


(あの時は、結婚が嫌で仕方無くて、酒場で自棄酒を飲んで、起きたら知らん女が寝ていた。
直ぐに叩き出したが。
あの女が吐き気を催す程の香水を付けていたから、余計に苛立っていた気がする。
いや、もう言い訳にしか聞こえない。
ヤバい。こんな事が知られたら、本気でヤバい。)



「っシルヴィア!」

「はい!!!!??」

レイフォードが勢い良く立ち上がると、釣られてシルヴィアもバッと立ち上がる。

テーブルを回り込んで、シルヴィアの目の前に立つ。
そして、シルヴィアの両肩をがっしり掴み、
再び座らせる。

「レイフォード様?」

何だかよく分からないシルヴィアは首をこてりと横に傾ける。

「!!!か、!」

「か?」

レイフォードは思わず叫びそうになるのを必死に抑える。
ぶんぶんと頭を横に振る。

そして、シルヴィアの両手を自分の両手でしっかりと握り込み、
立て膝を付き床に跪く。


「レイフォード様!?」

慌ててシルヴィアが立ち上がろうとするが、レイフォードが制止する。


「シルヴィア、お前、いや、貴女に謝罪しなければならない。」


浮いた腰をすとんと落とし、シルヴィアはレイフォードを真っ直ぐに見つめる。

(ああ、いよいよだわ。)


レイフォードに握られた手に自然と力が入る。

「シルヴィア、俺は、」


シルヴィアは一言一句聞き逃さぬ様に耳を澄ます。




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