げに美しきその心

コロンパン

文字の大きさ
58 / 105
6章

さぁ、話し合おう

しおりを挟む
談話室へ二人は入る。


テーブルを挟んで向かい合って座るレイフォードとシルヴィア。


ソニアが紅茶を淹れて二人に差し出す。

その間、お互いは無言のまま淹れられた紅茶を感情無く眺めていた。



「・・・すまないが、二人で話がしたい。
外してくれないか?」


レイフォードがソニアに命じる。


「畏まりました。」

一礼して、ソニアは退室する。
ソニアを縋る様な目で見ていたシルヴィアを敢えて見る事無く。







シルヴィアは紅茶を口に含み、カップに揺らぐ波紋をじっと見つめる。



「んんんっ、シルヴィア。」

咳払いをしたレイフォードがシルヴィアに声を掛ける。

バッと顔を上げる。

「は、はい!」

遂に来た!身構えるシルヴィア。


「あー、あの、シルヴィアは・・・
シルヴィアの好きな色は何色だ?」

「す、好きな色、ですか・・・。」

唐突な質問に面食らうシルヴィア。

「青とか緑です・・・ね。」

「緑!そうか!緑か!」

シルヴィアの返答にレイフォードの顔が輝く。

(ソニアの髪の色の青、新緑のあの瑞々しい緑が好きなのだけれど、
何かレイフォード様のお気に召したようだから、取り敢えず良かった?のかしら。)


(俺の瞳の色が好きだと言う事で良いんだよな!?
そうか、緑。緑のドレス。シルヴィアにきっと似合う。)


「因みに俺は銀と紫が好きなんだ。」

頬を紅潮させ、レイフォードが告げる。

「そう、なのですか・・・・。銀色も綺麗な色ですものね。紫もサイの花。可愛らしいですよね!」

にこりと笑うシルヴィア。

途端に肩を落とすレイフォード。

(つ、伝わってない・・・。)

銀はシルヴィア髪の色。紫はシルヴィアの瞳の色。
アピールしたつもりだが、やはり伝わらなかった。

「でも、意外ですね。」

「え?」

「私、レイフォード様は赤が好きなのだと思っていました。」

シルヴィアはカップの縁を指でなぞりながら呟く。

「レイフォード様のお部屋に初めて挨拶に行った時に、ロゼのお花の香りがしたので、
ロゼのお花が好きなのだと。
勝手に思っていたんです。
ロゼのお花、赤いから。」

「ロゼの、花?・・・・・・!!!!」

花を飾る事をしていないレイフォードにとって、
部屋にロゼの花の香りがしたという事は、

女性の香水の残り香しかあり得なかった。



シルヴィアが来る前まで、女性がレイフォードの部屋に居たという事になる。

レイフォードの顔に、嫌な汗が流れる。


(あの時は、結婚が嫌で仕方無くて、酒場で自棄酒を飲んで、起きたら知らん女が寝ていた。
直ぐに叩き出したが。
あの女が吐き気を催す程の香水を付けていたから、余計に苛立っていた気がする。
いや、もう言い訳にしか聞こえない。
ヤバい。こんな事が知られたら、本気でヤバい。)



「っシルヴィア!」

「はい!!!!??」

レイフォードが勢い良く立ち上がると、釣られてシルヴィアもバッと立ち上がる。

テーブルを回り込んで、シルヴィアの目の前に立つ。
そして、シルヴィアの両肩をがっしり掴み、
再び座らせる。

「レイフォード様?」

何だかよく分からないシルヴィアは首をこてりと横に傾ける。

「!!!か、!」

「か?」

レイフォードは思わず叫びそうになるのを必死に抑える。
ぶんぶんと頭を横に振る。

そして、シルヴィアの両手を自分の両手でしっかりと握り込み、
立て膝を付き床に跪く。


「レイフォード様!?」

慌ててシルヴィアが立ち上がろうとするが、レイフォードが制止する。


「シルヴィア、お前、いや、貴女に謝罪しなければならない。」


浮いた腰をすとんと落とし、シルヴィアはレイフォードを真っ直ぐに見つめる。

(ああ、いよいよだわ。)


レイフォードに握られた手に自然と力が入る。

「シルヴィア、俺は、」


シルヴィアは一言一句聞き逃さぬ様に耳を澄ます。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

【完結】小さなマリーは僕の物

miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。 彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。 しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。 ※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】 積み上がった伏線の回収目前!! 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

処理中です...