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6章
襲来
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朝食時。
「今日はまた父上の仕事を手伝うから、戻りは夕食前になると思う。」
レイフォードが言う。
「はい。分かりました。」
シルヴィアは元気よく頷く。
「だから、昼食は一緒に取る事が出来ない。」
「はい!大丈夫です。」
あまりにも元気のいい返事に少しレイフォードは切なくなった。
「・・・シルヴィア・・・は、平気なの、か?」
「?はい!平気です。」
「・・・・そうか・・・。」
(寂しいと思っているのは、俺だけか。)
自分だけがこんなにも離れ難いと思っていると、
レイフォードは勝手に考える。
「はぁああ、行きたくない・・・・。」
ぼそりと呟いた言葉を拾ったのは、ソニア。
「シルヴィア様、今日のお昼ご飯はどうでしょう、また先日の様にお庭で召し上がりますか?」
「まぁ!それはいいわね!そうしましょう!」
シルヴィアは嬉しそうに手を叩く。
「では、アンとテーゼにも声を掛けておきます。」
「嬉しいけれど、お仕事に支障が出るようならば構わないって言ってね?
いつも私に気を遣ってくれて、申し訳ないと思っているの。」
楽しそうに話すシルヴィアを見て、レイフォードは大きく溜息を吐く。
「本当に行きたくない・・・・。」
肩を落とすレイフォードの様子にシルヴィアは心配そうに窺う。
「レイフォード様、体調が優れないのですか?
お義父様がお許しになるのであれば、今日はお休みになられた方が宜しいのでは?」
シルヴィアが自分が居ない事を寂しく思ってくれないから、行きたくないという情けない心情を、
どうして打ち明ける事が出来ようか。
シルヴィアが気にしないように笑って誤魔化す。
「大丈夫だ。気にしないでくれ。
天気が良かったから、シルヴィアと何処かへ出掛けたかったな、と思っただけだ。」
ふわりとシルヴィアの頬が色づく。
「あ、私も。レイフォード様とお出掛けしたかったです・・・。」
はにかみながら遠慮がちにレイフォードに伝える。
幾分かレイフォードの気分が上がる。
(仕事を早く済ませ、直ぐに帰ろう。)
レイフォードは決意する。
「シルヴィア、シルヴィアが良ければ、だが、
父上の管理する領地に美しい植物園があるのだが、今度行ってみないか?」
シルヴィアが確実に食い付くであろう、場所に目星を付けていたレイフォードが、
それでも幾ばくかの不安を抱き、シルヴィアを誘う。
レイフォードを見送る為、玄関ホールでレイフォードに告げられる。
思いがけない言葉に、シルヴィアは一瞬固まる。
何も言わなくなったシルヴィアに、更に不安になるレイフォード。
言い訳の様に一人で話し始める。
「いや、シルヴィアは植物が好きだと思ったんだが、違っていたか?
この家の庭もシルヴィアが美しく整備してくれているし、
屋敷の中の花達も、君が飾ってくれているのだろう?
ゴードンから聞いた。
俺はそういう事に疎くて、前々からシルヴィアに何か礼をしたいと思っていたんだ。
父上が昔、その植物園には各地の珍しい植物があると言っていたのを思い出して、
それで、シルヴィアは興味があるかと・・・。
・・・ああ、駄目ならいいんだ。」
余りにもシルヴィアが何も言わないので、
どんどん不安が募る。
「いや、もうわすれ・・・。」
レイフォードの言葉が途切れる。
シルヴィアが目に涙をためて溜めて、自分を見ている。
「嬉しいです・・・。本当に・・・嬉しいです。
ああ、どうしましょう。
レイフォード様、本当に?本当にいいのですか?」
拒絶ではなく、心から嬉しいと言う色のシルヴィアの瞳に、レイフォードは心底安心した。
「ああ、勿論だとも。
一緒に行こう。
そこには、シルヴィアがまだ
見た事が無い植物もあるかもしれないぞ。」
「とても楽しみです!!
レイフォード様、ありがとうございます!」
頬を紅潮させて、興奮気味に感謝の気持ちを伝えるシルヴィア。
「では、仕事を終えたら直ぐに帰るから、
色々と計画を立てよう。」
「はい!」
元気良く答えるシルヴィア。
先程までとは真逆な、幸せな気持ちになるのを、
自分でも現金だなと感じながら、
レイフォードは出掛けていく。
レイフォードが見えなくなった後、
シルヴィアは傍に居たソニアに話し掛ける。
「ねえ、ソニア。」
「何でしょう?」
「私、夢を見ているのかしら?」
「シルヴィア様はそんなに器用な方では御座いません。」
「ど、どういう意味かしら?」
「シルヴィア様は眠りながら何かをなさる程、器用ではありませんという意味です。」
「まぁ!!」
ソニアの言葉に頬を膨らませるシルヴィア。
思い切り頬を膨らませたシルヴィアの顔を見て、
ソニアは思わず吹き出す。
「あ!笑ったわね!」
「ふふっ。そんな顔もご当主に見せたら宜しいのに。」
揶揄うソニアに真っ赤になって、反論するシルヴィア。
「そ、そんな事出来る訳無いじゃない!
嫌われてしまうわ・・・。」
(大丈夫です。絶対に無いですよ。)
心の中で呟くソニアは、シルヴィアに微笑むだけで、何も言わなかった。
「あ、お出掛けに着ていけるドレス・・・。
一着も無い様な気がするわ。
どうしようかしら・・・。」
屋敷から出る事は無いと思っていたので、
普段着使いのワンピースしかシルヴィアのクローゼットには入っていない。
社交用のドレスは植物園に行くのには華美過ぎる。
「ビルフォードの屋敷に取りに戻ろうかしら?」
「ご当主にそのまま伝えれば?」
ソニアはさらりと言う。
「そんな事言えないわ・・・。
折角少しお話が出来るようになるまで、
レイフォード様が歩み寄って下さったのに、
そんな事を言えばまた以前のようになりそうで、
怖くて・・・。」
少し表情を曇らせてシルヴィアは俯く。
「シルヴィア様・・・。(神がかり的に鈍くいらっしゃる)
そのような事にはなりませんから、安心してください。
ご当主もシルヴィア様がそういう相談をなされるのを望んいると思いますよ?
それこそ、ドレスがないと言えば幾らでも揃えそうですけどね。」
小さな溜息を吐きながらシルヴィアに諭すが、シルヴィアにはどうしてもそう思えなかった。
「いいの。家に戻ればあるのだから、新調する必要なんてないわ。
それに家にあるドレスだって、サイズが合わなくなって、一度も袖を通していない物ばかりよ。
今なら着る事が出来るし、勿体無いわ。
今日、レイフォード様がお帰りになられた時に、一度帰る事を伝えるわ。」
「シルヴィア様がそれでいいのならば。」
(絶対、ご当主も付いて行くでしょうけどね。)
ソニアには確信があった。
以前の離縁騒ぎで、シルヴィアがビルフォード家に帰る事を恐れているレイフォードは、
少しの帰省でも確実にシルヴィアを一人では行かせる事はないだろう。
「さて、と!最近バタバタしていたから、全然お庭のお手入れが出来ていなかったわね。
レイフォード様が褒めて下さったから、気合を入れて頑張るわよ!」
ピンと背筋を張りシルヴィアは歩き出す。
「貴方にばかり任せてばかりで、本当にごめんなさいね、ケビン。」
いつもの動きやすい服に着替えたシルヴィアは、
ケビンに申し訳無さそうに話す。
ケビンは慌てる。
首をブンブン横に振り、早口で喋る。
「いいえ!
本来ならシルヴィア様はこのような事、なさらなくていいんです!
だから、僕になんか謝らないでください!!」
「あら、ケビン。
これは私が最初に始めると言ったお仕事よ?
私がしなくてどうするの。」
朗らかに笑いながら、煉瓦造りの鉢植えを持ち上げようとする。
しかし、その手は空を切る。
「シルヴィア様!」
ケビンが警戒を含んだ声を張り上げる。
「お前、そんな見窄らしい格好で、何をしているのだ?」
頭上からの声。
見上げると、シルヴィアを覗き込むような形で、
男が鉢植えを持ち上げて笑っている様に見えた。
太陽の反射で顔が見えず、白い歯だけが判別できたのだ。
ケビンが直ぐ様、シルヴィアの手を引き、
シルヴィアを庇うように前に立つ。
その男は、少しだけ目を見開くが、直ぐに釣り目がちの瞳を愉快そうに細め口を開く。
「使用人風情が主人に軽々しく触れるのを許すなぞ、
お前はやはり変わっているな。」
ケビンの顔が強張る。
そして小声でシルヴィアに話す。
「シルヴィア様、大丈夫ですか?
あの男性とお知り合いなのですか?」
ケビンの肩口からシルヴィアが顔を出す。
シルヴィアは驚き、男の名を口にする。
「デューイ殿下・・・・。どうしてここに・・・?」
「今日はまた父上の仕事を手伝うから、戻りは夕食前になると思う。」
レイフォードが言う。
「はい。分かりました。」
シルヴィアは元気よく頷く。
「だから、昼食は一緒に取る事が出来ない。」
「はい!大丈夫です。」
あまりにも元気のいい返事に少しレイフォードは切なくなった。
「・・・シルヴィア・・・は、平気なの、か?」
「?はい!平気です。」
「・・・・そうか・・・。」
(寂しいと思っているのは、俺だけか。)
自分だけがこんなにも離れ難いと思っていると、
レイフォードは勝手に考える。
「はぁああ、行きたくない・・・・。」
ぼそりと呟いた言葉を拾ったのは、ソニア。
「シルヴィア様、今日のお昼ご飯はどうでしょう、また先日の様にお庭で召し上がりますか?」
「まぁ!それはいいわね!そうしましょう!」
シルヴィアは嬉しそうに手を叩く。
「では、アンとテーゼにも声を掛けておきます。」
「嬉しいけれど、お仕事に支障が出るようならば構わないって言ってね?
いつも私に気を遣ってくれて、申し訳ないと思っているの。」
楽しそうに話すシルヴィアを見て、レイフォードは大きく溜息を吐く。
「本当に行きたくない・・・・。」
肩を落とすレイフォードの様子にシルヴィアは心配そうに窺う。
「レイフォード様、体調が優れないのですか?
お義父様がお許しになるのであれば、今日はお休みになられた方が宜しいのでは?」
シルヴィアが自分が居ない事を寂しく思ってくれないから、行きたくないという情けない心情を、
どうして打ち明ける事が出来ようか。
シルヴィアが気にしないように笑って誤魔化す。
「大丈夫だ。気にしないでくれ。
天気が良かったから、シルヴィアと何処かへ出掛けたかったな、と思っただけだ。」
ふわりとシルヴィアの頬が色づく。
「あ、私も。レイフォード様とお出掛けしたかったです・・・。」
はにかみながら遠慮がちにレイフォードに伝える。
幾分かレイフォードの気分が上がる。
(仕事を早く済ませ、直ぐに帰ろう。)
レイフォードは決意する。
「シルヴィア、シルヴィアが良ければ、だが、
父上の管理する領地に美しい植物園があるのだが、今度行ってみないか?」
シルヴィアが確実に食い付くであろう、場所に目星を付けていたレイフォードが、
それでも幾ばくかの不安を抱き、シルヴィアを誘う。
レイフォードを見送る為、玄関ホールでレイフォードに告げられる。
思いがけない言葉に、シルヴィアは一瞬固まる。
何も言わなくなったシルヴィアに、更に不安になるレイフォード。
言い訳の様に一人で話し始める。
「いや、シルヴィアは植物が好きだと思ったんだが、違っていたか?
この家の庭もシルヴィアが美しく整備してくれているし、
屋敷の中の花達も、君が飾ってくれているのだろう?
ゴードンから聞いた。
俺はそういう事に疎くて、前々からシルヴィアに何か礼をしたいと思っていたんだ。
父上が昔、その植物園には各地の珍しい植物があると言っていたのを思い出して、
それで、シルヴィアは興味があるかと・・・。
・・・ああ、駄目ならいいんだ。」
余りにもシルヴィアが何も言わないので、
どんどん不安が募る。
「いや、もうわすれ・・・。」
レイフォードの言葉が途切れる。
シルヴィアが目に涙をためて溜めて、自分を見ている。
「嬉しいです・・・。本当に・・・嬉しいです。
ああ、どうしましょう。
レイフォード様、本当に?本当にいいのですか?」
拒絶ではなく、心から嬉しいと言う色のシルヴィアの瞳に、レイフォードは心底安心した。
「ああ、勿論だとも。
一緒に行こう。
そこには、シルヴィアがまだ
見た事が無い植物もあるかもしれないぞ。」
「とても楽しみです!!
レイフォード様、ありがとうございます!」
頬を紅潮させて、興奮気味に感謝の気持ちを伝えるシルヴィア。
「では、仕事を終えたら直ぐに帰るから、
色々と計画を立てよう。」
「はい!」
元気良く答えるシルヴィア。
先程までとは真逆な、幸せな気持ちになるのを、
自分でも現金だなと感じながら、
レイフォードは出掛けていく。
レイフォードが見えなくなった後、
シルヴィアは傍に居たソニアに話し掛ける。
「ねえ、ソニア。」
「何でしょう?」
「私、夢を見ているのかしら?」
「シルヴィア様はそんなに器用な方では御座いません。」
「ど、どういう意味かしら?」
「シルヴィア様は眠りながら何かをなさる程、器用ではありませんという意味です。」
「まぁ!!」
ソニアの言葉に頬を膨らませるシルヴィア。
思い切り頬を膨らませたシルヴィアの顔を見て、
ソニアは思わず吹き出す。
「あ!笑ったわね!」
「ふふっ。そんな顔もご当主に見せたら宜しいのに。」
揶揄うソニアに真っ赤になって、反論するシルヴィア。
「そ、そんな事出来る訳無いじゃない!
嫌われてしまうわ・・・。」
(大丈夫です。絶対に無いですよ。)
心の中で呟くソニアは、シルヴィアに微笑むだけで、何も言わなかった。
「あ、お出掛けに着ていけるドレス・・・。
一着も無い様な気がするわ。
どうしようかしら・・・。」
屋敷から出る事は無いと思っていたので、
普段着使いのワンピースしかシルヴィアのクローゼットには入っていない。
社交用のドレスは植物園に行くのには華美過ぎる。
「ビルフォードの屋敷に取りに戻ろうかしら?」
「ご当主にそのまま伝えれば?」
ソニアはさらりと言う。
「そんな事言えないわ・・・。
折角少しお話が出来るようになるまで、
レイフォード様が歩み寄って下さったのに、
そんな事を言えばまた以前のようになりそうで、
怖くて・・・。」
少し表情を曇らせてシルヴィアは俯く。
「シルヴィア様・・・。(神がかり的に鈍くいらっしゃる)
そのような事にはなりませんから、安心してください。
ご当主もシルヴィア様がそういう相談をなされるのを望んいると思いますよ?
それこそ、ドレスがないと言えば幾らでも揃えそうですけどね。」
小さな溜息を吐きながらシルヴィアに諭すが、シルヴィアにはどうしてもそう思えなかった。
「いいの。家に戻ればあるのだから、新調する必要なんてないわ。
それに家にあるドレスだって、サイズが合わなくなって、一度も袖を通していない物ばかりよ。
今なら着る事が出来るし、勿体無いわ。
今日、レイフォード様がお帰りになられた時に、一度帰る事を伝えるわ。」
「シルヴィア様がそれでいいのならば。」
(絶対、ご当主も付いて行くでしょうけどね。)
ソニアには確信があった。
以前の離縁騒ぎで、シルヴィアがビルフォード家に帰る事を恐れているレイフォードは、
少しの帰省でも確実にシルヴィアを一人では行かせる事はないだろう。
「さて、と!最近バタバタしていたから、全然お庭のお手入れが出来ていなかったわね。
レイフォード様が褒めて下さったから、気合を入れて頑張るわよ!」
ピンと背筋を張りシルヴィアは歩き出す。
「貴方にばかり任せてばかりで、本当にごめんなさいね、ケビン。」
いつもの動きやすい服に着替えたシルヴィアは、
ケビンに申し訳無さそうに話す。
ケビンは慌てる。
首をブンブン横に振り、早口で喋る。
「いいえ!
本来ならシルヴィア様はこのような事、なさらなくていいんです!
だから、僕になんか謝らないでください!!」
「あら、ケビン。
これは私が最初に始めると言ったお仕事よ?
私がしなくてどうするの。」
朗らかに笑いながら、煉瓦造りの鉢植えを持ち上げようとする。
しかし、その手は空を切る。
「シルヴィア様!」
ケビンが警戒を含んだ声を張り上げる。
「お前、そんな見窄らしい格好で、何をしているのだ?」
頭上からの声。
見上げると、シルヴィアを覗き込むような形で、
男が鉢植えを持ち上げて笑っている様に見えた。
太陽の反射で顔が見えず、白い歯だけが判別できたのだ。
ケビンが直ぐ様、シルヴィアの手を引き、
シルヴィアを庇うように前に立つ。
その男は、少しだけ目を見開くが、直ぐに釣り目がちの瞳を愉快そうに細め口を開く。
「使用人風情が主人に軽々しく触れるのを許すなぞ、
お前はやはり変わっているな。」
ケビンの顔が強張る。
そして小声でシルヴィアに話す。
「シルヴィア様、大丈夫ですか?
あの男性とお知り合いなのですか?」
ケビンの肩口からシルヴィアが顔を出す。
シルヴィアは驚き、男の名を口にする。
「デューイ殿下・・・・。どうしてここに・・・?」
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