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後編 Side hasegawa
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「っん、いや……もうやッ」
どれだけ焦らしたか、夜須はもうすっかり泣きが入っていた。
「お仕置きだと言っただろ?」
夜須の恥らいようはいつも以上だった。それがまた俺を煽るのだと、この子犬は分かっていないのだ。
今日は思いもよらず夜須の口から嬉しい言葉が聞けた。
俺の前では決して素直にならない。それはどんな時だって変わることがなかった。
好きだという言葉も、俺に伝えるためでなく自分を責めるために使っているところしか聞いたことがない。好きだなんて言える立場じゃないとか、好きになって悪かったとも言われたこともある。間接的に好きと言われているとは分かるが、悲痛な表情で言われてしまえば喜べるものじゃない。揚げ足を取るように、俺のこと好きなんだと羞恥に染めてやろうと思ったら、ただ謝って俺の前からいなくなりそうになった。
嫉妬もしてくれているようだが、それもすぐさま怯えに変わるのだから、目を離せない。
そんな様子が俺のまわりの人間には不満に映っていることも知っている。
「もうヤダ……っあぁーや…ぁ」
「もう限界か」
すでに俺の声も認識できないらしく、否定も肯定もしない。嫌だ、ダメだしか口にしない。
そんな中で俺は夜須の名前だけを繰り返す。
しばらくすると呼ばれているのに気が付いたのか、濡れた視線が俺に向いた。
「夜須」
目が合った瞬間その目はきつく瞑られてしまった。そして声さえも出せないように唇まで噛む始末だ。
「夜須、ダメだ」
口付けでその柔らかな唇を守り、夜須の望みを叶えるため声を紡げないほど深く口内を貪ってやる。
「んっ、……ぅ」
そうしながら、拘束していた手を開放してやった。傷付けないよう注意を払っていたが夜須の必要以上の抵抗に手首は僅かだが赤く擦れている。
目線だけでそれを確認して、さらに口づけを深くした。もう呼吸もままならないはずだ。
そのまま挿入して、唇が離れた頃には完全に酸欠な夜須の手が俺の腕をきつく掴む。爪跡がしっかりとつくほど強い力だ。
「うはぁ、はぁ、はぁ、はあぁぁぁあんッ」
そのまま夜須の呼吸が整うのを待った。
肩でしていた息が落ち着いてくるとやっと夜須は目を開いた。
「反省したか?」
たぶん分かっていないが、夜須は頷いた。
それからは可愛がるだけだ。すっかり理性を飛ばしている夜須が恥じらう理性を取り戻さないように体の感覚だけに集中させてやる。
まさに考えるよりも感じろと言ったところだ。
そうして抱いた次の日の夜須は飛び切りに可愛いことを知っているのは俺だけで十分だろ。
夜須の可愛さや付き合いたい理由なんて、他の誰にも説明してやる気などない。唯一聞けるのは夜須本人だけだが、恥ずかしがってまともに聞くことはないので知っているのはやはり俺だけだ。
そのせいで夜須にいろいろいう奴がいるのも分かっているが、止めようもない独占欲だから仕方がない。できる限りのフォローをまめにして、夜須から不安を取り除いていくことに余念はない。
だからこその今日の発言があったと思える。
半ば強引に付き合いを始めて、油断すればいなくなってしまいそうな恋人。それがあんなことを言ってもらえて嬉しくないはずがない。
「夜須」
「あっん……ん」
「好きだ」
「…………うん」
夜須は嬉しそうに笑った。
いつか素面のときにも、そうやって笑ってもらうのが当面の目標だ。
どれだけ焦らしたか、夜須はもうすっかり泣きが入っていた。
「お仕置きだと言っただろ?」
夜須の恥らいようはいつも以上だった。それがまた俺を煽るのだと、この子犬は分かっていないのだ。
今日は思いもよらず夜須の口から嬉しい言葉が聞けた。
俺の前では決して素直にならない。それはどんな時だって変わることがなかった。
好きだという言葉も、俺に伝えるためでなく自分を責めるために使っているところしか聞いたことがない。好きだなんて言える立場じゃないとか、好きになって悪かったとも言われたこともある。間接的に好きと言われているとは分かるが、悲痛な表情で言われてしまえば喜べるものじゃない。揚げ足を取るように、俺のこと好きなんだと羞恥に染めてやろうと思ったら、ただ謝って俺の前からいなくなりそうになった。
嫉妬もしてくれているようだが、それもすぐさま怯えに変わるのだから、目を離せない。
そんな様子が俺のまわりの人間には不満に映っていることも知っている。
「もうヤダ……っあぁーや…ぁ」
「もう限界か」
すでに俺の声も認識できないらしく、否定も肯定もしない。嫌だ、ダメだしか口にしない。
そんな中で俺は夜須の名前だけを繰り返す。
しばらくすると呼ばれているのに気が付いたのか、濡れた視線が俺に向いた。
「夜須」
目が合った瞬間その目はきつく瞑られてしまった。そして声さえも出せないように唇まで噛む始末だ。
「夜須、ダメだ」
口付けでその柔らかな唇を守り、夜須の望みを叶えるため声を紡げないほど深く口内を貪ってやる。
「んっ、……ぅ」
そうしながら、拘束していた手を開放してやった。傷付けないよう注意を払っていたが夜須の必要以上の抵抗に手首は僅かだが赤く擦れている。
目線だけでそれを確認して、さらに口づけを深くした。もう呼吸もままならないはずだ。
そのまま挿入して、唇が離れた頃には完全に酸欠な夜須の手が俺の腕をきつく掴む。爪跡がしっかりとつくほど強い力だ。
「うはぁ、はぁ、はぁ、はあぁぁぁあんッ」
そのまま夜須の呼吸が整うのを待った。
肩でしていた息が落ち着いてくるとやっと夜須は目を開いた。
「反省したか?」
たぶん分かっていないが、夜須は頷いた。
それからは可愛がるだけだ。すっかり理性を飛ばしている夜須が恥じらう理性を取り戻さないように体の感覚だけに集中させてやる。
まさに考えるよりも感じろと言ったところだ。
そうして抱いた次の日の夜須は飛び切りに可愛いことを知っているのは俺だけで十分だろ。
夜須の可愛さや付き合いたい理由なんて、他の誰にも説明してやる気などない。唯一聞けるのは夜須本人だけだが、恥ずかしがってまともに聞くことはないので知っているのはやはり俺だけだ。
そのせいで夜須にいろいろいう奴がいるのも分かっているが、止めようもない独占欲だから仕方がない。できる限りのフォローをまめにして、夜須から不安を取り除いていくことに余念はない。
だからこその今日の発言があったと思える。
半ば強引に付き合いを始めて、油断すればいなくなってしまいそうな恋人。それがあんなことを言ってもらえて嬉しくないはずがない。
「夜須」
「あっん……ん」
「好きだ」
「…………うん」
夜須は嬉しそうに笑った。
いつか素面のときにも、そうやって笑ってもらうのが当面の目標だ。
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