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しょっちゅう食事をしていたから、誘うのは簡単だった。
帰り際、道端で引き留めた。
「櫂、今日しよ」
櫂の方が戸惑って、眉間に皺が寄る。
「……どうしたんですか?」
「意味分かった?」
ちゃんと伝わってそうなのは分かったが、一応確認する。
「分かりますよ、セックスしようってことですよね」
「そう」
「俺は嬉しいですけど、いいんですか?」
嬉しいのはよく分からないが、遠慮されるのもよく分からない。
「俺は別にダメって言ってないだろ」
「俺も言いましたよね、嫌なことはしたくないんです」
付き合っているという状況そのものに違和感を持っていると櫂も知っているのに、そんなこと言うんだったらさっさと離れていけばいいと思う。
櫂といるのは嫌なことではないけど、やっぱり納得はできない。
ただ今はそんな言い合いを蒸し返しても何も変わらないともう理解してるから、一旦忘れる。今日の目的は遂行しなくてはならない。
自分の家に誘って、黙ってまたがってやれば良かったかもしれないが、まだ自分だけの完全なテリトリーを侵食される恐怖には勝てなかった。自宅に招いたことは未だない。
「雰囲気作るとか俺無理だし、相手櫂だと余計無理だし、でもちゃんと考えたし、良い感じにムードとか作るべきかとか、なんかこうしなだれかかったりとか、いや、想像しただけで無理だし! 櫂だし! 心臓吐き出しそうだし、いやもう、これだけで十分おかしくなりそうってか、おかしくなってるっていうか、えっと、だから」
櫂の前で言葉を紡げばこうなることは分かっていても、いつもこうだし仕方ない。今更だから諦めて必死で話し続けると、櫂は困った顔で笑っていつもの俺がしどろもどろになっている時に見せる不敵さは消えていた。
「分かりました、大丈夫です、分かりました」
いつかみたいに手を引かれて、櫂の家に行った。そこでもいつかみたいに風呂を進められて、交代で櫂が入って出てくると、ベッドに導かれた。
何を言われてもどうせ俺はおかしくなるから、言っておかないといけないことだけさっさと口にする。
「お前がしたいって言うから」
いや、言い出したのは俺だとは気がついてる。無理やり誘ったのはこっちだ。それを櫂も分かっていながら頷いてくれた。
「はい」
「俺は何もしないからな!」
誘っておいて酷い言い草だが、櫂の前で虚勢を張るのはすでに無理なのは実証されている。だから櫂も微笑んで理解を示す。
「はい」
「痛い思いさせたら承知しない!」
そんなことしないとは思ってるけど、最悪痛くても別に仕方ないけど、それくらい言っておかないと、正直もう逃げだしたくなっていた。
「分かってる」
そっと落ち着かせるように抱きしめてくれた。
「うん」
「俺の任せておけば大丈夫だから」
「……うん」
俺の強気と言うか、半ば自棄のような言動は終わった。
正直不安はある。
櫂ができるかなんてのは本当にどっちでもいい、俺の体に関しても好きにしてくれて構わない。
問題は心の方だ。
櫂に抱く思いに何か変化が生まれたらどうしよう。
今でも引け目を感じているのに、みじめになる様な感覚まで思い出したくはない。それだけが恐かった。
そんな感情を押しやってしまうほど、櫂は大胆で優しかった。
櫂は驚くほどとても丁寧で、知ることのなかった快楽を教えられる。
そんな時間が続き俺から降参するしかなかった。
「俺ばっか……もういいから」
「あんたが気持ちよくなきゃ意味ない」
そんなでも一応最後まではできた。
そして久しぶりの行為にぐったりしてしまった。拭き清められて、それにも細やかな抵抗をしてみせたけど、本当に細やかで任せるしかなかった。
気持ち良くはしてもらったが、余計に疲れて、何もできなかった。櫂にとってはあまり良いものではなかっただろう。
「もうしませんから」
枕に顔を押し付ける様にうつ伏せにベッドに沈んでいる俺の横で、片手で頬杖を付いて横になっている櫂に視線を向ける。
「……そうだよな」
もう二度としない宣言だと咄嗟に捉えた俺に、櫂は笑ってキスをしてとぼけた顔をした。
「あれ、もっとしたかった?」
「そんなわけあるか!」
この状況でできる体力などない。気力もない。
「俺はもっとしたいけど」
「おい!」
「久しぶりだと、これ以上は体の負担だからな」
「……」
「これからいくらでもできるし、どんどんするから」
「バカッ」
楽しそうに笑う櫂に、俺の心はずっと軽くなった。
俺の日常に新たな行為が加わったが、大きく変わっていないつもりでいた。
俺の傷は思っているよりも意外な場所にあった。
帰り際、道端で引き留めた。
「櫂、今日しよ」
櫂の方が戸惑って、眉間に皺が寄る。
「……どうしたんですか?」
「意味分かった?」
ちゃんと伝わってそうなのは分かったが、一応確認する。
「分かりますよ、セックスしようってことですよね」
「そう」
「俺は嬉しいですけど、いいんですか?」
嬉しいのはよく分からないが、遠慮されるのもよく分からない。
「俺は別にダメって言ってないだろ」
「俺も言いましたよね、嫌なことはしたくないんです」
付き合っているという状況そのものに違和感を持っていると櫂も知っているのに、そんなこと言うんだったらさっさと離れていけばいいと思う。
櫂といるのは嫌なことではないけど、やっぱり納得はできない。
ただ今はそんな言い合いを蒸し返しても何も変わらないともう理解してるから、一旦忘れる。今日の目的は遂行しなくてはならない。
自分の家に誘って、黙ってまたがってやれば良かったかもしれないが、まだ自分だけの完全なテリトリーを侵食される恐怖には勝てなかった。自宅に招いたことは未だない。
「雰囲気作るとか俺無理だし、相手櫂だと余計無理だし、でもちゃんと考えたし、良い感じにムードとか作るべきかとか、なんかこうしなだれかかったりとか、いや、想像しただけで無理だし! 櫂だし! 心臓吐き出しそうだし、いやもう、これだけで十分おかしくなりそうってか、おかしくなってるっていうか、えっと、だから」
櫂の前で言葉を紡げばこうなることは分かっていても、いつもこうだし仕方ない。今更だから諦めて必死で話し続けると、櫂は困った顔で笑っていつもの俺がしどろもどろになっている時に見せる不敵さは消えていた。
「分かりました、大丈夫です、分かりました」
いつかみたいに手を引かれて、櫂の家に行った。そこでもいつかみたいに風呂を進められて、交代で櫂が入って出てくると、ベッドに導かれた。
何を言われてもどうせ俺はおかしくなるから、言っておかないといけないことだけさっさと口にする。
「お前がしたいって言うから」
いや、言い出したのは俺だとは気がついてる。無理やり誘ったのはこっちだ。それを櫂も分かっていながら頷いてくれた。
「はい」
「俺は何もしないからな!」
誘っておいて酷い言い草だが、櫂の前で虚勢を張るのはすでに無理なのは実証されている。だから櫂も微笑んで理解を示す。
「はい」
「痛い思いさせたら承知しない!」
そんなことしないとは思ってるけど、最悪痛くても別に仕方ないけど、それくらい言っておかないと、正直もう逃げだしたくなっていた。
「分かってる」
そっと落ち着かせるように抱きしめてくれた。
「うん」
「俺の任せておけば大丈夫だから」
「……うん」
俺の強気と言うか、半ば自棄のような言動は終わった。
正直不安はある。
櫂ができるかなんてのは本当にどっちでもいい、俺の体に関しても好きにしてくれて構わない。
問題は心の方だ。
櫂に抱く思いに何か変化が生まれたらどうしよう。
今でも引け目を感じているのに、みじめになる様な感覚まで思い出したくはない。それだけが恐かった。
そんな感情を押しやってしまうほど、櫂は大胆で優しかった。
櫂は驚くほどとても丁寧で、知ることのなかった快楽を教えられる。
そんな時間が続き俺から降参するしかなかった。
「俺ばっか……もういいから」
「あんたが気持ちよくなきゃ意味ない」
そんなでも一応最後まではできた。
そして久しぶりの行為にぐったりしてしまった。拭き清められて、それにも細やかな抵抗をしてみせたけど、本当に細やかで任せるしかなかった。
気持ち良くはしてもらったが、余計に疲れて、何もできなかった。櫂にとってはあまり良いものではなかっただろう。
「もうしませんから」
枕に顔を押し付ける様にうつ伏せにベッドに沈んでいる俺の横で、片手で頬杖を付いて横になっている櫂に視線を向ける。
「……そうだよな」
もう二度としない宣言だと咄嗟に捉えた俺に、櫂は笑ってキスをしてとぼけた顔をした。
「あれ、もっとしたかった?」
「そんなわけあるか!」
この状況でできる体力などない。気力もない。
「俺はもっとしたいけど」
「おい!」
「久しぶりだと、これ以上は体の負担だからな」
「……」
「これからいくらでもできるし、どんどんするから」
「バカッ」
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