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初めての
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「オレとやっても絶対満足しないと思うぞ」
「ヤッてみないと分かりませんよ」
ほのぼのとさえ感じるほどの柔らかい微笑みに、ため息しか返せなかったが、その笑顔が場違いな部屋に一緒に来て今更かと諦めに似た感情になっていた。
「……まあ、そっちがそれでいいならしょうがないな」
「そうですよ、誘ったのは僕の方なんですから」
そう嬉しそうにされると、しつこいと言われようとも確認しなくてはならないことがある。
「念押しで言っておくが、これはオレにとってはただの遊びだから本番はない、オレは服も脱がないぞ。勢い余っての期待してても無駄だから」
「はい、大丈夫です」
変わらずニコニコと頷いてしている。
「お前が望むような痛いヤツもまったくしない」
畳み掛けるつもりで言えば、これまた、ニコリと問いかけられる。
「でも道具は使いますよね?」
「オレ自身の体をほとんど使わないんだからお前の体を善がらすのはオモチャしかないからな」
「拘束もしてくれるんでしょ?」
「跡がつかない程度に緩くな」
「はい、お願いします」
逆に確認されてお願いされて、少し弱腰になる。
「基本的に快楽攻めだぞ?」
「気持ちイイことも好きですよ」
そこでようやく納得ではなく、はっきり諦めて大きなため息でテンションを変えた。
「そこまで納得尽くならオレも遊ばないわけはないな。じゃあ服全部脱いでそこのイスに座って」
そう命じた國実はスーツの上着とネクタイを外すとキッチリとハンガーにかけ腕を捲くった。一方で泉水は言われたとおり躊躇いなく全裸になりプレイ用のイスに腰掛けた。
二人がいるのはいわゆるSM専用ホテルの一室で、それ用の道具が様々揃っている。照明はしっかりしているのに、壁が赤や黒を多用しているせいで薄暗い印象を与えていた。
泉水が座るように言われたイスはそんな中でもシンプルなものだった。部屋の中を見渡せば厳つい拘束具が付いていたり、座るだけで足が開かせられるなんていう一般では目にすることのないものばかりだが、國実が指定したそのイスは肘掛のついたデザインがレトロというだけで変わったところは見当たらない。
革張りであるそれに裸で座った泉水はさすがに冷たさを感じたが、クッション性は存分にあってこれなら長時間座らされても耐えられそうだとつい癖でそんなことを考えていた。
泉水がそうしてイスの感触を確かめている間に國実は泉水が脱ぎっぱなしにしていた服を軽く畳んで部屋の隅に片付けていた。それに気がついた泉水は驚き、慌てる。
「あっ、スミマセン!」
焦って立ち上がった泉水の前に手をかざし、國実は動きを制しそのまま座るように促した。
「別にオレが気になっただけだから。さて、早速始めるが、手足を拘束する前に、オレと遊ぶ時のルールだ。絶対に無理はするな、本気で嫌だと思ったり、やめて欲しいと思った事はすぐに言え」
明らかに雰囲気が違っていた。
口調も声色もさっきと変わらない。表情も同じ。
困ったな、でも仕方ないな。
そんな感じだと泉水もちゃんと分かっている。
泉水だって無理を言っている自覚はちゃんとあるし、むしろ空気を読む事には長けている方だ。
國実は泉水の押しに負けて、今だけ相手にしてくれようとしているだけだと。
けれど、この雰囲気が突然どこからやってきたのか分からなかった。
「僕は大抵のことは大丈夫なんです」
泉水はゾクゾクと嬉しくなっていた。
支配させようなんて気配は微塵もないのに、國実からはそれを感じてしまう。いや、支配ではなく服従する喜びを与えてくれそうな予感だ。
この微妙な差が本当に泉水が求めてきた事ではないかと、さらに期待が高まっていった。
そんな泉水の高まりを正確に感じっている國実は、やっぱり呆れつつ、さらに大丈夫なんて言ってしまうことにも困ったものだと苦笑が漏れる。
それでもやると言ったからと進めていく。
「……一応だ。口を塞ぐとはしないから辛かったら言え、いいな?」
「はい」
泉水が笑顔で返事をすると國実はあるものを掲げて見せた。その一瞬で二人の雰囲気は一気に変わり、淫靡な香りが焚かれたかのように独特の空気か部屋に漂いだした。
「ヤッてみないと分かりませんよ」
ほのぼのとさえ感じるほどの柔らかい微笑みに、ため息しか返せなかったが、その笑顔が場違いな部屋に一緒に来て今更かと諦めに似た感情になっていた。
「……まあ、そっちがそれでいいならしょうがないな」
「そうですよ、誘ったのは僕の方なんですから」
そう嬉しそうにされると、しつこいと言われようとも確認しなくてはならないことがある。
「念押しで言っておくが、これはオレにとってはただの遊びだから本番はない、オレは服も脱がないぞ。勢い余っての期待してても無駄だから」
「はい、大丈夫です」
変わらずニコニコと頷いてしている。
「お前が望むような痛いヤツもまったくしない」
畳み掛けるつもりで言えば、これまた、ニコリと問いかけられる。
「でも道具は使いますよね?」
「オレ自身の体をほとんど使わないんだからお前の体を善がらすのはオモチャしかないからな」
「拘束もしてくれるんでしょ?」
「跡がつかない程度に緩くな」
「はい、お願いします」
逆に確認されてお願いされて、少し弱腰になる。
「基本的に快楽攻めだぞ?」
「気持ちイイことも好きですよ」
そこでようやく納得ではなく、はっきり諦めて大きなため息でテンションを変えた。
「そこまで納得尽くならオレも遊ばないわけはないな。じゃあ服全部脱いでそこのイスに座って」
そう命じた國実はスーツの上着とネクタイを外すとキッチリとハンガーにかけ腕を捲くった。一方で泉水は言われたとおり躊躇いなく全裸になりプレイ用のイスに腰掛けた。
二人がいるのはいわゆるSM専用ホテルの一室で、それ用の道具が様々揃っている。照明はしっかりしているのに、壁が赤や黒を多用しているせいで薄暗い印象を与えていた。
泉水が座るように言われたイスはそんな中でもシンプルなものだった。部屋の中を見渡せば厳つい拘束具が付いていたり、座るだけで足が開かせられるなんていう一般では目にすることのないものばかりだが、國実が指定したそのイスは肘掛のついたデザインがレトロというだけで変わったところは見当たらない。
革張りであるそれに裸で座った泉水はさすがに冷たさを感じたが、クッション性は存分にあってこれなら長時間座らされても耐えられそうだとつい癖でそんなことを考えていた。
泉水がそうしてイスの感触を確かめている間に國実は泉水が脱ぎっぱなしにしていた服を軽く畳んで部屋の隅に片付けていた。それに気がついた泉水は驚き、慌てる。
「あっ、スミマセン!」
焦って立ち上がった泉水の前に手をかざし、國実は動きを制しそのまま座るように促した。
「別にオレが気になっただけだから。さて、早速始めるが、手足を拘束する前に、オレと遊ぶ時のルールだ。絶対に無理はするな、本気で嫌だと思ったり、やめて欲しいと思った事はすぐに言え」
明らかに雰囲気が違っていた。
口調も声色もさっきと変わらない。表情も同じ。
困ったな、でも仕方ないな。
そんな感じだと泉水もちゃんと分かっている。
泉水だって無理を言っている自覚はちゃんとあるし、むしろ空気を読む事には長けている方だ。
國実は泉水の押しに負けて、今だけ相手にしてくれようとしているだけだと。
けれど、この雰囲気が突然どこからやってきたのか分からなかった。
「僕は大抵のことは大丈夫なんです」
泉水はゾクゾクと嬉しくなっていた。
支配させようなんて気配は微塵もないのに、國実からはそれを感じてしまう。いや、支配ではなく服従する喜びを与えてくれそうな予感だ。
この微妙な差が本当に泉水が求めてきた事ではないかと、さらに期待が高まっていった。
そんな泉水の高まりを正確に感じっている國実は、やっぱり呆れつつ、さらに大丈夫なんて言ってしまうことにも困ったものだと苦笑が漏れる。
それでもやると言ったからと進めていく。
「……一応だ。口を塞ぐとはしないから辛かったら言え、いいな?」
「はい」
泉水が笑顔で返事をすると國実はあるものを掲げて見せた。その一瞬で二人の雰囲気は一気に変わり、淫靡な香りが焚かれたかのように独特の空気か部屋に漂いだした。
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