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月日4
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次の週の木曜日。
國実からメールが入った。毎週、週末の予定を知られるために送られてくるものだったので、泉水は嬉しいながらも特に意識することなくそれを読んだ。
しかしいつもと違う文面が一番最後に現れた。
\u003C今週も土曜日出勤。
会社から直接行くが、遅くなりそうだから夕飯は食べておいて。
それから89ページから103ページまで暗記しておくように。>
昼休みにメールを受け取った泉水は思わず心臓が跳ねた。
誰に見られてもそれで意味が分かるわけないのだが、泉水はとっさに周りを振り返り誰も近くにいないことを確かめてしまった。
顔が自然ににやけるのを泉水は必至で耐えて、その日の仕事を速攻で終わらせ帰宅した。
とるものもとりあえず小説を手に取ると、すぐさま言われたページを確認した。
泉水はそれを繰り返し読みこみながら、先週のことがあくまでも次の土曜の布石でしかないことをしっかりと理解していた。
そして焦らされた分だけ期待は高まる。國実はあの時泉水が何を思って朗読していたか、あの本を買った時点ですでにそれは分かっていたのだ。だから時間をわざとおいて泉水を泳がせたのだろう。この悶々とした時間もすべて計算のうち。
それとあの後すぐにしなかったのは、泉水を思ってのことではないかと考えた。二時間声を出し続けるのは、喘ぎなれている泉水でもなかなか喉が疲れた。國実がちゃんと気にかけてくれたので、翌日枯れてしまうこともなかったが、あのあとプレイになっていたらどうだか分からない。
國実は何もかも計算できてしまう人だと泉水は身をもって知っていたので、その想像もあながち間違いではないはずだと思えた。
しっかり頭に叩き込んで迎えた土曜日の夜。
メールの通りスーツ姿で部屋にやってきた國実は大きめの紙袋を携えていた。
すでに準備万端パジャマ姿の泉水にそれを渡すとちょっとだけ休憩だと言ってソファーでネクタイをとり一息ついた。
「國実さんこれ中見てもいいの?」
「どっちでも、このあと使うように買ったものだから見たかったらどうぞ」
泉水はかなり興味をひかれたが、あとで見れるのならと楽しみは取っておくことにして國実に飲み物を出すことを優先した。
「ビール飲む?」
「そうだなー、あーでも今日肌寒かったしこの前買った日本茶のあたかーーい奴の方が嬉しいな」
泉水はうなずくと軽やかに準備を始めた。
國実は酒にもめっぽう強いがいつでも飲むというわけではなかった。泉水が飲むときは必ず一緒に飲んだが酔うということもなくアルコールを楽しみ、意外にもペットボトルのはジュースも新作が出れば買うし、日本茶や紅茶やコーヒーもどんな淹れ方のものでもそれはそれで楽しみながら味わう、まったくこだわりが無いような趣向だった。
しかし茶葉やコーヒー豆の扱いもちゃんと分かっていて、それぞれ最高に淹れる方法も知っている。
泉水は前に國実が淹れた玉露の美味さに感動して、それを教えてもらっていた。急須や湯飲みは國実が持ち込んだものをそのまま置いてあり、いつでも淹れられるようになっている。
「あーー美味い。日本人に生まれて良かったと感じる瞬間だ」
泉水は小躍りしたい気分で國実の横に座ると、自分用にも淹れたそれを味わった。
和やかな時間でまどろみそうになった時、國実は気合を入れるように立ち上がった。
「よし! やるか!」
もう一仕事とでも言いそうな勢いでわきによけてあった紙袋を持ち上げた。
「泉水、あけたい?」
楽しそうにいう國実に逆らうはずもなく受け取ると中からいくつかの袋を取り出した。
「これって制服!?」
「そ、高校のブレザー。しかもアニメ仕様になってるからそこらの高校じゃ目にしないデザイン。それでいてテイラーやってる奴が作ったもんだから着心地も抜群」
「國実さんが買ったの?」
「実はダチにそういうの作るのが趣味の奴がいるんだ。そいつから買った」
國実の交友関係の広さに驚きつつも、袋を開けていると気になるものが出てきた。
「これって詰襟だよね、しかも國実さんサイズ」
「……あいつ、まーもともと俺のも注文してあったから遊びでそれにしたんだろ」
「國実さんも着てくれるんだ!」
予想外のことに泉水のテンションは異常に上がってしまった。
手にしている詰襟はなんと真っ白なのだ、本当にアニメや漫画でしか目にしないものだから國実が着るなんてこんな機会でもなければ絶対にない。もとよりコスプレしてくれるとは思っていなかったので嬉しすぎるサプライズだった。
「國実さん、着てみて着てみて」
「はいはい、泉水もそっちの着ろよ」
國実は苦笑いしながらも渋ることなく着替えていくと、三十とは思えない、それどころが現実離れして二次元世界から抜け出たような姿が目の前にあらわれた。
自分の着替えを忘れるほど見惚れていると、國実は詰襟の窮屈さに渋い顔をしながら視線を泉水によこしにやりと笑った。
「なんだ着替えさしてほしいのか」
「……ぇ?」
泉水が何を言われたのか理解する前に、國実はさっさと衣装を取り上げパジャマを脱がしていく。
慌てふためきながら國実にされるがままになっていると、ワイシャツを着させられボタンまで留めてくれる。
モスグリーンのチェックのズボンにローズピンクのジャケットという見慣れない色合いなのに生地とデザインのせいなのか嫌味になっていない。サイズも泉水にちょうど良かった。
ネクタイまでしっかり國実に締めてもらうと、童顔の泉水はすっかり高校生のようだった。
國実からメールが入った。毎週、週末の予定を知られるために送られてくるものだったので、泉水は嬉しいながらも特に意識することなくそれを読んだ。
しかしいつもと違う文面が一番最後に現れた。
\u003C今週も土曜日出勤。
会社から直接行くが、遅くなりそうだから夕飯は食べておいて。
それから89ページから103ページまで暗記しておくように。>
昼休みにメールを受け取った泉水は思わず心臓が跳ねた。
誰に見られてもそれで意味が分かるわけないのだが、泉水はとっさに周りを振り返り誰も近くにいないことを確かめてしまった。
顔が自然ににやけるのを泉水は必至で耐えて、その日の仕事を速攻で終わらせ帰宅した。
とるものもとりあえず小説を手に取ると、すぐさま言われたページを確認した。
泉水はそれを繰り返し読みこみながら、先週のことがあくまでも次の土曜の布石でしかないことをしっかりと理解していた。
そして焦らされた分だけ期待は高まる。國実はあの時泉水が何を思って朗読していたか、あの本を買った時点ですでにそれは分かっていたのだ。だから時間をわざとおいて泉水を泳がせたのだろう。この悶々とした時間もすべて計算のうち。
それとあの後すぐにしなかったのは、泉水を思ってのことではないかと考えた。二時間声を出し続けるのは、喘ぎなれている泉水でもなかなか喉が疲れた。國実がちゃんと気にかけてくれたので、翌日枯れてしまうこともなかったが、あのあとプレイになっていたらどうだか分からない。
國実は何もかも計算できてしまう人だと泉水は身をもって知っていたので、その想像もあながち間違いではないはずだと思えた。
しっかり頭に叩き込んで迎えた土曜日の夜。
メールの通りスーツ姿で部屋にやってきた國実は大きめの紙袋を携えていた。
すでに準備万端パジャマ姿の泉水にそれを渡すとちょっとだけ休憩だと言ってソファーでネクタイをとり一息ついた。
「國実さんこれ中見てもいいの?」
「どっちでも、このあと使うように買ったものだから見たかったらどうぞ」
泉水はかなり興味をひかれたが、あとで見れるのならと楽しみは取っておくことにして國実に飲み物を出すことを優先した。
「ビール飲む?」
「そうだなー、あーでも今日肌寒かったしこの前買った日本茶のあたかーーい奴の方が嬉しいな」
泉水はうなずくと軽やかに準備を始めた。
國実は酒にもめっぽう強いがいつでも飲むというわけではなかった。泉水が飲むときは必ず一緒に飲んだが酔うということもなくアルコールを楽しみ、意外にもペットボトルのはジュースも新作が出れば買うし、日本茶や紅茶やコーヒーもどんな淹れ方のものでもそれはそれで楽しみながら味わう、まったくこだわりが無いような趣向だった。
しかし茶葉やコーヒー豆の扱いもちゃんと分かっていて、それぞれ最高に淹れる方法も知っている。
泉水は前に國実が淹れた玉露の美味さに感動して、それを教えてもらっていた。急須や湯飲みは國実が持ち込んだものをそのまま置いてあり、いつでも淹れられるようになっている。
「あーー美味い。日本人に生まれて良かったと感じる瞬間だ」
泉水は小躍りしたい気分で國実の横に座ると、自分用にも淹れたそれを味わった。
和やかな時間でまどろみそうになった時、國実は気合を入れるように立ち上がった。
「よし! やるか!」
もう一仕事とでも言いそうな勢いでわきによけてあった紙袋を持ち上げた。
「泉水、あけたい?」
楽しそうにいう國実に逆らうはずもなく受け取ると中からいくつかの袋を取り出した。
「これって制服!?」
「そ、高校のブレザー。しかもアニメ仕様になってるからそこらの高校じゃ目にしないデザイン。それでいてテイラーやってる奴が作ったもんだから着心地も抜群」
「國実さんが買ったの?」
「実はダチにそういうの作るのが趣味の奴がいるんだ。そいつから買った」
國実の交友関係の広さに驚きつつも、袋を開けていると気になるものが出てきた。
「これって詰襟だよね、しかも國実さんサイズ」
「……あいつ、まーもともと俺のも注文してあったから遊びでそれにしたんだろ」
「國実さんも着てくれるんだ!」
予想外のことに泉水のテンションは異常に上がってしまった。
手にしている詰襟はなんと真っ白なのだ、本当にアニメや漫画でしか目にしないものだから國実が着るなんてこんな機会でもなければ絶対にない。もとよりコスプレしてくれるとは思っていなかったので嬉しすぎるサプライズだった。
「國実さん、着てみて着てみて」
「はいはい、泉水もそっちの着ろよ」
國実は苦笑いしながらも渋ることなく着替えていくと、三十とは思えない、それどころが現実離れして二次元世界から抜け出たような姿が目の前にあらわれた。
自分の着替えを忘れるほど見惚れていると、國実は詰襟の窮屈さに渋い顔をしながら視線を泉水によこしにやりと笑った。
「なんだ着替えさしてほしいのか」
「……ぇ?」
泉水が何を言われたのか理解する前に、國実はさっさと衣装を取り上げパジャマを脱がしていく。
慌てふためきながら國実にされるがままになっていると、ワイシャツを着させられボタンまで留めてくれる。
モスグリーンのチェックのズボンにローズピンクのジャケットという見慣れない色合いなのに生地とデザインのせいなのか嫌味になっていない。サイズも泉水にちょうど良かった。
ネクタイまでしっかり國実に締めてもらうと、童顔の泉水はすっかり高校生のようだった。
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