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ジンSide 〜王様の楽しみ〜 前編
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目が覚めたという感覚もなく、俺は突然始まった。
誕生の瞬間から俺はもう全てが整った状態だったが、分かることは、名前だけ。
けれど歩くことは考えずともでき、頬に触れるものが風だとも知っていた。
必要だと思えば、何もないところから火を起こし、水を湧かせる。
食事も睡眠も自分の生命維持に必要ないと、暇をもて余して理解した。
膨大な知識はあり何をするにも困ることはなかったが、俺が個人的に思い入れのある土地やそこに住む者たちはどこもありはしなかった。
当然誰も知り合いはいない。
じっとしていても自分が何を知っていて、何を知らないのかを確かめづらかったため、いろいろと移動しているうちに勝手に付いてくる者が現れた。俺が自由だからこそ、そいつらの行動を止める理由も権利もないと思い、好きにさせていた。
分からないことは何もなかったと言いたいが、そういう奴らや出会う色んな者たちの行動や感情だけはどうにも理解できなかった。
だがまぁ、それも気にしなければ問題ない。
時には頼まれごとをされることもあったが、検証するついでの片手間にでもやってやれば満足していたから、それでよかったんだろう。
そうやって膨大な量の知識が整理できた頃、知らぬ間に増えている周りを彷徨くやつらから定住を勧める声を聞き、それもありかと場所を探し、何だかんだと盛り上がる周りが騒がしかったから、デカイ家を建てたら静かになった。
しかし、誰もいないと思ったその土地に先住者がいたのだ。
気配が探れないほど魔力の低い魔物が一人。
その魔物が訪ねてきてると報告があり、いきなり建てたことを謝ろうとすれば、自分が魔王だと呼ばれていることが邪魔になり謁見の間に呼び寄せる形になってしまった。
そもそも謁見の間も言われて作ったのもので、初めてやってきたのがその魔物。
初めて座る席は自分で作ったにも関わらず思いもよらないほど高く、誰が座っても前に来た奴は威圧的に感じるだろうと知る。
案の定、すでにそこで待っていたそいつは小さくなってひざまづいている。
真っ黒のようで光に透けると焦げ茶色の髪、きなりのよれた服、自分も含め周りにいる奴らと比べると少し小柄な体格だ。
そして何より肌が白い。それだけはどこでも出会ったことのないほどの白さだ。けれどその白さが見えるのも手とうなじくらいなもので顔も伏せているから窺うことができなかった。
「顔を見せろ」
反射的にあげられた顔にすぐさま絶望が映る。
それほど怖がられる姿をしてるつもりはなかったが、異質な自覚はあるので仕方ない。
無駄にデカく作った城だから住むように勧めてみたが、洞窟の方が良いと断られた。
興味深い。
見に行ってみると原始的な暮らしぶりが伺えたが、何より魔物が可愛かった。
皆が魔王と呼ぶなかで、何故か俺を王様だと言う。
魔王と王様では違いがあることに気付いているのだろうか。
魔王は必ずしも統治する者ではない。
けれどその魔物に王様と言われるのは心地よくそのままにした。
寝床の具合を確かめてみたが、そこより自分のベッドの方が遥かに良かったから、横で寝ているうちに魔物を自室に連れ帰った。
無理矢理城に住まわせたかったわけではないが、より良いベッドにどういう反応を示すか知りたくなったからだ。
ただ記憶の中にあった城を再現したせいで、無駄に装飾の多い内装になってしまっているのが、この魔物の好みではないかもしれない。
洞窟でのある意味単純な暮らしが、そう思わせた。
初対面ではあれほど緊張していたのに、今は腕の中でスヤスヤと眠っている。
目が覚めたらどう改築したら気に入るか聞いてみようと、寝顔を眺めながら考えていた。
目覚めたら案の定驚いていたが、話すと認識を変えさせられた。
魔力が弱いと総じて知能も高くはないと思い込んでいた俺に、エトは違うことを知らされる。
過去の経験から自分を守ろうと言葉を選んでいること、そしてそこから過去がうかがい知れた。
それが健気で、ますます可愛さが増す。
俺のそばにいれば、守ってやれる。
力の弱いものを見下し虐める者はこの城の中にはいない。もしいたならすぐに追い出してやる。
生まれてから初めての感情が自分の中に芽生えたと分かり、その衝動をそのまま行動に移した。
ここまで生きている過程で知識の整理の一環で何度か性行為も試していたが、そんなものとは桁違いにエトは良かった。
羞恥心は低いが、もの慣れず初な反応を示し、俺の行為を恐怖ではなく信頼で受け入れている様。
俺を想う感情が伴っていないことは残念だが、それでも俺しか知らない体が俺を受け入れたことは歓喜に近かった。
つい夢中になっていた。
飽きられるほど抱いたのに、まだ抱き足りない。
俺の精を浴びせるほど注いだことが少し心配だったが、害もなければ利益さえないようで安心した。
俺の周りにいるとたまに進化する奴もいるから、初めて直接魔力を渡すエトにはもっと影響があるかもしれないと考えたが、ただ魔力が減らないようになるだけで、最大値が上がったりすることもなく、清々しいまでにエトのままでいる。
惜しいような嬉しいような複雑な心境だった。
だからこそ、心置き無く抱き、俺の体を覚え込ませるようにしつこくしたり、意地悪をしてみたりして、エトの様子を楽しんだ。
それとは別にエトと話すのも楽しかった。
俺の知らない城の様子も知ることができ、俺の仕事の話を興味深そうに聞いてくれることも嬉しかった。
だから今までにないくらいに積極的に働いてみた。
エトが感心したり、感動したりするからだ。
「王様はすごいなー」
ニコニコとエトは口癖のようにそう言った。
ある時。
「気に入ったか?」
「うん、美味しい」
人の出入りが激しくなった副産物として、料理の幅が広がったことが思いの外エトを喜ばせた。
「こんな珍しい果物も流通できるようになるんだ」
「主は魔法薬とコヌーイの絹地を卸すことなんだがな」
コヌーイは飼育が難しい虫の一種だが、その繭から取れる糸が高級品だ。それをさらに様々特殊技術で薬品に浸けたり、染色したりして、付加価値を高めて交易品に仕立てた。
もとはエトに肌触りの良い服を着せたかったから探した物だったが、食べ物を与えた時の方がより良い反応だ。
魔法薬は勝手に研究してるやつがいるから、それを売りに出しただけだ。
正直変なものばかりでどうして売れるのか謎でしかない。謎だが変なものほどエトが面白かったり感心したりするので、使いはしないが研究は促している。
惚れ薬や媚薬ならまだ分かるが、声色が変わるだの体が半透明になるだのはやはり俺に理解ができない。
それでも買う奴がいるなら売るだけだ。
その商売の必要に迫られいろいろと道ができ、陸路は整備し、空路も確立し、他所の魔王との異次元通路まで作った。
お陰でエトが喜ぶ食べ物が手に入る。
「俺にも食べさせろ」
「どうぞー」
執着がないからすぐくれる。
渋るのはヤりすぎた時ぐらいだ。
そうやって日常は緩やかに穏やかにエトも同じように過ごしているはずだった。
だが俺が気づかなかっただけで、エトはあっさりと決断をしていた。
エトがいなくなったのは突然だった。
やむを得ず長期の出張に行っている間に出ていったようだ。
短い書き置きだけ残して。
帰ってきてから姿を探しても見付からない。
我ながら不思議と驚きはしなかった。
「エトはどこに行った」
「いないのですか?!」
「気付かなかったのか」
「三日ほど前に見掛けましたが、それ以後は地下の洞窟にいるものとばかり」
「では理由も分からないな」
「理由は……」
「分かるのか」
「レグル様の結婚が理由かと」
「結婚? 何の話だ」
聞けば俺はもう少ししたら結婚することになっていた。
様々な姫達が城に住むことになるのは了承したが、それが結婚に繋がっているとは思いもよらなかった。
「あいつはそれを悲観して出ていったのか?」
そんなことはないと分かっていながら、どこか期待して口から出ていた。
すぐ探せると思っていたからそんな余裕があった。
「それは分かりませんが、いろいろと言われていたのは間違いありません」
「何を誰に言われていた?」
「簡単に言えば、立場を弁えろと」
「立場だと? エトを貶めるようなことか」
そんな奴はここにはいないと思っていたが俺の買いかぶりだったようだ。
気分が悪い。
けれど俺の傍に一番長くいる目の前の奴は雰囲気の変わった俺に僅かに怯えを見せながらも、問うてきた。
「……畏れ多いことを承知で伺いますが、あの子をどうなさるおつもりだったのですか?」
「どうもこうもない」
あれがいるから俺はここに居続けた。
城を建てたからではなく、あいつにいろいろな物を食べさせることが楽しくて、あいつが人々の生活の営みを見るのが好きだから街ができることに手を貸し、いつのまにか俺の意味のない日々の生きる理由になっていた。
そして簡単には見つけられないとようやく思い知った。
あいつの力では三日で行ける距離など高が知れてるだろうと、周囲を魔力で探ってみたが、弱すぎるためか痕跡さえ追えない。
出張前に散々抱いて、あいつの中には俺の力が補給されているはずなのに全く行方知れずだ。
もうあいつの意思でここに戻ってくることはないと分かっている。
この場所にいる意味も目的も、魅力もないのだから戻ってくるはずもない。
俺に執着をみせることもなかったのだから、紙切れに一言だけで消えてしまったのだ。
そんなあいつに不思議と怒りの感情は湧かなかった。
俺といることに利益を感じないあいつだから近くにいて欲しいと思うのに、俺といることで口煩く言われる場所に留まらせることは理不尽だろう。
だからこそ、俺はもとの俺に戻る。
いや、前以上に無気力になり、世界のすべてが無意味になった。
闇に籠り、あいつの気配だけをただ探す日々。
闇の外の世界のことはどうでも良かった。
エトを知る前までのことは暇潰しでしかなかったと悟った今、気をやることさえ無駄だ。
闇に溶け、あいつが活動する夜を探る。
誕生の瞬間から俺はもう全てが整った状態だったが、分かることは、名前だけ。
けれど歩くことは考えずともでき、頬に触れるものが風だとも知っていた。
必要だと思えば、何もないところから火を起こし、水を湧かせる。
食事も睡眠も自分の生命維持に必要ないと、暇をもて余して理解した。
膨大な知識はあり何をするにも困ることはなかったが、俺が個人的に思い入れのある土地やそこに住む者たちはどこもありはしなかった。
当然誰も知り合いはいない。
じっとしていても自分が何を知っていて、何を知らないのかを確かめづらかったため、いろいろと移動しているうちに勝手に付いてくる者が現れた。俺が自由だからこそ、そいつらの行動を止める理由も権利もないと思い、好きにさせていた。
分からないことは何もなかったと言いたいが、そういう奴らや出会う色んな者たちの行動や感情だけはどうにも理解できなかった。
だがまぁ、それも気にしなければ問題ない。
時には頼まれごとをされることもあったが、検証するついでの片手間にでもやってやれば満足していたから、それでよかったんだろう。
そうやって膨大な量の知識が整理できた頃、知らぬ間に増えている周りを彷徨くやつらから定住を勧める声を聞き、それもありかと場所を探し、何だかんだと盛り上がる周りが騒がしかったから、デカイ家を建てたら静かになった。
しかし、誰もいないと思ったその土地に先住者がいたのだ。
気配が探れないほど魔力の低い魔物が一人。
その魔物が訪ねてきてると報告があり、いきなり建てたことを謝ろうとすれば、自分が魔王だと呼ばれていることが邪魔になり謁見の間に呼び寄せる形になってしまった。
そもそも謁見の間も言われて作ったのもので、初めてやってきたのがその魔物。
初めて座る席は自分で作ったにも関わらず思いもよらないほど高く、誰が座っても前に来た奴は威圧的に感じるだろうと知る。
案の定、すでにそこで待っていたそいつは小さくなってひざまづいている。
真っ黒のようで光に透けると焦げ茶色の髪、きなりのよれた服、自分も含め周りにいる奴らと比べると少し小柄な体格だ。
そして何より肌が白い。それだけはどこでも出会ったことのないほどの白さだ。けれどその白さが見えるのも手とうなじくらいなもので顔も伏せているから窺うことができなかった。
「顔を見せろ」
反射的にあげられた顔にすぐさま絶望が映る。
それほど怖がられる姿をしてるつもりはなかったが、異質な自覚はあるので仕方ない。
無駄にデカく作った城だから住むように勧めてみたが、洞窟の方が良いと断られた。
興味深い。
見に行ってみると原始的な暮らしぶりが伺えたが、何より魔物が可愛かった。
皆が魔王と呼ぶなかで、何故か俺を王様だと言う。
魔王と王様では違いがあることに気付いているのだろうか。
魔王は必ずしも統治する者ではない。
けれどその魔物に王様と言われるのは心地よくそのままにした。
寝床の具合を確かめてみたが、そこより自分のベッドの方が遥かに良かったから、横で寝ているうちに魔物を自室に連れ帰った。
無理矢理城に住まわせたかったわけではないが、より良いベッドにどういう反応を示すか知りたくなったからだ。
ただ記憶の中にあった城を再現したせいで、無駄に装飾の多い内装になってしまっているのが、この魔物の好みではないかもしれない。
洞窟でのある意味単純な暮らしが、そう思わせた。
初対面ではあれほど緊張していたのに、今は腕の中でスヤスヤと眠っている。
目が覚めたらどう改築したら気に入るか聞いてみようと、寝顔を眺めながら考えていた。
目覚めたら案の定驚いていたが、話すと認識を変えさせられた。
魔力が弱いと総じて知能も高くはないと思い込んでいた俺に、エトは違うことを知らされる。
過去の経験から自分を守ろうと言葉を選んでいること、そしてそこから過去がうかがい知れた。
それが健気で、ますます可愛さが増す。
俺のそばにいれば、守ってやれる。
力の弱いものを見下し虐める者はこの城の中にはいない。もしいたならすぐに追い出してやる。
生まれてから初めての感情が自分の中に芽生えたと分かり、その衝動をそのまま行動に移した。
ここまで生きている過程で知識の整理の一環で何度か性行為も試していたが、そんなものとは桁違いにエトは良かった。
羞恥心は低いが、もの慣れず初な反応を示し、俺の行為を恐怖ではなく信頼で受け入れている様。
俺を想う感情が伴っていないことは残念だが、それでも俺しか知らない体が俺を受け入れたことは歓喜に近かった。
つい夢中になっていた。
飽きられるほど抱いたのに、まだ抱き足りない。
俺の精を浴びせるほど注いだことが少し心配だったが、害もなければ利益さえないようで安心した。
俺の周りにいるとたまに進化する奴もいるから、初めて直接魔力を渡すエトにはもっと影響があるかもしれないと考えたが、ただ魔力が減らないようになるだけで、最大値が上がったりすることもなく、清々しいまでにエトのままでいる。
惜しいような嬉しいような複雑な心境だった。
だからこそ、心置き無く抱き、俺の体を覚え込ませるようにしつこくしたり、意地悪をしてみたりして、エトの様子を楽しんだ。
それとは別にエトと話すのも楽しかった。
俺の知らない城の様子も知ることができ、俺の仕事の話を興味深そうに聞いてくれることも嬉しかった。
だから今までにないくらいに積極的に働いてみた。
エトが感心したり、感動したりするからだ。
「王様はすごいなー」
ニコニコとエトは口癖のようにそう言った。
ある時。
「気に入ったか?」
「うん、美味しい」
人の出入りが激しくなった副産物として、料理の幅が広がったことが思いの外エトを喜ばせた。
「こんな珍しい果物も流通できるようになるんだ」
「主は魔法薬とコヌーイの絹地を卸すことなんだがな」
コヌーイは飼育が難しい虫の一種だが、その繭から取れる糸が高級品だ。それをさらに様々特殊技術で薬品に浸けたり、染色したりして、付加価値を高めて交易品に仕立てた。
もとはエトに肌触りの良い服を着せたかったから探した物だったが、食べ物を与えた時の方がより良い反応だ。
魔法薬は勝手に研究してるやつがいるから、それを売りに出しただけだ。
正直変なものばかりでどうして売れるのか謎でしかない。謎だが変なものほどエトが面白かったり感心したりするので、使いはしないが研究は促している。
惚れ薬や媚薬ならまだ分かるが、声色が変わるだの体が半透明になるだのはやはり俺に理解ができない。
それでも買う奴がいるなら売るだけだ。
その商売の必要に迫られいろいろと道ができ、陸路は整備し、空路も確立し、他所の魔王との異次元通路まで作った。
お陰でエトが喜ぶ食べ物が手に入る。
「俺にも食べさせろ」
「どうぞー」
執着がないからすぐくれる。
渋るのはヤりすぎた時ぐらいだ。
そうやって日常は緩やかに穏やかにエトも同じように過ごしているはずだった。
だが俺が気づかなかっただけで、エトはあっさりと決断をしていた。
エトがいなくなったのは突然だった。
やむを得ず長期の出張に行っている間に出ていったようだ。
短い書き置きだけ残して。
帰ってきてから姿を探しても見付からない。
我ながら不思議と驚きはしなかった。
「エトはどこに行った」
「いないのですか?!」
「気付かなかったのか」
「三日ほど前に見掛けましたが、それ以後は地下の洞窟にいるものとばかり」
「では理由も分からないな」
「理由は……」
「分かるのか」
「レグル様の結婚が理由かと」
「結婚? 何の話だ」
聞けば俺はもう少ししたら結婚することになっていた。
様々な姫達が城に住むことになるのは了承したが、それが結婚に繋がっているとは思いもよらなかった。
「あいつはそれを悲観して出ていったのか?」
そんなことはないと分かっていながら、どこか期待して口から出ていた。
すぐ探せると思っていたからそんな余裕があった。
「それは分かりませんが、いろいろと言われていたのは間違いありません」
「何を誰に言われていた?」
「簡単に言えば、立場を弁えろと」
「立場だと? エトを貶めるようなことか」
そんな奴はここにはいないと思っていたが俺の買いかぶりだったようだ。
気分が悪い。
けれど俺の傍に一番長くいる目の前の奴は雰囲気の変わった俺に僅かに怯えを見せながらも、問うてきた。
「……畏れ多いことを承知で伺いますが、あの子をどうなさるおつもりだったのですか?」
「どうもこうもない」
あれがいるから俺はここに居続けた。
城を建てたからではなく、あいつにいろいろな物を食べさせることが楽しくて、あいつが人々の生活の営みを見るのが好きだから街ができることに手を貸し、いつのまにか俺の意味のない日々の生きる理由になっていた。
そして簡単には見つけられないとようやく思い知った。
あいつの力では三日で行ける距離など高が知れてるだろうと、周囲を魔力で探ってみたが、弱すぎるためか痕跡さえ追えない。
出張前に散々抱いて、あいつの中には俺の力が補給されているはずなのに全く行方知れずだ。
もうあいつの意思でここに戻ってくることはないと分かっている。
この場所にいる意味も目的も、魅力もないのだから戻ってくるはずもない。
俺に執着をみせることもなかったのだから、紙切れに一言だけで消えてしまったのだ。
そんなあいつに不思議と怒りの感情は湧かなかった。
俺といることに利益を感じないあいつだから近くにいて欲しいと思うのに、俺といることで口煩く言われる場所に留まらせることは理不尽だろう。
だからこそ、俺はもとの俺に戻る。
いや、前以上に無気力になり、世界のすべてが無意味になった。
闇に籠り、あいつの気配だけをただ探す日々。
闇の外の世界のことはどうでも良かった。
エトを知る前までのことは暇潰しでしかなかったと悟った今、気をやることさえ無駄だ。
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