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外伝
五
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この世界には酒と煙草は存在する。と言っても、麦酒は下町に行かないとないし、煙草もニコチンが入っている訳ではない。
貴族は主にワインを好み、煙草に入っているのは紅茶の茶葉である。気品を追求した結果なのか、単に作りやすさの問題なのか。
まぁ、煙草に関しては、ニコチンなんてものがこの世界に存在しないのだろう。違法ドラッグ的なものはあるが、精神を壊すくらいなら、毒で殺してしまう方が早いのだ。なんせ、精神が壊れてても生きてる限り、嫡男は嫡男だからな。血筋継承の闇である。
まぁ、何にしろ嗜好品ではあるが、この二つは満たしていた。
魔術師という職も悪くない、給料いいし、好きな時に好きなことできるし。
ただなぁ、流石にパチンコはないのだ。そもそも、カメラとかビデオとかもない。
娯楽が少ないのは利点なのか不便なのか、知らなければどちらでもないか。
兎に角、俺はパチンコがやりたい。世界にも慣れ、聖女騒動も落ち着き、研究も停滞中。
こうなると暇なんだ、フラフラ出歩いてもいいが、前に幻術を使って、夜遅くまでフラッと出歩いたら、俺がいないことに気付いたラドライトが、騎士団使って大捜索するという大騒ぎになったのだ。騎士団長、ラドライトに甘過ぎる。
以降の教訓から、俺は引き篭った方がいいと判断した。ラドライトが怖い。
ならば、パチンコを作ってやろう! となり、普段は絶対に触れない、魔道具に触れてみることにした。
·.⟡⎯⎯⎯⎯ラドライト視点⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·
少し急ぎ足で師匠の研究室へと向かう。この間、フラッと居なくなって、いつの間にか帰ってきていた件があるので、なるべく近くにいたい。
僕以外の護衛を配置すればいいのだろうけれど、それは僕が嫌。拙い独占欲だと言われても、譲れない事はあるのだ。
コンコンッと、研究室のドアをノックする。名前を名乗れば、入れと低く心地いい声がした。どうやら、今日はいるようだ。
研究室の中は、煙草に使われてる茶葉である、アールグレイの香りが充満している。
煙草はあまり体に良くない。使われているのは茶葉だから一見無害そうだが、物を燃やした煙を吸うのがよくないのでは? と最近言われている。だから、吸う量を減らしてくれとは頼んでいるのだが。
本人曰く、ヘビースモーカーだ許せ、とのこと。ヘビースモカーが何かはわからないが、屁理屈捏ねてないで、健康に気を使ってほしいものである。
そして、何かパチン、パチン、と弾くような音がする。
師匠は魔術そのものの研究者なので、魔石を使う魔道具は専門外のはずだが、珍しい物でも見つけて買ったのだろうか。
「師匠、何をして……」
いつもの椅子に座って、机の上に置かれた魔道具を弄っている。
下の方にダイヤルが付いており、どうやらそれを回して動かしているらしい。
「んっ、おかえり。ちょっと暇潰ししてただけだ」
この前急に抱きつかれた辺りから、自然と師匠は僕におかえりと言ってくれる。これはもう事実婚なのでは! と、アンダリュサイトに言ったら、はいはいと流された。
嬉しさを顔に出さないよう、力を入れつつ、師匠が弄っていた魔道具に目を移す。
ダイヤルの上には幾つかの小さい玉が置かれ、この玉が弾かれて音を出していたようだ。
板にガラスを張って、中は迷路のようになっている。
「なんですか、コレ」
「パチンコ」
「ぱち……?」
「玉を弾いて、どこに入るかで点数を競う遊戯だ」
パチンとまた音がする。七つほどの玉を弾かせると、迷路を縦横無尽に動き回り、穴へと消える。
簡易的な転移魔術が組み込まれているようで、玉は元の位置へと戻った。
「……楽しいん、ですか……?」
「まぁ、無心にはなれるよな。やっぱ映像ないと迫力に欠けるかぁ、でも流石にモニターは無理だよなぁ」
ダラーと玉を弾いている師匠は、何かよく分からないことをブツブツと言っている。
後に、この魔道具は師匠制作と聞いて、師匠がなぜ魔術そのものを研究するのかわかった気がした。
恐らく師匠と魔道具は合わないのだ、なんというか、技術ではなくセンスの部分で。
その後、ガーネットは語る。
こういうモノは、それ自体ではなく、金を賭けるから楽しいのだと。
貴族は主にワインを好み、煙草に入っているのは紅茶の茶葉である。気品を追求した結果なのか、単に作りやすさの問題なのか。
まぁ、煙草に関しては、ニコチンなんてものがこの世界に存在しないのだろう。違法ドラッグ的なものはあるが、精神を壊すくらいなら、毒で殺してしまう方が早いのだ。なんせ、精神が壊れてても生きてる限り、嫡男は嫡男だからな。血筋継承の闇である。
まぁ、何にしろ嗜好品ではあるが、この二つは満たしていた。
魔術師という職も悪くない、給料いいし、好きな時に好きなことできるし。
ただなぁ、流石にパチンコはないのだ。そもそも、カメラとかビデオとかもない。
娯楽が少ないのは利点なのか不便なのか、知らなければどちらでもないか。
兎に角、俺はパチンコがやりたい。世界にも慣れ、聖女騒動も落ち着き、研究も停滞中。
こうなると暇なんだ、フラフラ出歩いてもいいが、前に幻術を使って、夜遅くまでフラッと出歩いたら、俺がいないことに気付いたラドライトが、騎士団使って大捜索するという大騒ぎになったのだ。騎士団長、ラドライトに甘過ぎる。
以降の教訓から、俺は引き篭った方がいいと判断した。ラドライトが怖い。
ならば、パチンコを作ってやろう! となり、普段は絶対に触れない、魔道具に触れてみることにした。
·.⟡⎯⎯⎯⎯ラドライト視点⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·
少し急ぎ足で師匠の研究室へと向かう。この間、フラッと居なくなって、いつの間にか帰ってきていた件があるので、なるべく近くにいたい。
僕以外の護衛を配置すればいいのだろうけれど、それは僕が嫌。拙い独占欲だと言われても、譲れない事はあるのだ。
コンコンッと、研究室のドアをノックする。名前を名乗れば、入れと低く心地いい声がした。どうやら、今日はいるようだ。
研究室の中は、煙草に使われてる茶葉である、アールグレイの香りが充満している。
煙草はあまり体に良くない。使われているのは茶葉だから一見無害そうだが、物を燃やした煙を吸うのがよくないのでは? と最近言われている。だから、吸う量を減らしてくれとは頼んでいるのだが。
本人曰く、ヘビースモーカーだ許せ、とのこと。ヘビースモカーが何かはわからないが、屁理屈捏ねてないで、健康に気を使ってほしいものである。
そして、何かパチン、パチン、と弾くような音がする。
師匠は魔術そのものの研究者なので、魔石を使う魔道具は専門外のはずだが、珍しい物でも見つけて買ったのだろうか。
「師匠、何をして……」
いつもの椅子に座って、机の上に置かれた魔道具を弄っている。
下の方にダイヤルが付いており、どうやらそれを回して動かしているらしい。
「んっ、おかえり。ちょっと暇潰ししてただけだ」
この前急に抱きつかれた辺りから、自然と師匠は僕におかえりと言ってくれる。これはもう事実婚なのでは! と、アンダリュサイトに言ったら、はいはいと流された。
嬉しさを顔に出さないよう、力を入れつつ、師匠が弄っていた魔道具に目を移す。
ダイヤルの上には幾つかの小さい玉が置かれ、この玉が弾かれて音を出していたようだ。
板にガラスを張って、中は迷路のようになっている。
「なんですか、コレ」
「パチンコ」
「ぱち……?」
「玉を弾いて、どこに入るかで点数を競う遊戯だ」
パチンとまた音がする。七つほどの玉を弾かせると、迷路を縦横無尽に動き回り、穴へと消える。
簡易的な転移魔術が組み込まれているようで、玉は元の位置へと戻った。
「……楽しいん、ですか……?」
「まぁ、無心にはなれるよな。やっぱ映像ないと迫力に欠けるかぁ、でも流石にモニターは無理だよなぁ」
ダラーと玉を弾いている師匠は、何かよく分からないことをブツブツと言っている。
後に、この魔道具は師匠制作と聞いて、師匠がなぜ魔術そのものを研究するのかわかった気がした。
恐らく師匠と魔道具は合わないのだ、なんというか、技術ではなくセンスの部分で。
その後、ガーネットは語る。
こういうモノは、それ自体ではなく、金を賭けるから楽しいのだと。
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