5 / 5
【5】勇者、プロポーズ失敗後のメンタルが豆腐すぎる件 後編
しおりを挟む
さて、そろそろ本当に飲みに行くかと歩き出しかけた、その時だった。ふと、違和感に気づいた。
――なんか、足りない。
「あれ、そういえばルカスは?まだ来てなくね?」
「いるわよ、ずっとそこに」
リオネがひょいと指差す先に視線を向けてみれば――いた。通りの端の石段にちんまりしゃがみ込んで、膝を抱えてる人影。顔は見えないが間違いなくルカスだ。
「あいつ、ただでさえ小さいのにあんなに丸まってたら、石ころと判別つかねえな」
「ジーク、それは流石に彼に失礼だぞ」
ルカスは一般的な成人男性と比較すると身体はちっこいが、魔法の腕とプライドだけは超一流だ。ただ最近少しばかり様子がおかしい。
「あいつ何してんだ?腹でも痛いのか?」
ルカスに近づこうとした時、リオネがさらっと言った。
「まだ幻覚が見えてるらしいのよ」
「は?」
そういえば魔王城の外で、ルカスが幻術使いの四天王――あの胡散臭い眼鏡の男、クロウに絡まれてたのを思い出した。まさか、あの時の幻術がまだ効いてるってわけか。ルカスが歯が立たないだけあってかなりの腕前らしい。
「リオネ、君なら解除出来るだろ?早く助けてあげないと」
シリウスが焦った顔で言うが、リオネは全く慌てる様子もなく答えた。
「声はかけたのよ?でも余計なことするなって本人が言うから」
「えぇ……?」
「案外楽しんでるっぽくて。あの子素直じゃないから。自然に消えるまで放っておきましょ」
あー、なるほど。大好きな人になら何をされても嬉しいってやつか。それにしては随分ガタガタ震えてるけど。
これはもう好意か恐怖か分からん領域だ。シリウスが言葉を失っている横で、俺は眉間を押さえた。
「高度なSMプレイだな……。とりあえず回収するか」
そう言って、俺たちは石ころと化したルカスを引きずるようにして連れていく。本人は全く気づいていないようだ。まじで大丈夫か、うちの魔法使い。
そんな中、あっけらかんとした声が落ちてきた。
「シリウス、アーセルさんを一度デートに誘ってみるのはどうかしら?必要ならリリアちゃんも協力してくれるって言ってたし」
「デート……!そ、その手があったか……!」
目がパッと輝いたシリウスに、俺は思わずため息をついた。
「むしろ初手に求婚なのがおかしいだろ。普通段階踏むだろ」
「大人になった僕を、知ってもらう機会だ……!」
そんなくだらないやり取りをしていた、その時だった。――俺の視界に、とんでもない存在が映り込んだ。
「ん、あれは……?」
人混みの向こう、通りを歩いている二人組。背中越しでも圧倒的な気配を隠しきれない男――あれは、魔王ヴァルド。そしてその隣を、私服姿で歩いているのは……話題の中心人物、勇者が恋い焦がれる四天王・アーセル。
「魔王とアーセルじゃねぇか?」
まさかとは思ったがあの銀白色の髪、少し困ったような表情は見間違いようがない。
そして案の定、それを見たシリウスが反応した。
「そうだ、デートだ、デ……デートォォォオ!?」
あまりの動揺に声が裏返ってる。ルカスが微動だにしないのが逆に怖いレベルでの絶叫。
「僕より先にアーセルとデートなんて……!許さん、今すぐ聖剣の錆にしてやる!!!!!」
「バカ、止まれシリウス!!」
俺は反射的に駆け出そうとしたシリウスの肩を慌てて掴んだ。
「ここがどこだか忘れたのか!?中立都市エレボスだぞ、暴れたら即捕まる!しかも今、周りに魔族も人間も山ほどいるんだぞ!?騒ぎ起こして勇者ってバレたら色々終わるだろ」
「……た、確かにそれはまずい、けど……!」
シリウスは、ぎりぎりの理性を首の皮一枚で繋ぎとめていた。奥歯をギリッと噛み締めながら、なんとか自分を抑えているのが伝わってくる。
人間である勇者が、魔族である四天王のひとりを巡って魔王と喧嘩――なんて公になったら、色々と詰む。
まあ、実際のところは、たぶん普通に買い物とかしてるだけだろ。魔王の方も荷物持ちしてるし。てかなんで魔王が荷物持ちしてんだよ。そっちの方が気になるわ。
俺は小声で言った。
「少し尾行して、確かめてみるか?その代わり絶対騒ぎ起こすなよ。冷静に、気配消せ」
「わ、わかった。誓うよ。聖剣ブレードリーフの名にかけて」
「ブレ……何て?」
あまりのダサさに思わず聞き返してしまった。いや、まあ別にいいけどさ。
――なんか、足りない。
「あれ、そういえばルカスは?まだ来てなくね?」
「いるわよ、ずっとそこに」
リオネがひょいと指差す先に視線を向けてみれば――いた。通りの端の石段にちんまりしゃがみ込んで、膝を抱えてる人影。顔は見えないが間違いなくルカスだ。
「あいつ、ただでさえ小さいのにあんなに丸まってたら、石ころと判別つかねえな」
「ジーク、それは流石に彼に失礼だぞ」
ルカスは一般的な成人男性と比較すると身体はちっこいが、魔法の腕とプライドだけは超一流だ。ただ最近少しばかり様子がおかしい。
「あいつ何してんだ?腹でも痛いのか?」
ルカスに近づこうとした時、リオネがさらっと言った。
「まだ幻覚が見えてるらしいのよ」
「は?」
そういえば魔王城の外で、ルカスが幻術使いの四天王――あの胡散臭い眼鏡の男、クロウに絡まれてたのを思い出した。まさか、あの時の幻術がまだ効いてるってわけか。ルカスが歯が立たないだけあってかなりの腕前らしい。
「リオネ、君なら解除出来るだろ?早く助けてあげないと」
シリウスが焦った顔で言うが、リオネは全く慌てる様子もなく答えた。
「声はかけたのよ?でも余計なことするなって本人が言うから」
「えぇ……?」
「案外楽しんでるっぽくて。あの子素直じゃないから。自然に消えるまで放っておきましょ」
あー、なるほど。大好きな人になら何をされても嬉しいってやつか。それにしては随分ガタガタ震えてるけど。
これはもう好意か恐怖か分からん領域だ。シリウスが言葉を失っている横で、俺は眉間を押さえた。
「高度なSMプレイだな……。とりあえず回収するか」
そう言って、俺たちは石ころと化したルカスを引きずるようにして連れていく。本人は全く気づいていないようだ。まじで大丈夫か、うちの魔法使い。
そんな中、あっけらかんとした声が落ちてきた。
「シリウス、アーセルさんを一度デートに誘ってみるのはどうかしら?必要ならリリアちゃんも協力してくれるって言ってたし」
「デート……!そ、その手があったか……!」
目がパッと輝いたシリウスに、俺は思わずため息をついた。
「むしろ初手に求婚なのがおかしいだろ。普通段階踏むだろ」
「大人になった僕を、知ってもらう機会だ……!」
そんなくだらないやり取りをしていた、その時だった。――俺の視界に、とんでもない存在が映り込んだ。
「ん、あれは……?」
人混みの向こう、通りを歩いている二人組。背中越しでも圧倒的な気配を隠しきれない男――あれは、魔王ヴァルド。そしてその隣を、私服姿で歩いているのは……話題の中心人物、勇者が恋い焦がれる四天王・アーセル。
「魔王とアーセルじゃねぇか?」
まさかとは思ったがあの銀白色の髪、少し困ったような表情は見間違いようがない。
そして案の定、それを見たシリウスが反応した。
「そうだ、デートだ、デ……デートォォォオ!?」
あまりの動揺に声が裏返ってる。ルカスが微動だにしないのが逆に怖いレベルでの絶叫。
「僕より先にアーセルとデートなんて……!許さん、今すぐ聖剣の錆にしてやる!!!!!」
「バカ、止まれシリウス!!」
俺は反射的に駆け出そうとしたシリウスの肩を慌てて掴んだ。
「ここがどこだか忘れたのか!?中立都市エレボスだぞ、暴れたら即捕まる!しかも今、周りに魔族も人間も山ほどいるんだぞ!?騒ぎ起こして勇者ってバレたら色々終わるだろ」
「……た、確かにそれはまずい、けど……!」
シリウスは、ぎりぎりの理性を首の皮一枚で繋ぎとめていた。奥歯をギリッと噛み締めながら、なんとか自分を抑えているのが伝わってくる。
人間である勇者が、魔族である四天王のひとりを巡って魔王と喧嘩――なんて公になったら、色々と詰む。
まあ、実際のところは、たぶん普通に買い物とかしてるだけだろ。魔王の方も荷物持ちしてるし。てかなんで魔王が荷物持ちしてんだよ。そっちの方が気になるわ。
俺は小声で言った。
「少し尾行して、確かめてみるか?その代わり絶対騒ぎ起こすなよ。冷静に、気配消せ」
「わ、わかった。誓うよ。聖剣ブレードリーフの名にかけて」
「ブレ……何て?」
あまりのダサさに思わず聞き返してしまった。いや、まあ別にいいけどさ。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】元勇者の俺に、死んだ使い魔が美少年になって帰ってきた話
ずー子
BL
1年前くらいに書いた、ほのぼの話です。
魔王討伐で疲れた勇者のスローライフにかつて自分を庇って死んだ使い魔くんが生まれ変わって遊びに来てくれました!だけどその姿は人間の美少年で…
明るいほのぼのラブコメです。銀狐の美少年くんが可愛く感じて貰えたらとっても嬉しいです!
攻→勇者エラン
受→使い魔ミウ
一旦完結しました!冒険編も思いついたら書きたいなと思っています。応援ありがとうございました!
信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
王子様から逃げられない!
一寸光陰
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。
魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。
柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。
そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。
すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。
「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」
そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。
魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。
甘々ハピエン。
え?俺って思ってたよりも愛されてた感じ?
パワフル6世
BL
「え?俺って思ってたより愛されてた感じ?」
「そうだねぇ。ちょっと逃げるのが遅かったね、ひなちゃん。」
カワイイ系隠れヤンデレ攻め(遥斗)VS平凡な俺(雛汰)の放課後攻防戦
初めてお話書きます。拙いですが、ご容赦ください。愛はたっぷり込めました!
その後のお話もあるので良ければ
四天王一の最弱ゴブリンですが、何故か勇者に求婚されています
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
「アイツは四天王一の最弱」と呼ばれるポジションにいるゴブリンのオルディナ。
とうとう現れた勇者と対峙をしたが──なぜか求婚されていた。倒すための作戦かと思われたが、その愛おしげな瞳は嘘を言っているようには見えなくて──
「運命だ。結婚しよう」
「……敵だよ?」
「ああ。障壁は付き物だな」
勇者×ゴブリン
超短編BLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる