四天王最弱な俺ですが、何故か魔王と勇者に溺愛されて困ってます

才賀ゆう

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【5】勇者、プロポーズ失敗後のメンタルが豆腐すぎる件 後編

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 さて、そろそろ本当に飲みに行くかと歩き出しかけた、その時だった。ふと、違和感に気づいた。
 ――なんか、足りない。
 
「あれ、そういえばルカスは?まだ来てなくね?」
「いるわよ、ずっとそこに」
 
 リオネがひょいと指差す先に視線を向けてみれば――いた。通りの端の石段にちんまりしゃがみ込んで、膝を抱えてる人影。顔は見えないが間違いなくルカスだ。

「あいつ、ただでさえ小さいのにあんなに丸まってたら、石ころと判別つかねえな」
「ジーク、それは流石に彼に失礼だぞ」

 ルカスは一般的な成人男性と比較すると身体はちっこいが、魔法の腕とプライドだけは超一流だ。ただ最近少しばかり様子がおかしい。

「あいつ何してんだ?腹でも痛いのか?」

 ルカスに近づこうとした時、リオネがさらっと言った。

「まだ幻覚が見えてるらしいのよ」
「は?」
 
 そういえば魔王城の外で、ルカスが幻術使いの四天王――あの胡散臭い眼鏡の男、クロウに絡まれてたのを思い出した。まさか、あの時の幻術がまだ効いてるってわけか。ルカスが歯が立たないだけあってかなりの腕前らしい。
 
「リオネ、君なら解除出来るだろ?早く助けてあげないと」
 
 シリウスが焦った顔で言うが、リオネは全く慌てる様子もなく答えた。
   
「声はかけたのよ?でも余計なことするなって本人が言うから」
「えぇ……?」
「案外楽しんでるっぽくて。あの子素直じゃないから。自然に消えるまで放っておきましょ」

 あー、なるほど。大好きな人になら何をされても嬉しいってやつか。それにしては随分ガタガタ震えてるけど。
 これはもう好意か恐怖か分からん領域だ。シリウスが言葉を失っている横で、俺は眉間を押さえた。
 
「高度なSMプレイだな……。とりあえず回収するか」

 そう言って、俺たちは石ころと化したルカスを引きずるようにして連れていく。本人は全く気づいていないようだ。まじで大丈夫か、うちの魔法使い。
 そんな中、あっけらかんとした声が落ちてきた。
 
「シリウス、アーセルさんを一度デートに誘ってみるのはどうかしら?必要ならリリアちゃんも協力してくれるって言ってたし」
「デート……!そ、その手があったか……!」

 目がパッと輝いたシリウスに、俺は思わずため息をついた。
 
「むしろ初手に求婚なのがおかしいだろ。普通段階踏むだろ」
「大人になった僕を、知ってもらう機会だ……!」
 
 そんなくだらないやり取りをしていた、その時だった。――俺の視界に、とんでもない存在が映り込んだ。
 
「ん、あれは……?」
 
 人混みの向こう、通りを歩いている二人組。背中越しでも圧倒的な気配を隠しきれない男――あれは、魔王ヴァルド。そしてその隣を、私服姿で歩いているのは……話題の中心人物、勇者が恋い焦がれる四天王・アーセル。

「魔王とアーセルじゃねぇか?」

 まさかとは思ったがあの銀白色の髪、少し困ったような表情は見間違いようがない。
 そして案の定、それを見たシリウスが反応した。
 
「そうだ、デートだ、デ……デートォォォオ!?」

あまりの動揺に声が裏返ってる。ルカスが微動だにしないのが逆に怖いレベルでの絶叫。

「僕より先にアーセルとデートなんて……!許さん、今すぐ聖剣の錆にしてやる!!!!!」
「バカ、止まれシリウス!!」

 俺は反射的に駆け出そうとしたシリウスの肩を慌てて掴んだ。

「ここがどこだか忘れたのか!?中立都市エレボスだぞ、暴れたら即捕まる!しかも今、周りに魔族も人間も山ほどいるんだぞ!?騒ぎ起こして勇者ってバレたら色々終わるだろ」
「……た、確かにそれはまずい、けど……!」

 シリウスは、ぎりぎりの理性を首の皮一枚で繋ぎとめていた。奥歯をギリッと噛み締めながら、なんとか自分を抑えているのが伝わってくる。
 人間である勇者が、魔族である四天王のひとりを巡って魔王と喧嘩――なんて公になったら、色々と詰む。
 まあ、実際のところは、たぶん普通に買い物とかしてるだけだろ。魔王の方も荷物持ちしてるし。てかなんで魔王が荷物持ちしてんだよ。そっちの方が気になるわ。
 俺は小声で言った。

「少し尾行して、確かめてみるか?その代わり絶対騒ぎ起こすなよ。冷静に、気配消せ」
「わ、わかった。誓うよ。聖剣ブレードリーフの名にかけて」
「ブレ……何て?」
 
 あまりのダサさに思わず聞き返してしまった。いや、まあ別にいいけどさ。
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