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【4】勇者、プロポーズ失敗後のメンタルが豆腐すぎる件 前編
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「皆、すまない。あれだけ尽力してもらったというのに、僕は今回も……悲願を果たすことができなかった」
目の前で重たい空気をまとっている男は、俺たちのリーダー勇者シリウスだ。立ち姿はそれなりに凛としているが、その背中は、いつもより一回りも二回りも小さく見える。
国を救う英雄がそんな調子で大丈夫かよ、とか思いながらも、俺は軽くため息をつきながらいつものように声をかけた。
「まあ、どんまいだったな。また挑戦だ」
「ジーク……ありがとう」
俺はジークハルト・ラヴェル。今じゃ元がつくが、かつては盗賊団のリーダーだった男だ。皆からはジークって呼ばれてる。
今や勇者なんて肩書きを持つシリウスとは同郷で、幼い頃は同じ村で一緒に育った。俺は早々に村を飛び出してからは盗賊団を率いて、あっちこっち駆け回ってたが……まあ、色々あって今は勇者パーティの一員に加わっている。
パーティの構成は、シリウスに俺、他には神官のリオネと魔法使いのルカス。一見、バランスは良いし戦闘能力も高いが……全員中身にそこそこの問題を抱えている。でもまあ、何だかんだで俺はこいつらが嫌いじゃない。
さて、今の俺たちはというと――魔族と人間が共存する中立都市・エレボスに滞在中だ。最近じゃ、魔王城に突っ込んだ後は各々好き勝手に動いて、ここで合流するって流れが定番になってる。
この街は俺たちの拠点である王国と、魔王が支配するダルケノス帝国のちょうど中間にあって、情報も物資も集まりやすい便利な場所だ。人間も魔族もごった返していて独自のルールがある分、騒ぎさえ起こさなければ身元がバレることもない。
まあ、こんな姿のシリウスを見て、まさか勇者様だなんて思う奴はいねぇだろうけどな。
「またアーセルは、僕のプロポーズに応じてくれなかった……」
こいつが本気で落ち込んでいる理由、それは魔王を倒せなかったからなんかじゃない。想いを込めて、魂を込めて挑んだプロポーズに、またしても玉砕したからだ。
相手の名前はアーセル。魔王軍の四天王のひとりで、見た目はクールな美青年。何故か戦っている姿は見たことがなく実力は未知数。
魔王ヴァルドもアーセルの事が好きらしく、度々魔王VS勇者のラブバトルが繰り広げられている。当の本人であるアーセルは、どっちにもなびかず、適度に逃げて、たまに巻き込まれて振り回されてっていう、まあまあ不憫な立ち位置だ。
「そろそろ馬鹿みたいに魔王城に突っ込むのはやめた方がいいんじゃないの?魔王さんもアーセルさんも、けっこう本気で困ってるわよ」
口を開いたのはリオネ。一見すると清楚系、慈愛に満ちた聖女様って感じの見た目をしている。初対面の頃はその雰囲気に見事に騙されてちょっと惚れかけたことがあるが……リオネにはとんでもない妄想癖という爆弾が隠されていて、詳しくは言えないが俺の中では完全に黒歴史入りしている。
「ぼ、僕は勇者らしく正々堂々と魔王に勝負を仕掛けているだけで……!」
「それでこの間アーセルさんが大変な目にあったんじゃないの?愛する人を危険に晒すのがシリウスにとっての愛なのかしら?」
「うっ……」
勇者、撃沈。ぐうの音も出ないってのはこういうときに使うんだな。
この学習しない男のフォローをしておくと、シリウスはあの四天王、アーセルに再会するまでは王国に真っ直ぐ尽くして、弱き者を助ける、誠実で実に勇者らしい勇者だった……のだが、恋って奴は本当に人を狂わせるらしい。
仕方ない、ここは俺が空気を変えてやるしかねぇ。
「まあまあ、気を取り直して飲みにでも行こうぜ?この間の換金もできたことだし、俺の奢りでな!」
こういうときはとりあえず食うか飲むかに限る。
ちなみにこの換金ってやつの正体について言っておくと――前回シリウスと魔王がガチバトルしている間に、ダンテって四天王と酒場で飲み比べをしてたんだ。そしたら奴が酔い潰れてその場で寝ちまってな。城まで送ってやったんだが、別れ際に泥酔状態で『これやるよ』ってお駄賃代わりにやたらゴツい武器を押し付けてきやがった。
念の為ダンテを引き渡した城の兵士に確認したが、
『あーそれ、ダンテさんの部屋に山ほどあるやつなんで、大丈夫です。ていうか、押し返すと多分暴れるんで……大人しく受け取ってもらえると助かります』
って、深いため息つきながら言われた。どうやら兵士達も日常的に振り回されてるらしい。ご愁傷様なことだ。
せっかくもらったもんを無駄にするのも悪いけど、持ち歩くにはデカすぎたんで、エレボスに着いてすぐ質屋に持ち込んだ。ここでは割と貴重な素材らしく、そこそこな臨時収入になったって訳。
「気を遣わせてすまない。ただ盗んだ金で飲み歩く訳には……」
おい待て、今なんつった?
「いやだから貰ったんだって!!」
元盗賊ってだけで信用されてないの理不尽すぎ。ちゃんと更生して真面目に働いてるってのに。
それに魔王城まで押しかけて四天王をお持ち帰りしようとしてる勇者様にだけは言われたくない台詞だ。
目の前で重たい空気をまとっている男は、俺たちのリーダー勇者シリウスだ。立ち姿はそれなりに凛としているが、その背中は、いつもより一回りも二回りも小さく見える。
国を救う英雄がそんな調子で大丈夫かよ、とか思いながらも、俺は軽くため息をつきながらいつものように声をかけた。
「まあ、どんまいだったな。また挑戦だ」
「ジーク……ありがとう」
俺はジークハルト・ラヴェル。今じゃ元がつくが、かつては盗賊団のリーダーだった男だ。皆からはジークって呼ばれてる。
今や勇者なんて肩書きを持つシリウスとは同郷で、幼い頃は同じ村で一緒に育った。俺は早々に村を飛び出してからは盗賊団を率いて、あっちこっち駆け回ってたが……まあ、色々あって今は勇者パーティの一員に加わっている。
パーティの構成は、シリウスに俺、他には神官のリオネと魔法使いのルカス。一見、バランスは良いし戦闘能力も高いが……全員中身にそこそこの問題を抱えている。でもまあ、何だかんだで俺はこいつらが嫌いじゃない。
さて、今の俺たちはというと――魔族と人間が共存する中立都市・エレボスに滞在中だ。最近じゃ、魔王城に突っ込んだ後は各々好き勝手に動いて、ここで合流するって流れが定番になってる。
この街は俺たちの拠点である王国と、魔王が支配するダルケノス帝国のちょうど中間にあって、情報も物資も集まりやすい便利な場所だ。人間も魔族もごった返していて独自のルールがある分、騒ぎさえ起こさなければ身元がバレることもない。
まあ、こんな姿のシリウスを見て、まさか勇者様だなんて思う奴はいねぇだろうけどな。
「またアーセルは、僕のプロポーズに応じてくれなかった……」
こいつが本気で落ち込んでいる理由、それは魔王を倒せなかったからなんかじゃない。想いを込めて、魂を込めて挑んだプロポーズに、またしても玉砕したからだ。
相手の名前はアーセル。魔王軍の四天王のひとりで、見た目はクールな美青年。何故か戦っている姿は見たことがなく実力は未知数。
魔王ヴァルドもアーセルの事が好きらしく、度々魔王VS勇者のラブバトルが繰り広げられている。当の本人であるアーセルは、どっちにもなびかず、適度に逃げて、たまに巻き込まれて振り回されてっていう、まあまあ不憫な立ち位置だ。
「そろそろ馬鹿みたいに魔王城に突っ込むのはやめた方がいいんじゃないの?魔王さんもアーセルさんも、けっこう本気で困ってるわよ」
口を開いたのはリオネ。一見すると清楚系、慈愛に満ちた聖女様って感じの見た目をしている。初対面の頃はその雰囲気に見事に騙されてちょっと惚れかけたことがあるが……リオネにはとんでもない妄想癖という爆弾が隠されていて、詳しくは言えないが俺の中では完全に黒歴史入りしている。
「ぼ、僕は勇者らしく正々堂々と魔王に勝負を仕掛けているだけで……!」
「それでこの間アーセルさんが大変な目にあったんじゃないの?愛する人を危険に晒すのがシリウスにとっての愛なのかしら?」
「うっ……」
勇者、撃沈。ぐうの音も出ないってのはこういうときに使うんだな。
この学習しない男のフォローをしておくと、シリウスはあの四天王、アーセルに再会するまでは王国に真っ直ぐ尽くして、弱き者を助ける、誠実で実に勇者らしい勇者だった……のだが、恋って奴は本当に人を狂わせるらしい。
仕方ない、ここは俺が空気を変えてやるしかねぇ。
「まあまあ、気を取り直して飲みにでも行こうぜ?この間の換金もできたことだし、俺の奢りでな!」
こういうときはとりあえず食うか飲むかに限る。
ちなみにこの換金ってやつの正体について言っておくと――前回シリウスと魔王がガチバトルしている間に、ダンテって四天王と酒場で飲み比べをしてたんだ。そしたら奴が酔い潰れてその場で寝ちまってな。城まで送ってやったんだが、別れ際に泥酔状態で『これやるよ』ってお駄賃代わりにやたらゴツい武器を押し付けてきやがった。
念の為ダンテを引き渡した城の兵士に確認したが、
『あーそれ、ダンテさんの部屋に山ほどあるやつなんで、大丈夫です。ていうか、押し返すと多分暴れるんで……大人しく受け取ってもらえると助かります』
って、深いため息つきながら言われた。どうやら兵士達も日常的に振り回されてるらしい。ご愁傷様なことだ。
せっかくもらったもんを無駄にするのも悪いけど、持ち歩くにはデカすぎたんで、エレボスに着いてすぐ質屋に持ち込んだ。ここでは割と貴重な素材らしく、そこそこな臨時収入になったって訳。
「気を遣わせてすまない。ただ盗んだ金で飲み歩く訳には……」
おい待て、今なんつった?
「いやだから貰ったんだって!!」
元盗賊ってだけで信用されてないの理不尽すぎ。ちゃんと更生して真面目に働いてるってのに。
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