わたしのヨーコ

海室

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わたしのヨーコ

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 四組。七月の暑さすらも流石に身を潜める二十時代のこの街の、駅から自宅までの徒歩十分の道程にてすれ違った『男女連れ』の数。
 東京都とはいえベッドタウン、都市部から離れたこの街のこの時間帯ですれ違うにしては、やはり多いように感じる。
 ずいぶんと居心地の悪い街に来てしまったものだ。出勤に便利で、かつ賃貸の家賃を筆頭に諸経費が安く済むといった甘言ばかりを注視し『子育て推進の街』というスローガンをすっかり見落としていた。物価ばかりが上昇し、給金がほとんど横ばいの昨今、物価が安いこの街ほど家族で暮らすに適した場所はないだろう。無論治安も安定している。それ故の、盲点だった。
 五組目。私がそのようなことを考えつつ、俯きながら歩く私と男女連れがすれ違う。外国語を話す少し年嵩の男女のように見受けられたが、国籍も年齢も関係はない。私にとって『男女連れ』だ。
「いいかげん結婚したらどうだ」
「小学校の同級生の高橋君はもうお子さん三人もいるんだって」
 男女連れとすれ違うたび、東京からいくらか離れた実家に住む両親の小言が頭に反芻する。私の年齢は確かに三十代半ばで、適齢期を少し過ぎている。両親曰く二人が籍を入れたのは今の私より十歳若い頃だったらしい。
 両親の婚姻時の年齢も、私の現時点の年齢もどうでもよい。そもそも高橋とは小中学校が同学年だっただけでとんと口を利いたこともない。少子高齢化が驀進し、先ほど百円均一店で買ったボールペン一つにも十パーセントもの消費税が課せられる今、結婚して子を育てるなどもはや貴族の特権ではないか。
 両親の小言だけでなく、通勤にもやや不便だった実家を出て、逃げるようにこの東京のベッドタウンに引っ越してきたのだ。通勤時間の短縮と両親の小言が消失したことによりいくらか余裕はできたものの、街で男女連れとすれ違うだけで聞き飽きた両親の短い文句が脳裏をかすめるほど、私は呪いをかけられていたという事実に苦笑せざるを得ない。
 独りで薄い微笑を浮かべながら引き続き歩けば、向かって右側に公園が見えてくる。都内では珍しい公衆便所付きのやや大きめの公園だ。遊具の類いも一式揃っており、週末は『家族連れ』で賑わう。煩わしいし、やかましい。本当に盲点だった。浅はかだった。公園の向かいに私の住まうアパートがあるからだ。
 家賃の安さをきちんと考慮すべきだった。過去に床で住民が腐乱してフローリングにどす黒い染みを作っていた程度であれば我慢できたが、現状の私にはどうにも家族連れ、子供の声は堪えてしまう。おまけに私の部屋はアパートの一階だ。たまに子供が駆けこんでくることがあり、大変参っている。怒鳴り散らして追い払えばいいものだが、子供にすら大きく出られない自分の気の小ささを『真人間でいたいから』という面白みのない言い訳を心で述べて納得するしかできない。『子供嗤うな来た道だ』とは言うが、私には共有住宅でかくれんぼをした思い出などない。嗤えるほどのものは何も持ち合わせていない。
 玄関を開けると、部屋の中に籠っていた熱気が私の全身を包んだ。アパートの一階のくせ妙に日当たりがよく、しかし風通しが悪いので熱を溜め込むのだ。冬場は暖かいかもしれないが、夏場は空調なしではもはや死地となり果てる。
 照明を点け、玄関口の右手側にある温度計、おそらく前住民が勝手に設置して置いて行ったものだろうが、を確認する。三十五度。もう二十時なのにだ。私が子供の頃は、室温が三十五度を指すのはそれこそ真夏の昼間の屋根裏部屋程度のものだった。全く地球温暖化も甚だしい。
 視線を温度計から下に落とすと、下駄箱の上に放り投げておいた先月の給与明細票が目についた。手取り額は一人で生活するには問題のない額だが、子育てマイカーマイホームなど到底考えられない程度の数値が記載されていた。
 上がるのは税率と気温ばかりで肝心の給料はほとんど上がらない。こんな状況でどう結婚して子供を育てろというのだ。
 頬に汗が一筋伝う。部屋の照明より先に空調のリモコンに手を伸ばし、運転のスイッチを押下する。アパートの築年数は三十年と少し。無論空調の形式も旧式である。リモコンの反応も悪いため、私は運転ボタンを二、三度連打する癖がある。いつもはそれでようやく電源が入るくせ、今宵は思いのほか反応がよかった。空調は一度唸りを上げると、瞬く間に運転を停止してしまった。私は舌打ちをして、右手人差し指に力を込めてもう一度運転ボタンを押し込んだ。やっとのことで空調に電源が入った。
 やはり照明は入れず冷蔵庫に手を伸ばす。扉を開けるとビールの500ml缶が数本冷蔵されているだけで他は何もない。そのうちの一本に手を伸ばし、扉を叩きつけるように閉める。そして缶のプルタブを押し上げると同時に、ようやく部屋の照明のスイッチを入れた。
 結婚して家族がいれば、帰宅時も部屋が明るく、冷蔵庫の中も色とりどりの食材が詰め込まれていたりするのだろうか。ふと私の脳裏にそんな情景がよぎったが、頭を左右に振って強引に霧散させる。子供はきっと、この骨董品エアコン以上に聞かん坊のはずだ。そんな言い訳をしながら、私はビールを一口煽った。



「金曜飲み会行かねェの?」
「行きません」
 就業定時時間の18時の会社オフィス。私の隣の席の男がかけた言葉をはじき返すように返答した。
「酒は得意ではありません」
「つれねえなァ」
 男はそう言いながら両手を後頭部で組んで見せた。オフィスの窓から傾きかけた西日が差し込む。ちょうど窓はこの男の向く正面側、つまり私の背後にあるため逆光となっており、陰った顔はよく見えなかった。
「そもそも俺ら同期じゃん。ずっと敬語なのもつれねェってか……」
 そういえばこの男、同期入社だったか。新卒入社してはや十年近く、百人以上いた同期も半分以上が転職や転勤で顔を合わせなくなり久しい。もう顔も名前もほとんど思い出せない。隣のデスクにいるもののこの男も私にとって例外ではない。そもそも学生時分はとうの昔に過ぎ去ったのに、未だ同期だのなんだのと嘯くこの男の能天気さが実におこがましい。
「お疲れ様です」
 私は唾棄するように言い残すと席を立った。あっなどと素っ頓狂な感嘆詞を上げながら男は私の肩を掴もうと右手を伸ばしてきたが、それは空を切った。視線だけ向けてみると、空中で静止した男の薬指には結婚指輪がはめられていた。
 私は速足にオフィスの扉を潜り抜ける。私を独りだけ乗せたエレベーターは途中の階で停止することなく、地上階への扉を開く。速足にビルから出ると、出入り口の目の前にある地下鉄の階段を下る。改札をくぐり、それと同時にホームへ滑り込んできたベッドタウン方面の下り電車に乗り込んだ。所謂『いつもの電車』だ。
本日は隣の男に絡まれて少々時間を食ってしまったが、これが私の退勤時のルーチンである。
 この電車で30分も揺られれば冗談のように暑いながらも安寧の我が家に到着する。そんなことを考えながら視線を泳がせていると、乗降用の扉を背に立っている私から見て左斜め前の席に座る老婆と目が合った。そういえばこの老婆はこの時間のこの車両でよく見かける気がする。
「お兄さんどこに住んでいるの?」
 目の合った老婆は微笑みかけて来てそう言う。
我住在你不知道的あなたの知らないところだ。」
 ある一定以上の年齢の女性は、どうしてこう初対面の人間の目的地や住所を聞きたがるのか。私は口をついて大学時代に少し齧った北京語で返答する。案の定素養のなかったであろう老婆は目を丸くして面食らったので、それを尻目に隣の車両へ向かって行った。幸い帰宅ラッシュには早い時間だったため立ち乗りの乗客は少なく、すんなりと車両移動ができた。
 まったく人付き合いとは煩わしいものだ。私は小さく舌打ちをし、ワイヤレスイヤホンをスラックスの右ポケットから取り出して電源を入れ、両耳に突っ込んだ。
 こんなに人付き合いが煩わしいのに、自分以外の、しかも異性と共同生活を送るなんてゆめゆめ考えたくない。数年前の、あまり流行らなかった流行歌を聞きながらそんなことを考えていると、イヤホンの向こう側から降車駅に接近しているアナウンスが響く。30分とは存外短い。幼少の頃は永遠の時間に感じられたものの、歳を重ねるにつれ短く感じるようになった。三十代も半ばに差し掛かった私には本当に瞬く間に感じる。
 車両から降車し、まっすぐ改札口に向かう。人の波に乗りながら四列の改札を潜り抜け、一つしかない出口に向かってエスカレーターの右側を速足で登っていく。横目に待ち合わせていた近辺の高校と思しき制服を着た男女連れが合流しているのが見えたが、無論私が駅で待ち合わせる相手など存在しない。
 なんというか、本日は必要以上に他人と会話してしまったなと思った。会社でも仕事上の会話以上のことは口にしなくなり久しい。会話が煩わしい私にとって、雑談は必要以上に疲弊する要素の一つでしかない。
 最寄りのコンビニで、500ml缶のビールと肴の魚肉ソーセージを購入する。この間に発した言葉は「袋をください」の一言のみ。更に疲労が蓄積する。
 俯いでまっすぐ自宅へ速足を向ける。自分の履いているつま先の長い革靴が視界の下を出たり入ったりしている様しか見えないが、視線を落として歩くことの多い私にとって自宅までの道程は見えなくても十分だった。
 歩くことおよそ10分、視線を上げると自宅の前の公園が眼前に広がった。30分で瞬く間であれば、10分など一瞬の光の矢である。小学生はよくもまあこんな短い時間でボールを抱えて校庭に駆けだせるものだとふと感心してみる。まあ私の小学生時代は、文学少年でもないくせ教室の隅で一人で本を読んでいた陰気な少年だったが。
 本日の日中の最高気温は36度だった。まだ八月までほど遠いくせ気温ばかりがどんどん上昇する。どうせ私の部屋も灼熱地獄の様相を醸しているのだろう。おかげで害虫の類も死滅してくれるが、心の準備なしに入室すると私もそれらと同じ運命を辿りかねない。
 少し心の準備をするか。そう思うが早い私はU字の金属を逆さに刺した車止めを中央に構えた公園の入り口をくぐり、最寄りのベンチに腰を下ろした。
 この公園は都内住宅地に鎮座する割には存外広く、遊具だけでなく水飲み場や公衆便所を備えていた。私の座ったベンチは入口を右手側に少し離れて正面に遊具、左斜め前側に水飲み場と公衆便所、そして私の左手側には夏が本番に近づき鬱蒼としている植え込みがあった。
 二度目だが都内にしては比較的広い。それでも私の実家最寄りの公園と比べるとずいぶん狭い。この猫の額をやや広げた程度の狭い公園に、週末は親子連れでずいぶん賑わう。ここ以外に行くところがないのか。頼むから遊園地にでも行ってくれ。少し遠出した千葉県におあつらえ向けの施設があるだろう。
 こういった都市部の広い公園には、概ね浮浪者が蟄居しているものだが、ここにはそういった手合いは存在しない。日が暮れると瞬く間に人の影はなくなり、今もその例に漏れないが、日中の人の多さと、近所の中年女が野良猫に餌付けしているからか居心地が悪いのだろう。
 餌付けされた野良猫。思い出すと同時にふと左手の茂みから腐臭がすることに気が付く。死んだ猫が土に還りかけているのかと恐る恐る視線を左側に走らせると、視界に入ったのは蝿のたかった空の猫缶だった。猫それ自体、私は嫌いではない……むしろ好きな方であるが、このようにゴミを片付けない無責任な、所謂『猫おばさん』についてはおおよそ肯定できない。
 ああクソ、なんて日だ。少し酔うと気がまぎれるか? 私はそう思いながらビール缶のプルタブを上げ、多めの一口を喉に流し込んだ。金色の清流が乾ききらぬうちに、魚肉ソーセージのビニールパッケージを破って先端を一口かぶりつく。口内に広がったうまみが同時に吸い込んだ腐臭によって上書きされる。全く酷い。
 もういい。頭にきた。暑いが自室で飲もう。私がそう思いつつ腰を上げると、目を逸らしていた左側から小さく「にゃあ」という声が聞こえた。
 視線をそちらにやると、白が基調で黒い模様の入った猫が腰を地面につけてこちらを見ていた。蛾の影を映す街灯は私の右手側からやや入口近く、離れた場所にあるため猫の辺りは暗く、金色の瞳の光彩は開いて真ん丸に、真っ黒に広がっていた。その黒い真珠のような虹彩に私の姿が写っているのが見え、長い尻尾をゆっくり左右に振っているのが見えた。
 おおよそ餌の争奪戦への参加に乗り遅れたのだろう。そして狙うは私の右手に握られた魚肉ソーセージ。猫は利口なのですべての人間が餌付けをしてくれるものではないと理解しているはずだろうが、その保証のない私に対し餌の催促をするほど空腹なのだろう。
「にゃあ」
 もう一声鳴く。かすれた弱弱しい声。嗚呼、全く人間とは罪深き生き物である。神のようにすべてを救えないと理解していながらも、目に映るものは中途半端に救済しようとする。もはやこれは傲慢という大罪であろう。
 そして私もまた罪深き人間の一人であった。ビールをもう一口すすると、途中まで破っていたパッケージをすべて破り、猫に向かって魚肉ソーセージを投げた。それは猫の少し手前に着地する。
 それを視認した猫は飛び掛かるように魚肉ソーセージに食らいついた。そして貪り食う。その姿は畜生の如く……猫は畜生そのものである。一見すればみっともないものだが、畜生が畜生の行動を取るのは実に尊い様なのである。
 私は微笑を浮かべていた。猫の貪り食らう様に愉悦を覚えたのではなく、単純に猫に餌付けするのが楽しかったからだ。なるほど、『猫おばさん』はやることがなく付き合う相手もいないが故、この愉快な行動に日々を費やしていたのか。
「にゃあ」
 猫は魚肉ソーセージをあっという間に平らげると、私に向かって顔を上げひと声鳴いてみせた。口角が上がり、目を細めている。単純にフレーメン反応かもしれないが、私には笑っているように見えた。そしてそのひと鳴きも、私に礼を述べているように聞こえた。
「うまかったか?」
 私の一言に猫は首を傾げてみせる。
「またな」
 私がそう言うと同時に猫は踵を返した。私はその後ろ姿に小さく右手を振ってみせた。
 猫は上機嫌に尻尾と腰を揺らしながら去って行く。立っている尻尾の下には肛門と、コーヒー豆のような陰裂が見えたことで、”彼女”が雌猫、女の子であることが私にはわかった。私は微笑を湛えながら、”彼女”の後ろ姿を見送った。



「最近機嫌いいジャン?」
「そうですか」
 就業時間目前、私の隣の男が言う。相変わらず逆行の西日でこいつの顔は見えない。気にもならないが。
「なんかあったの? 彼女でもできたとか?」
「そうかもしれませんね」
 相変わらずひねりのない安直な発想に辟易させられるが、広義的に考えれば間違ってもいないのかなと自問自答する。
「じゃあ記念に飲みに行くか!」
 男がそう言うと同時に私はパソコンのブラウザ上の勤怠管理システムで退勤のボタンを押下し、失礼しますと言い残して席を立った。男のおいおいという感嘆詞が鼓膜を叩くが、もはや振り返ることもなくオフィスを後にした。
 いつもの電車のいつもの降車口から車両に乗り込む。私から左向かいに座っていた老婆が「ニーハオ」などと声調の合っていない北京語を投げかけて来るが、聞こえないふりをして踵を返し隣の車両に移動する。
 幼少の頃は楽しい時間は瞬く間に過ぎ去り、退屈な時間は実に長く感じたものだ。前者は帰宅して夕餉までテレビゲームで遊んでいた時間、後者は学校の授業や体育の長距離走の時間だ。しかし歳を重ねると不思議なもので、退屈な時間も愉快な時間もあっという間に過ぎ去ってしまう。なんというか実に生き急いでいる気がしないでもない。
 故に残された時間が着実に減っている今、一分一秒を大切に生きるべきなのでは、と改めて考えるのだ。顔も思い出せない同僚やどこの馬の骨ともわからん老婆と会話している時間は実に惜しい。
 最寄り駅に到着すると、駆けだすように降車し改札口を抜ける。コンビニでビールと魚肉ソーセージを買うと、頬を伝う汗も気にせず、小さな買い物袋を片手に駆けだす。
 久々に前を見て走った気がする。いつもは数を数えながら歩いている『男女連れ』が視界の端に入っても気にならなかった。
「ヨーコ」
 徒歩で歩くと駅から10分、運動不足の鈍足の私の駆け足でおよそ2分程度の短縮。その2分ですら、私は”彼女”との時間に費やしたかったのだ。
「にゃあ」
 ヨーコと呼ばれた、先日私が魚肉ソーセージを与えた雌猫が、相変わらず白地に黒い模様が入った背から顔だけをこちらに向けてひと鳴きしてみせた。私をその金色の瞳で視認すると同時に、口角を上げて見せたので、私に向かって微笑んだように見えた。
 あの日の出会いから早ひと月が経とうとしている。私の日課は自宅前の公園でこの雌猫、ヨーコに餌付けをすることになっていた。
 この公園で猫に餌付けをしていた中年女性は、単純に飽きたためか、昨今の異常な暑さのためかすっかり投げ出してしまっていた。そのため餌にありつけないと理解した利口な野良猫連中は一匹、また一匹と姿を消してしまって現在に至る。ぼんやりしているのか、猫たちの情報網からはぐれているのか、ヨーコだけは馬鹿正直にこの公園に足しげく通い、餌にありつけない日々を過ごしていたようだった。
 サテ、ヨーコは頭の回転が鈍いから餌が出ない公園に通い続けたのかと問われると、それは違うと私は思いたい。ヨーコに餌付けを始めて7月が終わり、8月に入ったものの、他の猫がこの公園に戻ってくる兆しが見えないからだ。猫が集会よろしく黄昏時に集まっている姿が散見されるが、ヨーコはこの輪から外れてしまっており情報共有がなされていないのでは……? と、私は考える。いくら猫が群れを成さない動物とはいえ、はぐれてしまっている事実は頭が悪い以上に都合が悪いように感じられるが……。
「ま、ひとりぼっちでも困らないよな」
 私はヨーコの顎を右手で搔くように撫でてやった。ヨーコは目を細めて喉をゴロゴロ鳴らした。その際に、口の右下あたりに黒ぶち模様がまるでホクロの様にあるのが視認できた。これが彼女の『ヨーコ』の名前の由来である。
 私が中学生の頃、クラスメイトに『ヨウコ』という名前の女子生徒がいた。長い黒髪と白い肌、二重の大きな茶色がかった瞳と薔薇の花びらのような唇が美しい、私の初恋の女性だった。内気な私は彼女に声をかけることも叶わず、最後まで遠巻きに見ることしかできなかった。
 そんな『ヨウコ』の口の右下あたりには、ホクロがあった。それにちなんで私はこの雌猫に『ヨーコ』という名前を与えたのだ。
 ところで私は人の顔と名前がてんで覚えられない。同僚の男、帰宅時の電車の老婆はもとより、これだけ身体的特徴はしっかりと思い出せたのに『ヨウコ』の姓名がどうしても思い出せない。
 ヨーコに魚肉ソーセージを差し出す。彼女はそれに鼻を近づけてひと嗅ぎすると、ぷいと顔を逸らした。
「どうしたんだ。昨日はモリモリ食べたじゃないか」
 魚肉ソーセージは飽きたか? 明日はチューブ入りの、あの猫用おやつを持参してみるか?
 私が動画サイトでよく見せられる猫用おやつの短いコマーシャルを脳内で反芻しながら試案していると、ヨーコは私の足元にすり寄って来て、体をこすりつけ始めた。猫の胴体というのは概して長細くしなやかなものだが、それを私の右脚、ぬるりと動いて左脚、といった様子で蛇よろしく巻き付くかの如くまとわりつく。
「おいおいどうしたんだヨーコ」
 その一言にヨーコは掠れた声をひと声上げ、私に視線を投げかけてきた。私の影で大きく広がった金色の瞳の中の黒い光彩に涙で揺れながら私が映っていた。瞳に私を湛えるヨーコの表情は、心なしかうっとりとした、恍惚としたような様子に見えた。
 発情期か。そういえば猫の発情期は8月から9月だったように思える。火照る体を冷ますように砂地の地面をコロコロ転がってみせるヨーコを見ながら考える。
 私の故郷の自治体では、役人が野良猫を捉えて片っ端から去勢手術を施していた。この自治体ではそれをやらないようだが、猫にとっていたずらに繁殖し、自身を含めた平均生存率を下げる方が不幸なのか、それとも生物の本能であり責務たる繁殖力を喪失させられる方が不幸なのか。この街は人間も猫もともに増えるがままにされているわけだが、私には答えが出ない。
「少なくとも猫からは税金は取れんよな」
 私がそんな一言をつぶやくと同時に、月を覆っていた雲が風に流されていった。今夜は満月。ここ数日で一番明るい。
 月明りが私とヨーコを照らした。月光に照らされながら相変わらず地面で身をよじるヨーコは、どことなく苦悶を感じているように見えた。
 月光のスポットライトは私とヨーコだけを照らしていた。無論周囲には誰もいないし、猫も他にいない。世界が私とヨーコのふたりきりのように感じられた。
 ヨーコを救ってやれるのは、私しかいない……。
 私は立ち上がってこちらに尻を向けるヨーコの臀部、尻尾の付け根の辺りに右手を伸ばした。触れられたヨーコの体がびくりと小さく震えるが、私が軽くトントンとそこを叩き始めると同時に長細い尻尾を高く天を衝くように掲げ、腰をゆっくり左右にゆらゆら動かし始める。
 猫の性感帯はおおよそ尻尾と骨盤の付け根あたりにある。どこで誰に聞いたのかもはや思い出せないが、頭の片隅の片隅に置いておいたこの知識がここで役に立った。
 軽く叩くだけでなく、たまにさするように優しく撫でまわす。洋画の濡れ場などで見られる女体を撫でる仕草そのままだったが、無論私は女性に対しこのようなことをしたことはない。人類に対しこうったことをしたことがないので、これが初めての試みである。まさか最初が猫になってしまうとは。
 かくいうヨーコは私に臀部を撫でられ快感が増したのか、ゆっくり崩れるように腹ばいになり、後ろ足だけ少し上げ尻を掲げる態勢になる。そしてそのまま後ろ足のみ小さく足踏みをし始めた。
「俺と交尾したいの?」
 私が呟くようにヨーコに問うと、ヨーコは肯定するかのように掠れた声でひと声鳴いた。
 私はヨーコの腰をさするのをやめると、股座に右手を伸ばし、陰部に触れた。少し湿っている陰裂を人差し指でなぞってみると、ヨーコの体が再びおびえたようにびくりと反応する。しかし快感が走り始めたのか、私の右手に腰を預けるように体重を乗せてきた。仄かに彼女の体温を感じる。火照っているかのように感じられた。
 私は引き続き陰裂を撫で続ける。回数を増すと同時に湿り気も増していく。同時にヨーコの後ろ足の足踏みも速さを増していった。私はもはやヨーコの尻しか見ていない。息が荒くなり、顔も火照って、頬に汗が伝っていた。この時私自身も発情していたのだと、そのときに考える余力などなかった。
 猫の陰裂は小さい。私の人差し指でさえ入るかどうかわからないサイズだ。それはこれまで見て、この度触ってみて理解していたはずなのだが、私は興奮の赴くままヨーコの中に人差し指の先をゆっくりと侵入させた。肉ひだを押し分けて、更に湿り気を含む中へと自身の指を遠慮がちに潜り込ませる。
 ぎゃっとヨーコが短く悲鳴を上げた。痛かったか? と一瞬思ったが、彼女は逃げる様子を見せなかったので、そのまま指の先を小さく小刻みに動かしてみた。
 ヨーコはあえぐように掠れた声で鳴く。猫もこんな甘い声で鳴くんだ、などと私は月明りの下響く彼女の声を聞いて思った。
 ヨーコはびくんと体を小さく震わせると、私を蹴り飛ばすかのように前方に飛びのいた。そして再度地面に転がると、身をよじらせて地面に体をこすりつけた後、自分の股座を舐め始めた。
 絶頂したのか。私はそう思いながら視線を落とすと、自分の股間が膨れ上がっていたのが見えた。ここで猫相手に自身も発情していたのだという事実に気づかされる。
 うしろめたさなど何もない。どうせ私は独りぼっちだ。そう思うと私はおもむろにスラックスに巻いていたベルトを外し、社会の窓のチャックを下ろしていきり立った一物を外気に晒した。
 月明りに照らされた私の『それ』は、尿道球腺液を反射して全体的にてらてらと妖しく映り、普段用途の排泄以外に使うものであるということに改めて気づかされた。この年齢までついぞその用途に使うこともなかったため、すっかり忘れていたともいえる。
 元のサイズに戻さないことには話にもならない。私はいきり立ったそれを、先ほどまでヨーコの陰部を触っていた右手で扱き出す。それと同時にヨーコが股座を舐めるのをやめ、後ろ両足を掲げたままの状態でこちらを見た。
 私は夢中になり右手を動かす。快感がせりあがってくると同時にヨーコがこちらに歩み寄って来て、私の手の動きを凝視する。口を半開きにして、金色の瞳を丸くする。好奇心は猫をも殺すなどという言葉があるが、実に猫という生き物は好奇心旺盛なのだということを認識する。
 ヨーコは初めて見るであろうそれに更に顔を近づける。猫の前で自慰行為にふける酔狂な人間の男などそう多くはないだろう。
私はヨーコに見られていることにさらなる快感が稲妻のように走り、いつもの半分程度の時間で絶頂に達した。月夜に向かって飛び出した精液は空中で弧を描いて落下し、ヨーコの顔面に降りかかった。
ヨーコは一瞬目をつぶったが、何が起こったのかわからないと言わんばかりに口を半開きにして呆気に取られる。すぐさま我に返ると、前足で器用に顔に付いた精液を拭い取り、ひと嗅ぎするとそれを舐めとった。再び口を半開きにし、恐らくこれはフレーメン反応だろうが、呆気に取られたような顔をして虚空を仰いでいるのが少しおかしかった。
 私はそんなヨーコを見て、おかしさと同時に情欲が湧きあがるのを感じた。実質行為には至っていないが、私たちは情事にふけったも同然だ。愛していなければこんなことはできない。
 私はもう独りぼっちではない。ヨーコがいる。この月明りの下、私とヨーコだけだ。ヨーコと私は、もはや一心同体だ。
 わたしのヨーコ わたしだけのヨーコ
 流れてきた雲が月を隠す。月光が陰り、私とヨーコは闇に吸い込まれていった。



 私のヨーコへの行為は過激さを増していった。先日はヨーコを仰向けにひっくり返し、彼女の股座に私の一物を擦りつけた、所謂『素股』をした。私の陰茎のサイズはそう大きいものではないが、ヨーコの中には入らない。猫の陰茎の小ささを思えば人間サイズの摩羅を猫に挿入するのは到底不可能であろう。
 ヨーコは終始鳴いていたが、猫は交尾に際して雌猫があえぐように鳴くのは私もよく知っている。体位的にはきつかろうが、雄猫のように『それ』に棘のない私との交接は、快感のみが残り彼女にとっても天にも昇る気持ちに違いない。
 ヨーコは顔に精液がかかる度に、ぺっぺと吐きだす仕草を行い、顔を拭って地面へと付いたそれを擦り付ける動作をする。精液は苦いと聞いたことがあるので、最初の一口で懲りてしまったのだろう。
 18時、終業時刻だ。私は勤怠システムのボタンを押して、鞄を片手に立ち上がる。
 なあおいと隣の男が何か言ってきた気がするが、私は意も介さずオフィスを飛び出す。そういえばお疲れ様ですとあいさつをしていない気がするが、ここ最近言った記憶が全くない。
 いつもの車両に乗り込んだ。いつもの老婆が本日は立っており、私を視認して何かしらを言おうとしたが、私はそれも意に介さず肩をぶつけて隣の車両に移った。
 もはや一刻の猶予も惜しい。無駄な会話で消耗する体力が心の底からもったいない。
 新婚の夫婦とはこういった心境なのだろう。私は自宅最寄り駅に到着し、降車ドアが開くと同時に飛び出した。
 改札を走り抜け、階段を駆け上がる。駅から自宅まで走っておよそ8分。たった2分の短縮だが、その2分も惜しいほどヨーコに逢いたい。彼女に愛を伝えたい。
 私は公園に向かって駆けながら鞄に手を突っ込んだ。そこからおもむろに、赤いノルディック柄の首輪を取り出した。金色の鈴がちりんと鳴り、街灯に照らされて銀色の指輪が輝いた。ヨーコに贈る、私の愛のプレゼントだ。ヨーコに首輪をつけてやり、私の家へ迎えるつもりだ。引っ越し先のことなど、今は考える余裕はない。ヨーコのことで頭がいっぱいだ。
 私が駆けるたび、右手に握った首輪の鈴がチリチリ音を立てた。その音は私をヨーコの元へと急かす拍車のように感じた。
 あと数十メートル。公園が視界に入ると同時にヨーコの泣き叫ぶような声が響いた。まさか狼藉者に襲われている? 私にとってかけがえのない存在でも、他者から見ればいち野良猫にすぎない。何をされてもおかしくはないはずだ。そう、私が本日塵芥のように無視した、隣の男や電車の老婆のように。
 そんなことはどうでもよい。一刻も早くヨーコの元へ向かわなければ。運動不足で早くも悲鳴を上げている両足に鞭を打ち、最後の数十メートルを死ぬ物狂いに駆ける。
「ヨーコ!」
 公園にたどり着き、切れる息を整える間もなく私は声を振り絞って叫んだ。それと同時に公園入口右手側の街灯の光の下から視線を感じた。
 二つ、視線の数は二つだった。一つはヨーコのもの。もう一つは、前後の脚を追って丸まるように座る重箱座りのヨーコに背後から覆いかぶさるように跨る、黒い猫だった。
 二匹の猫と目が合うと同時にヨーコが再び悲鳴のような声を高らかに上げた。
わたしのヨーコが襲われている。不逞な雄猫に!
わたしのヨーコを汚すな!
こめかみのあたりが熱くなる。胸の内に烈火が蠢くようなものを感じた。怒りの炎だ。私は首輪を握ったままの右手を血が出んばかりに握りしめ、力いっぱい嚙んだ歯の間からは整っていない息が漏れ、歯笛となっていた。
 雄猫は澄んだ青い瞳を細めた。それと同時にヨーコがひと鳴きして飛びのくように雄猫から離れた。そして地面に背中を擦りつけるようにゴロゴロと転がり始めた。その様はまるで不逞の輩の痕跡を消し去るように足掻いているように見受けられ、ひどく苦しそうであった。
 しゃあ、と、雄猫は私を見据えて威嚇する。獣の喧嘩は、先に目を逸らした方が負けだ。私は負けじと雄猫の瞳をじっと見据えた。
「お前、ヨーコになんてことしてくれたんだ」
 私は絞り出すように雄猫に言ってのけた。雄猫はすぐにでも飛び掛からんとせん勢いで、頭を低くし戦闘態勢を取っている。
 しゃあ、と、雄猫がもう一鳴きすると同時に、私は絶叫して不逞の猫に飛び掛かった。私はヨーコを護るため、一騎の騎士となるのだ。
 月明りが向かい合って飛び掛かる一匹の猫と、成人男性の影を地面に落とした。



 イエネコの戦闘力は、生物が本能的に備えているリミッターを外してしまえば素手の人類と同程度であると言われている。そしてイヌ科と異なり、その制御は困難であると言われている。猫の奔放さに因むことであろう。故に大型犬の飼育に届け出は不要であるものの、サーバルキャットやカラカルなどの大型のネコ科の飼育は日本においては届け出と、屋内に檻を作ることが義務付けられていた。
 私は子供のころから喧嘩らしい喧嘩などついぞしたことはなかった。体もそう大きくなければ武道の心得もない。体育の授業の剣道ではいつも頭を竹刀で殴られ、今以上に頭が悪くなってしまうのではと錯覚してしまっていたほどだった。
 そう、私はあっけなく負けたのである。もちろんあの不逞の雄猫はリミッターなど解除していない。人間に劣る力量と体格で、見事平均の人間未満の戦闘力の私を倒してみせたのである。
 武道の心得のない私の拳は空を切るばかりで小さな猫に当たるはずもない。一方で猫は、私の腕を、脚を、そして最後に顔を満遍なく攻撃し、とどめに顔にしがみつかれてこれでもかといわん位に引っ搔き回された。痛みに耐えきれず私は公園の地面に倒れ込むこととなる。
 雄猫は一瞥もくれず、顔を両手で押さえて仰向けに倒れ込む私に尻を向けて去って行った。ヨーコは金色の瞳を細めて、あきれたと言わんばかりに踵を返していった。
「今までの恩を忘れたのか」
 私の呪詛のような一言にもヨーコは振り返ることもなかった。人間のように見えていたものは、所詮獣の類いだった。
 何をやっているんだ。ふと我に返った私は両手を顔から離した。外気に触れたひっかき傷はヒリヒリと痛んだ。ご丁寧に少し砂がついていたので、破傷風にならないことを祈るばかりだった。
 夜空にぽっかりと満月が浮かんでいるのが見えた。傷の痛みか、己の情けなさか、原因はわからないが満月は少し歪んで見えた。
 ふと右ポケットに突っ込んでいたスマートフォンが振動した。仰向けのままそれを取り出し、右手に取ってみると、通知欄に母親からのメッセージが着信されていた。
『高橋君とその奥さんに会いました。会いたがってるよ!』
 要らぬ世話の記載されたメッセージと共に一枚の画像ファイル。両手でピースを作って鼻につく笑顔を浮かべる私の母の左側に、ボサボサの金髪頭の小麦色の肌の男が左手でピースを作っていた。顔などちっとも覚えていないが恐らく高橋だろう。こいつの進路などゆめ知らずだが、この様子では高等教育を受けている様子はない。
 そして母親の右側に経つ女性、高橋の嫁なのだろうが、長い黒い髪と白い肌、すらっと伸びた長い脚に二重の茶色がかった瞳……薔薇の花びらのような口元にホクロ。ヨウコだ。思い出した。迫水陽子だ。まさか高橋と結婚していたとは。おまけに傍らに乳児と思しき子供を抱いていた。件の三人目だろう。
 ああ、私は何をしていたんだ。なんでこんな女の幻想を、野良猫ごときに抱いていたんだ。先ほど雄猫に向けていたものとは異なる怒りを腹のうちに感じ、私はスマートフォンを振りかぶって力いっぱい投げた。それとともに右手に握っていたヨーコにつけるはずだった首輪もともに飛翔し、スマートフォンとともに地面に叩きつけられ、ガシャンという何かが割れるような音とともに小さくチリンと鳴った。
 何もかもどうでもよくなった私は頭上の満月を眺めた。眼鏡を常用するほど視力は悪くないはずだが、やはり満月は歪んで見えた。
 視界の右側が赤く照り、サイレンの音が聞こえてきた。誰かが私の奇声を聞いて警察を呼んだのだろう。
 まったく居心地が悪いなと、私は思った。

fin
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