屍士 SHIKABANESHI (改:聖騎士と魔法使い及び、盗賊と踊らない踊り子のロールプレイングな旅)

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第1回 プロローグ 盗賊ライラ ハイドアウト(隠れ家)で苦悶する(下)

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         町娘に紛し盗賊修行に勤(いそ)しむライラの肖像。


アタイの朝一番は、先ずは身だしなみだ。そりゃあ女なんだし紅をさすのは当たり前な話しだ。

(子ネズミのモーがイラつく・・・)

特に眉(まゆ)から鼻へのアタイの顔がお気に入り。だからそこいらを中心に念を入れる。アタイってばこの世で一等の美しさだ。

(子ネズミのモーが唸(うな)り声・・・)

だから・・・
継ぎはぎだらけのガラス窓相手に入念なお手入れ。

(うすノロ子ネズミのモーは爆発寸前だ)

へへへ~モーの奴。
忙(せわ)しなく・・・そう、意味も無しに動き回る、その挙動でわかんだ。
もうすぐだ・・・もうすぐ。

そら始まった。

「ライラ!!おりゃもう我慢ならねえ。おめェを切り刻んでヤル!!」

毎朝、毎刻の子ネズミ『モー』の毎度の雄叫びだ。

「ライラー!!おめェ~がサボてッと教官のオラが親方の折檻(せっかん)受けんだ!!オラは毎晩身体が痛くて寝らんねェ~!ぜんぶおめェのせいだ!!」

知ったことか・・・

「アタイは悪く無い。悪く無いですモー様。アタイも一緒だ!!そうなんだ夢見んだ!!だから・・・なげ~夢なんだ!!・・・毎晩寝らんねェ~!朝が起きれねーンです!!」

そんなわけでモーはアタイを蹴ったり踏んだり叩いたり・・・殴ったり引っ掻いたりつねったり。そんでもってアタイは悲鳴をあげ泣き叫ぶ。(断っとくけど本当は・・・アタイはぜんぜん平気なんだ。アタイは女盗賊のライラ様。嘘のマネごとはアタイの得意技。だから・・・叩かれたって蹴られたって・・・平気なんだ)

そこら辺りで、長い廊下奥の親方の部屋から怒鳴り声。

「うるせえぞォ!!」

「はえェ~とこ稼ぎにいきやがれェ~!!!」

アタイがこの世で一等嫌いな『ノロイ』。まるでゴミだめ虫をオーエンの敷石で擦(す)り潰したみてェ~な唸り声。毎朝、毎刻の親方『ノロイ』の毎度の雄叫びだ。

そんな刻限でも・・・
ノロイの奴はまだまだブランケットもどきン中。昨夜の『天と其(そ)の界隈の主(あるじ)に捧げる親方ノロイへの奉仕当番』はハゼル。だからハゼルも今は親方と一緒にブランケットもどきン中に丸まってる。アタイも夜をゥン十回程数えたら親方への奉仕当番の夜が廻(めぐ)ってくる。確かにアタイは死をも恐れぬ名立たる女盗賊ライラ様だけど・・・
奉仕当番の夜だけは、その夜だけは死にたくなるンだ。でも!!そうなんだ!!聞いとくれ『アタイの夢ん中の・・・アタイの大好きなランスロット』

アタイはもうそろそろ『階級引き上げ』の年頃。

嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて・・・

それを想うと『オーエン湾の荒波』みたいにアタイの胸の荒波が治まらない。だから・・・アタイはアンタに逢いに行く。アンタが何者かは知らない。でも、あんたが人族である事は知っている。そして唯一、あんたの名前。あの女があんたを呼んだンだ。夢の中で・・・
そうなんだ・・・ランスロット。毎夜アタイの夢に居座るのは、アタイに惚れてるから・・・だから『階級引き上げ』がすんで自由になれたら、アンタを探して逢いに行くよ・・・ランスロット。

階級引き上げとはホビット族の風習。所謂(いわゆる)人族で言う処の成人の儀式の事である。


支度(したく)を終えライラは、シーブㇲ(盗賊)ハイドアウト(隠れ家)の最下層に降りて行く。鉱油の臭気が鼻に突く其(そ)の界隈。黒く濁った下水の小川が中央を流れる地下の大部屋。其処(そこ)にホビットの呪(まじな)いお婆が待ち受けている。お婆は、朽ちかけた木造りの長椅子に横たわり、半分眠りの中に居る。
「おはよ~!シーダおばば」
「遅いんだよライラ!相変わらずの出来損ないだねぇ。あんたってば!サッサとおし!!!」
お婆は、日々の日課とばかりに低い唸り声を響かせ、地面の魔法陣に樫の木作りの杖を振る。やがて青黒い靄(もや)が掛かり・・・魔法陣に立つライラの姿が掻き消えた。




其処(そこ)は、
『パラディソ・オーエン』の賑(にぎ)わい通りである。数百の露店に数千数万の人出。連日の賑(にぎ)わいである。
盗賊ライラの狙いは・・・
数千数万の人だかりに紛(まぎ)れ金品を掠(かす)め取る事。正しく盗賊修行の初段階であった。




      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
                             



          

                怒れる主人公。踊らない踊り子キキの肖像。



白亜天明の月の15の宵の明星の刻『パラディソ・オーエン』は闇の中である。オーエン通りの泥棒横丁(盗賊一派の通り名)でひと仕事を終え、船着き場界隈の桟橋下で茣蓙(ござ)に包(くる)まり寝入るは・・・正しくライラ。



天空の星々が無限の煌(きら)めきを見せる中、

ヒトもエルフもホビットも・・・

はたまた、

オークや北方の伝説の民 ドアーフまでも・・・

ましてや、

古(いにいえ)の巨人族に至るまで、この世は深い

眠りの中にあった。


とは言え・・・

すべての命や、すべての不浄な魂がそうである

とは限らなかった。

而(しか)してその闇中に・・・

激しく波打つ息吹が・・・地平や山岳(さんが)

そして海。

正しく息吹(カオス)が、それらすべての宙(そら)

を覆っていた。


やがて、


件(くだん)の地に混沌の息吹漂う只中(ただなか)

ひときわ煌(きらめ)くひとつの光があった。



そこは不浄の地・・・



『パラディソ・オーエン』の

崩れた船着き場桟橋の下の淡い月明りの塒(ねぐら)で、

ライラは夢の中にいた。


そこから・・・北方の大地。遠くにそびえる山並み

には光輝く雪景色が望めた。

ライラが、夢の中で毎夜訪れる馴染(なじみ)の

空蝉(うつせみ)の世である。

                          


時折粉雪の舞う荒涼とした荒れ野に、その聖騎士と

踊り子は佇(たたず)んでいた。

聖騎士はライラを真っ直ぐに見据(す)え・・・

そして、緩(ゆる)やかに口を開く。

「お前は死んではならぬのだ・・・ライラ」

「アタイは・・・」


アタイは言葉を失う。


「しかしお前はもうじき死の定めにあるのだ」

聖騎士は悲しげに微笑んだ。

「ランスロットってんだろゥあんた・・・

アタイ知ってンだ。あんたの名前」

聖騎士は静かに頷(うなず)く。



『初めてあんたと言葉を交わした。毎夜毎夜アタイの夢に現れるあんたはとっても無口なンだ。アタイの事なんか一度も見ちゃくれなかった。多分あんたは恥ずかしかったのさ。だから気付いたンだ。あんたはアタイに惚れてるんだって・・・じゃなきゃこんなに毎夜アタイの夢に現れはしない。アタイはあんたをずーっと眺めてた。だから、すっかり・・・あんたに逢いたくて』

                            

そして・・・アタイの胸の中の『オーエン湾の荒波』が途端に激しくウネりだす。息が苦しくて苦しくて、だからやっとの思いで言葉を吐いた。
「アタイはあんたに逢いに行く。だからアタイは死んだりなんか・・・」
踊り子がアタイを見据(す)え嘲(あざ)笑う。
あんだァ!?・・・この女・・・
いったいこのアマぁ何なんだ???アタイは夢の中で腹を立てた。
「何を笑ってやがんだぁ!!」
「お前は死ぬって言っている・・・」
踊り子はこの神々しい大地に唾(つば)を吐いた。そして僅かの後・・・彼女はライラを一瞥(べつ)し心の内を吐き出した。
「お前はランスロットどころか、誰とも逢えなくなる。そう、今のままでは・・・お前は死ぬって事。よくお聞き!!!」
踊り子が吐き捨てる。
「静まれ・・・キキ」
ランスロットがライラとキキの間に分け入る。
そして、
踊り子の眼(まなこ)を厳しく見据えた。

この女(あま)ァ『キキ』って言うんだ・・・
毎夜ランスロットと共に現れる。アタイは本気で腹が立ってきた。この女は許せねェ。何だってアタイに気を吐くんだァ!?アタイを嫌いならアタイの夢から出て行きゃいい。

「お前が今何を思うのか・・・私には分かってる。だけどお前の望み通りにはいかないんだ。この、コソ泥の薄汚い女盗賊!!!」
「アタイの何が分かるのさァ!!!」
「やめるんだ!!キキ!!!」
「ランスロット!!私・・・」
何故だか、キキは涙声に変わっていった・・・
「私は止めない・・・」

アタイは何故だか今、酷(ひど)く嫌な気分だ。

何だか・・・立っていられない程の・・・

「盗賊ライラ!!あんたのせいで・・・ランスロットは死んだんだ!!牢獄の中、苦しんで苦しんで・・・!!」

踊り子キキは地面に突っ伏して、たくさんの大粒の涙と・・・
そして天に届かんばかりの苦悶の叫び声を上げた。その瞬間・・・アタイは心底願ったんだ。

『夢よ覚めよ』と・・・



                          





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