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〈守るべきもの〉2
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同じ街で同じ道を志すなら当然といえば当然だが、互いに望んでいなかったであろう偶然に其の距離感は遠い。
「今‥‥、何のコピーやってんの‥‥?」
言いようの無い間を繋げようとしてか、祐司は失礼な質問をするが動揺して気づいていない。
「オリジナルだよ!」
このまま会話が続けば必ずキレるであろう虎太郎を遮り、すかさず秋人が答える。
「ああ、そうなんや‥‥、じゃあ頑張ってな」
祐司と智也は新しいバンド仲間に連れられ、そそくさとカウンターに向かい互いは別れて行った。
「良かった~!殴りかかるかと思ってヒヤヒヤしたよ~」
外に出るとすぐに安心した秋人の声が響く。
手を出さなかった事に秋人は驚くが「今は大事にしてるもんが変わったからな」と虎太郎は特に何も無かったかのように笑顔を返す。
それから反省会を終え一安心したのもつかの間で、事件が起きたのは其の日の夜の事だった。
「まあまあ可愛い子いたっショ」
「おお又頼むわ、今度お礼にチームの仲間紹介したるからさ」
「マジっすか!?じゃあ俺達も、もうチームの一員っすね!」
「まあ会わせてみんと解らんけど、決まったようなもんやろ」
ゲームセンターのガレージに座り込む秋人の悪友三人、一人が電話で話す内容に残りの二人は静かに耳を澄ます。
電話の相手はラファエルの一員で、関係は友達の友達の先輩だった。
「よっしゃ~!チームの仲間に紹介してくれるって!」
電話を切ると同時に、近所迷惑を顧みない歓喜の声が響く。
「マジで~!」
「これで俺達もラファエルや、恐いもん無しや~な!」
「こないだの鉄鬼の奴シバきに行くか~」
勘違いする三人が盛り上がっている頃、鉄鬼のメンバーは近くの河原に集まっていた。
其のメンバーは初代鉄鬼に比べると人数こそ減ったものの、少数精鋭の名に恥じない猛者ばかりだった。
「虎は?また来んの?」
「したい事が有るから忙しいやって、バイクも後輩に貸してるしな」
「あいつに喧嘩以外でしたい事なんか有るんか?」
虎が来ないようになった事を仲間は噂するが、笑い合う様子から見ても気にはしていないようだった。
出発時間が近づくと一台の車が其の集まりの前に停まる。
低く響くエンジン音からも解るとおりの改造車で、乗っているのは先代鉄鬼の先輩だった。
「ウッス!銀次さん今日もケツモチ来てくれたんすか?」
「オウ、それより今日も虎来てないんか」
頭を下げるメンバーに、先輩の鋭い視線が刺さる。
「鉄鬼のしきたり忘れたんか、けじめはつけなアカンやろ」
毎回ではないがたまに顔を出す先輩は、中途半端な状態の虎太郎を良く思ってはいないようだった。
「‥‥ウッス」
「オウ、解ってれば良いんや」
全員の集合が済むと、それぞれの乗り物に乗った鉄鬼のメンバーは街へと繰り出し走り出す。
街に溶け込む光と音になったメンバーは、それぞれのしがらみや時間も忘れ走り続ける。
全員が集合場所の河原に戻って来たのはニ時間後、時間は深夜十二時を過ぎた頃だった。
数分後には改造車に乗った先輩も帰り、単車から降りたメンバー達もその場に座り談笑を始める。
「虎さんにバイク返しに行く時間なんで、そろそろ俺達帰ります」
「オウ、気い付けてな」
虎太郎との待ち合わせ場所に向かい鉄鬼の後輩二人が原付きで移動した先は、奇しくも秋人の悪友達が居たゲームセンター近くのコンビニだった。
虎太郎よりも早く着いた後輩二人は店内で週刊誌の立ち読みにも飽き、外でタバコを吹かし時間を潰す。
「虎さん変わったよな~バイク貸してくれるなんて!何か話し掛けやすくなったし」
「そうか~?俺は今でも怖いけどな~、待ってる間に原付き拭いとくか!」
「どんだけ恐いねん!気持ち解るけどな」
笑い合う後輩二人は、まだ鉄鬼に正式加入していない。
だが同世代では敵無しのヤンチャ者なのは言うまでもない。
「ダッセ~」
「やっぱ、これからは俺達ラファエルの時代やろ~」
辛うじて聞こえる距離だが、明らかに二人を馬鹿にした会話に二人の表情が変わる。
「オイ、今なんつった‥‥?」
後輩の一人は詰め寄るが「止めとけって、ラファエルやぞ」ともう一人は、抗争を避けようとして引き止める。
「そうそ~う!俺達はラファエルで~すよ~!」
馬鹿にした笑い声が静かな深夜に響く。
もう手を伸ばせば届く距離に近づいても、からかうのを止めない三人は秋人の悪友だった。
込み上げる怒りを抑え二人が拳を握り締めていると「オイ!お前達何を悩んでんねん」と待ち合わせに現れた虎太郎が、三人の中で一番デカイ一人を殴り飛ばす。
5メートルは飛んだであろう倒れた一人を見つめ、残り二人は驚きの余りに固まっている。
「虎さん!大丈夫っすか、あいつらラファエルって言ってたっすよ!」
立ちすくむ後輩は心配するが「誰でも連れて来い俺が相手になったるわ!!」とたんかを切る虎太郎の威勢は、今も昔と変わらない。
「虎さんはやっぱり虎さんのままっすね‥‥」
ろくに捨て台詞もはけず走り去った三人を見つめ、後輩の一人が呟くと「しばくぞ!俺も成長してるわ」と虎太郎は照れ臭さそうに一睨みして、笑い返した。
「鉄鬼の奴にやられたんや~、へ~、災難やったな~」
「えっ‥‥?仕返ししてくれないんすか?」
「そら、そうやろ~、やられたんラファエルちゃうし~、それよりもまた女見つけたら連絡して~や!」
逃げ去った三人はラファエルの一人に電話して泣き付くが、軽くあしらわれ相手にもされない。
一方的に切られた電話を見つめ途方に暮れる三人は「あいつだけは許さん‥‥」と更に恨みを募らせ、誓い合うように同じ言葉を言い続けていた。
「今‥‥、何のコピーやってんの‥‥?」
言いようの無い間を繋げようとしてか、祐司は失礼な質問をするが動揺して気づいていない。
「オリジナルだよ!」
このまま会話が続けば必ずキレるであろう虎太郎を遮り、すかさず秋人が答える。
「ああ、そうなんや‥‥、じゃあ頑張ってな」
祐司と智也は新しいバンド仲間に連れられ、そそくさとカウンターに向かい互いは別れて行った。
「良かった~!殴りかかるかと思ってヒヤヒヤしたよ~」
外に出るとすぐに安心した秋人の声が響く。
手を出さなかった事に秋人は驚くが「今は大事にしてるもんが変わったからな」と虎太郎は特に何も無かったかのように笑顔を返す。
それから反省会を終え一安心したのもつかの間で、事件が起きたのは其の日の夜の事だった。
「まあまあ可愛い子いたっショ」
「おお又頼むわ、今度お礼にチームの仲間紹介したるからさ」
「マジっすか!?じゃあ俺達も、もうチームの一員っすね!」
「まあ会わせてみんと解らんけど、決まったようなもんやろ」
ゲームセンターのガレージに座り込む秋人の悪友三人、一人が電話で話す内容に残りの二人は静かに耳を澄ます。
電話の相手はラファエルの一員で、関係は友達の友達の先輩だった。
「よっしゃ~!チームの仲間に紹介してくれるって!」
電話を切ると同時に、近所迷惑を顧みない歓喜の声が響く。
「マジで~!」
「これで俺達もラファエルや、恐いもん無しや~な!」
「こないだの鉄鬼の奴シバきに行くか~」
勘違いする三人が盛り上がっている頃、鉄鬼のメンバーは近くの河原に集まっていた。
其のメンバーは初代鉄鬼に比べると人数こそ減ったものの、少数精鋭の名に恥じない猛者ばかりだった。
「虎は?また来んの?」
「したい事が有るから忙しいやって、バイクも後輩に貸してるしな」
「あいつに喧嘩以外でしたい事なんか有るんか?」
虎が来ないようになった事を仲間は噂するが、笑い合う様子から見ても気にはしていないようだった。
出発時間が近づくと一台の車が其の集まりの前に停まる。
低く響くエンジン音からも解るとおりの改造車で、乗っているのは先代鉄鬼の先輩だった。
「ウッス!銀次さん今日もケツモチ来てくれたんすか?」
「オウ、それより今日も虎来てないんか」
頭を下げるメンバーに、先輩の鋭い視線が刺さる。
「鉄鬼のしきたり忘れたんか、けじめはつけなアカンやろ」
毎回ではないがたまに顔を出す先輩は、中途半端な状態の虎太郎を良く思ってはいないようだった。
「‥‥ウッス」
「オウ、解ってれば良いんや」
全員の集合が済むと、それぞれの乗り物に乗った鉄鬼のメンバーは街へと繰り出し走り出す。
街に溶け込む光と音になったメンバーは、それぞれのしがらみや時間も忘れ走り続ける。
全員が集合場所の河原に戻って来たのはニ時間後、時間は深夜十二時を過ぎた頃だった。
数分後には改造車に乗った先輩も帰り、単車から降りたメンバー達もその場に座り談笑を始める。
「虎さんにバイク返しに行く時間なんで、そろそろ俺達帰ります」
「オウ、気い付けてな」
虎太郎との待ち合わせ場所に向かい鉄鬼の後輩二人が原付きで移動した先は、奇しくも秋人の悪友達が居たゲームセンター近くのコンビニだった。
虎太郎よりも早く着いた後輩二人は店内で週刊誌の立ち読みにも飽き、外でタバコを吹かし時間を潰す。
「虎さん変わったよな~バイク貸してくれるなんて!何か話し掛けやすくなったし」
「そうか~?俺は今でも怖いけどな~、待ってる間に原付き拭いとくか!」
「どんだけ恐いねん!気持ち解るけどな」
笑い合う後輩二人は、まだ鉄鬼に正式加入していない。
だが同世代では敵無しのヤンチャ者なのは言うまでもない。
「ダッセ~」
「やっぱ、これからは俺達ラファエルの時代やろ~」
辛うじて聞こえる距離だが、明らかに二人を馬鹿にした会話に二人の表情が変わる。
「オイ、今なんつった‥‥?」
後輩の一人は詰め寄るが「止めとけって、ラファエルやぞ」ともう一人は、抗争を避けようとして引き止める。
「そうそ~う!俺達はラファエルで~すよ~!」
馬鹿にした笑い声が静かな深夜に響く。
もう手を伸ばせば届く距離に近づいても、からかうのを止めない三人は秋人の悪友だった。
込み上げる怒りを抑え二人が拳を握り締めていると「オイ!お前達何を悩んでんねん」と待ち合わせに現れた虎太郎が、三人の中で一番デカイ一人を殴り飛ばす。
5メートルは飛んだであろう倒れた一人を見つめ、残り二人は驚きの余りに固まっている。
「虎さん!大丈夫っすか、あいつらラファエルって言ってたっすよ!」
立ちすくむ後輩は心配するが「誰でも連れて来い俺が相手になったるわ!!」とたんかを切る虎太郎の威勢は、今も昔と変わらない。
「虎さんはやっぱり虎さんのままっすね‥‥」
ろくに捨て台詞もはけず走り去った三人を見つめ、後輩の一人が呟くと「しばくぞ!俺も成長してるわ」と虎太郎は照れ臭さそうに一睨みして、笑い返した。
「鉄鬼の奴にやられたんや~、へ~、災難やったな~」
「えっ‥‥?仕返ししてくれないんすか?」
「そら、そうやろ~、やられたんラファエルちゃうし~、それよりもまた女見つけたら連絡して~や!」
逃げ去った三人はラファエルの一人に電話して泣き付くが、軽くあしらわれ相手にもされない。
一方的に切られた電話を見つめ途方に暮れる三人は「あいつだけは許さん‥‥」と更に恨みを募らせ、誓い合うように同じ言葉を言い続けていた。
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