水底からみる夢は

プロローグ

　薄曇りのガラスがはまった窓からうっすら見えるのは朝焼けの橙と紫が入り混じったかのような曖昧なグラデーション。それをぼんやりとうつろに眺めていれば、ごーんごーんと一つめの鐘が鳴る。確か寝たのが八つめの鐘だったから、結局三時間くらいしか眠れていないことになる。
　あの日、母が目の前で死んで。それから家族葬の用意や火葬の準備、それらをやってもらえることのお礼などに村中を駆けずり回りやることに追われて気づけばうつらうつら寝ているような日が続いて。それらが終わったころにはもうすっかりよく眠れなくなっていた。ベッドの上で少しばかりぼんやりして、動き出す。
　今日は、大事な日だ。酷いことを、母が知ったら嘆かれてしまうようなことをする日なのだから、少しくらい早く起きてニつに髪を結んで、木綿でできた裾にフリルをつけた簡素なドレスを身にまとって準備ぶそうするくらい、いいはずだから。