7 / 78
4
しおりを挟む
(今日は四月《しづき》の二日で、ここはマロウ大陸なのか。お母さん、来たことあるって言ってたな。白軽貨百枚で銅貨一枚、銅貨百枚で銀貨一枚……屋台で軽食を銅貨十枚、しかもそれが普通ってことはそれがあの程度の食べ物の相場で。それから百枚ずつ上がってくのか。銀貨があって、金貨があって、白金貨、光金貨がある……ってお母さんが言ってた。でもあれからだいぶ経ってるし、もうちょっと情報が必要かも。……テリアの店? 迷宮品取り扱い……ん、やっぱり目立つか)
‘虚飾‘の認識齟齬により姿を消し、くたびれた馬と古めかしい荷台。藁売りと思われる馬車のひき車につまれた藁のなかに隠れて入門し、その後はすぐに藁の隙間から人通りをみて馬車から転がるようにして路地裏へと逃げ込んだ。
騒がしいそこは市場の真裏だったらしく、身なりを整えて路地裏を出たとたん、すぐに人の波にあった。メインストリートらしかった。
とりあえずティーポッドは路地裏で左手の【アイテムボックス】へと入れ、思う丈に伸びるケープをふくらはぎまで伸ばして一般人を装う。
灰色の石畳に、整然と並んだレンガ造りの家。それのどの家も太い煙突が、空高くに突き出ていた。人々の頭上には所々にょっきりと何がしかの看板掛けが生えている。上を見上げると、天辺がわからないほど高い尖塔がいくつか確認できた。
不規則にならんだ、大小不揃いのテントが食材から服、軽食、鍋に至るまで様々な商品がその下に置かれた樽やござの上で売られていて。通りを歩く人々は白いシャツにスカートやスラックスを基調として、赤いストールを羽織ったり緑色の腰布をまいたりとお洒落をしていた。
売り込みの声が騒がしい中、混雑した人混みにもみくちゃにされながらも流れに乗って歩く。自分の上で交わされる会話から、看板に書かれた単語から、同じ物品を売る店の価格を比較し妥当を割り出していくことで必要な情報を収集していく。
偶然にも子どもへとお使いを頼み、貨幣の説明をしている母親の側を歩けたのは幸運だったといえるだろう。なぜ咲也子を見ながらひとりでのお使いをぐずる子どもをあやしていたのかはわからないが。
咲也子の強みは、キメラとしての能力ではなくその思考力である、と咲也子の大切なひとが言っていた。同時にいくつものことを考えられることと、才能のひとつである‘暴食‘の情報収納による絶対的な記憶力での知識。一つのことに対していくつもの予想を立て、その中でも‘強欲‘の最善選択によりその時に最善のものを選び出すことができる。恐ろしいほどの冷静さと、最善を選び出す力に長けていると称賛された時を思い出して、思わず目を細めてしまう。ひとりにやけ(かけ)ていることなど悟られてはいないだろうが、口元を袖て隠す。だが、周囲は売買以外の声でもざわついていた。
「なあ、あの仕立て良い子迷子か?」
「近くに親御さんいないよな?」
「でもお使いかもしれないじゃない」
「お使いなら邪魔すんのもなぁ。迷子じゃなきゃいいんだけどね」
「もし、迷子だったら警備隊に送ってってやろうぜ」
抱えていたクマのぬいぐるみに、‘虚飾‘で変身させた<災厄>を抱えなおす。
年端も行かぬどころか、六か七歳にしか見えない子どもがフードを顔が見えないくらいまで深く被り大きなクマのぬいぐるみを抱えて、親も近くにいなくうろうろしている。とくればすわ迷子か、一人でお使いか、と周りを騒がしくさせていた。
ちなみに、人の流れに逆らわず進んでいることから、迷子説が現在有力である。たとえ本人にその気はなかったとしてもだ。
(やっぱり、ケープかな。周りの人達の、皆茶色とか黒だし。真っ白は目立つよね。でも、まずはお金作らないとなぁ。お金についても情報はまだ不足かもだし。空間移動が出来なかったから、すぐには帰れないわけだし。お金がないとポーション、買えないよね)
途中、人ごみ越しにみえた紅茶の茶葉を売っている店に興味を引かれないでもなかったがそんなことより、今は救命第一だ。
待っててね、と腕の中の存在に話しかけながらもう一度、安心させるようにゆすり、抱きなおす。ぐったり意識をなくした<災厄>の体は重かった。
フードの中で、瞳は‘暴食‘の絶対記憶で青く染まり続けている。
目立つ理由と思われることを見当違いにつらつらと考えつつ、思考を二転三転させて今後のことについても同時進行で考えていく。
ある程度の常識だと思われる情報収集をその人外の脳に刻み込み、人なみからはずれてまた裏通りへと足を進める。さっき、頭上で交わされていた会話から拾った中で示された道順をたどった。
目指すのは迷宮品を取り扱う店だ。
‘虚飾‘の認識齟齬により姿を消し、くたびれた馬と古めかしい荷台。藁売りと思われる馬車のひき車につまれた藁のなかに隠れて入門し、その後はすぐに藁の隙間から人通りをみて馬車から転がるようにして路地裏へと逃げ込んだ。
騒がしいそこは市場の真裏だったらしく、身なりを整えて路地裏を出たとたん、すぐに人の波にあった。メインストリートらしかった。
とりあえずティーポッドは路地裏で左手の【アイテムボックス】へと入れ、思う丈に伸びるケープをふくらはぎまで伸ばして一般人を装う。
灰色の石畳に、整然と並んだレンガ造りの家。それのどの家も太い煙突が、空高くに突き出ていた。人々の頭上には所々にょっきりと何がしかの看板掛けが生えている。上を見上げると、天辺がわからないほど高い尖塔がいくつか確認できた。
不規則にならんだ、大小不揃いのテントが食材から服、軽食、鍋に至るまで様々な商品がその下に置かれた樽やござの上で売られていて。通りを歩く人々は白いシャツにスカートやスラックスを基調として、赤いストールを羽織ったり緑色の腰布をまいたりとお洒落をしていた。
売り込みの声が騒がしい中、混雑した人混みにもみくちゃにされながらも流れに乗って歩く。自分の上で交わされる会話から、看板に書かれた単語から、同じ物品を売る店の価格を比較し妥当を割り出していくことで必要な情報を収集していく。
偶然にも子どもへとお使いを頼み、貨幣の説明をしている母親の側を歩けたのは幸運だったといえるだろう。なぜ咲也子を見ながらひとりでのお使いをぐずる子どもをあやしていたのかはわからないが。
咲也子の強みは、キメラとしての能力ではなくその思考力である、と咲也子の大切なひとが言っていた。同時にいくつものことを考えられることと、才能のひとつである‘暴食‘の情報収納による絶対的な記憶力での知識。一つのことに対していくつもの予想を立て、その中でも‘強欲‘の最善選択によりその時に最善のものを選び出すことができる。恐ろしいほどの冷静さと、最善を選び出す力に長けていると称賛された時を思い出して、思わず目を細めてしまう。ひとりにやけ(かけ)ていることなど悟られてはいないだろうが、口元を袖て隠す。だが、周囲は売買以外の声でもざわついていた。
「なあ、あの仕立て良い子迷子か?」
「近くに親御さんいないよな?」
「でもお使いかもしれないじゃない」
「お使いなら邪魔すんのもなぁ。迷子じゃなきゃいいんだけどね」
「もし、迷子だったら警備隊に送ってってやろうぜ」
抱えていたクマのぬいぐるみに、‘虚飾‘で変身させた<災厄>を抱えなおす。
年端も行かぬどころか、六か七歳にしか見えない子どもがフードを顔が見えないくらいまで深く被り大きなクマのぬいぐるみを抱えて、親も近くにいなくうろうろしている。とくればすわ迷子か、一人でお使いか、と周りを騒がしくさせていた。
ちなみに、人の流れに逆らわず進んでいることから、迷子説が現在有力である。たとえ本人にその気はなかったとしてもだ。
(やっぱり、ケープかな。周りの人達の、皆茶色とか黒だし。真っ白は目立つよね。でも、まずはお金作らないとなぁ。お金についても情報はまだ不足かもだし。空間移動が出来なかったから、すぐには帰れないわけだし。お金がないとポーション、買えないよね)
途中、人ごみ越しにみえた紅茶の茶葉を売っている店に興味を引かれないでもなかったがそんなことより、今は救命第一だ。
待っててね、と腕の中の存在に話しかけながらもう一度、安心させるようにゆすり、抱きなおす。ぐったり意識をなくした<災厄>の体は重かった。
フードの中で、瞳は‘暴食‘の絶対記憶で青く染まり続けている。
目立つ理由と思われることを見当違いにつらつらと考えつつ、思考を二転三転させて今後のことについても同時進行で考えていく。
ある程度の常識だと思われる情報収集をその人外の脳に刻み込み、人なみからはずれてまた裏通りへと足を進める。さっき、頭上で交わされていた会話から拾った中で示された道順をたどった。
目指すのは迷宮品を取り扱う店だ。
0
あなたにおすすめの小説
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜
長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。
コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。
ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。
実際の所、そこは異世界だった。
勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。
奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。
特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。
実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。
主人公 高校2年 高遠 奏 呼び名 カナデっち。奏。
クラスメイトのギャル 水木 紗耶香 呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。
主人公の幼馴染 片桐 浩太 呼び名 コウタ コータ君
(なろうでも別名義で公開)
タイトル微妙に変更しました。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜
月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。
※この作品は、カクヨムでも掲載しています。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる