Riddle 〜魔法師たちのお仕事〜

ネコノミ

文字の大きさ
4 / 18
第1 問『あるところでは、四季が秋春夏冬の順になっている。しかも一週間は金曜日から始まる。さあ、そこはどこだ?』

はじめまして

しおりを挟む
 片手で目を覆い、がっくりと肩を落としたスクナの様子に、少女は悟ったようだった。

 不審者を見る目から一転、哀れとアホなものを見る目でスクナを一瞥して、小さく繊麗なその指で背を軽く叩いた。

「まあ、なんというか。そういうこともあるさ。ほら、うちの班室においで。私が紅茶でも淹れてやろう」

 初日にドジをかまして耳まで真っ赤になっているスクナに、少女は人差し指で上を示す。

 上の階に班室があるということらしかった。

 少女は羞恥と落胆のあまりに反応の鈍いスクナの手を掴み、受付の裏側にある階段までまるで小さい子にするように手を引いて、そのまま階段を昇る。

 その行為がさらにスクナの羞恥を煽り、足取りを重くさせていることには気づいていないようだった。

「すみません……」
「いやぁ。失敗などままあるものさ。人に迷惑をかけたわけでもなし、気にするほどのことじゃない」
「ありがとう、ございます」
「ああ。……そういえば、自己紹介がまだだったかな」

 大理石と思わしき階段を昇りきり、そのまま続く床をスニーカーできゅっきゅと音をさせながら進んでいく。
 なぜか、前を進んでいるはずの少女の靴音、ローブの衣ずれの音すら聞こえないのが不思議ではあったが。
 窓が少ない廊下は電気がついていないとどこか薄暗くて、思わず握られている手に力を込めた。
 顔は見えなかったが、なんとなく少女が笑ったような気がした。

 やがて、廊下の突き当り、角部屋で足を止めると、握っていた手はするりとほどかれて、その華奢な手が赤いステンドグラスのはめ込まれたチョコレートのような重厚な扉を軽く開いた。
 スクナを中に招き入れながら、少女は言った。

「初めまして、若き魔法師。私の名前はチナミ・テルヌマだ。この班の長でもある、よろしく頼むよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

魔法学園の幼稚園〜ちっちゃな魔法使い達と25才のお世話係

のの(まゆたん)
ファンタジー
小さな魔法使いの子供達 お世話するのは25才の

処理中です...