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第1 問『あるところでは、四季が秋春夏冬の順になっている。しかも一週間は金曜日から始まる。さあ、そこはどこだ?』
ビスクドール
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「君、何をやっているのかね?」
「ふぁ!?」
低い壮年の男性のようなかすれた声がかかった。
意識せずに振りかえると、そこには不審者かと疑わしげな瞳で胡乱気に見るビスクドールが立っていた。
陶器じみた白磁の肌に、癖のない絹糸を思わせる金髪はツインテールにしていても床につかんばかりに長く、幾重ものレースで飾られている。頭にはティアラを模したヘッドドレス、碧石をはめ込んで見える瞳は深く澄んだ碧色。まつげは長く、瞬きをするだけで音がしそうなほどだった。まさに、落としたら割れてしまいそうな繊細な美貌。陶磁器人形ビスクドールの名にふさわしいほどに精緻だった。
あまりの美貌に唖然とするよりも早く、そのビスクドールの肩から膝までをすっぽりと覆っているローブに目が行った。
黒地に銀糸で緻密な術式が描かれたローブは魔法省の役人であることを示すもので。
さらに、その胸元に金色に光る柊の葉が二枚交差しているピンブローチから垂れ下がる金色の鎖の数に驚く。
一本は新人、二本は中堅、三本はベテランで四本になるとあらゆる特権を得られる立場、省長にも準じた扱いを受けるというそれが四本。
胸元でしゃらりと時折音を立てて垂れ下がっていた。
不審者と間違えられている! とあわててスクナは胸の前で両手をふる。
「えっと、あの。自分、今日から魔法省謎対策係に配属されることになった者なのですが……」
「ああ、聞いている。スクナ・イクルミ君だろう。うちの班に来る」
「え?」
「なんだね?」
「い、いえ」
「ふむ。ところで君、今日は午後から出勤のはずだったのでは?」
予定表を確認したのかね? と少女から壮年の男の声で尋ねられて、さっきのは聞き間違いではなかったと確信する。
一瞬ビスクドールに声を当てているのではないかと思ったが、やはり誰の気配もなく、影すら見当たらなかった。
周囲を確認しつつも紙紐を挟んでいた手帳のページを開く。一回で開いたそこには、大きく十五時から! と赤く丸が付けてあった。
おそるおそる観葉植物の合間から見える古時計を見ると、八時五十分。先ほど見た時からまだ五分しかたっていなかった。
「ふぁ!?」
低い壮年の男性のようなかすれた声がかかった。
意識せずに振りかえると、そこには不審者かと疑わしげな瞳で胡乱気に見るビスクドールが立っていた。
陶器じみた白磁の肌に、癖のない絹糸を思わせる金髪はツインテールにしていても床につかんばかりに長く、幾重ものレースで飾られている。頭にはティアラを模したヘッドドレス、碧石をはめ込んで見える瞳は深く澄んだ碧色。まつげは長く、瞬きをするだけで音がしそうなほどだった。まさに、落としたら割れてしまいそうな繊細な美貌。陶磁器人形ビスクドールの名にふさわしいほどに精緻だった。
あまりの美貌に唖然とするよりも早く、そのビスクドールの肩から膝までをすっぽりと覆っているローブに目が行った。
黒地に銀糸で緻密な術式が描かれたローブは魔法省の役人であることを示すもので。
さらに、その胸元に金色に光る柊の葉が二枚交差しているピンブローチから垂れ下がる金色の鎖の数に驚く。
一本は新人、二本は中堅、三本はベテランで四本になるとあらゆる特権を得られる立場、省長にも準じた扱いを受けるというそれが四本。
胸元でしゃらりと時折音を立てて垂れ下がっていた。
不審者と間違えられている! とあわててスクナは胸の前で両手をふる。
「えっと、あの。自分、今日から魔法省謎対策係に配属されることになった者なのですが……」
「ああ、聞いている。スクナ・イクルミ君だろう。うちの班に来る」
「え?」
「なんだね?」
「い、いえ」
「ふむ。ところで君、今日は午後から出勤のはずだったのでは?」
予定表を確認したのかね? と少女から壮年の男の声で尋ねられて、さっきのは聞き間違いではなかったと確信する。
一瞬ビスクドールに声を当てているのではないかと思ったが、やはり誰の気配もなく、影すら見当たらなかった。
周囲を確認しつつも紙紐を挟んでいた手帳のページを開く。一回で開いたそこには、大きく十五時から! と赤く丸が付けてあった。
おそるおそる観葉植物の合間から見える古時計を見ると、八時五十分。先ほど見た時からまだ五分しかたっていなかった。
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