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第1 問『あるところでは、四季が秋春夏冬の順になっている。しかも一週間は金曜日から始まる。さあ、そこはどこだ?』
魔法省
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晴ノ国の首都ヒイラギ、千路の都ととも呼ばれる魔法師たちの中心地。
魔法省は大統領の住まう城の下、四方を白い壁に覆われた堅固な結界の中にある。
「ここが魔法省……」
灰色の石畳に舗装された道、整然と並んだレンガ造りの家々。
どの家も細く長い煙突が空高く突き出ていて、中には青空に延々と白い煙を吐き出し続けているものもあった。
一段高く盛った石で分けられた歩道の中、まだ四ノ月。朝晩の冷え込むこの季節にかっちりとコートを着込んだそんな人々。
その頭上には所々ににょっきりと看板かけが生えている。
その手前には人力の荷押し車や馬車ががらがらと音を立て、何台も行きかっている大通りがあった。
そんな大通りを背景に通勤時間、その雑踏の中。
ぽかんと口を開けて少年、スクナは圧倒されたかのように立っていた。
もともと大使館だったところを移動に伴い買い受けたという建物の、門口の二本の白い柱。
そこからぐるりと黒い柵が周囲を取り巻き、柱には大きく「魔法省」と書かれた木製の看板がかかっていた。
きらきらと朝日に輝くはちみつ色の茶髪、それに彩られた顔立ちは幼く、中学生の服を身に付ければそう見えてしまうだろうほどだった。不安に揺れる瞳は髪と同色で、不安の他にもこれからへの期待がちらほら浮かんで見えた。
黒のスラックスに白いロングTシャツ、右手首にはボロボロのミサンガをつけて、靴は黒いスニーカー。斜めがけのバッグを肩から掛けて。胸の前にきたベルト部分をぎゅっと握り間抜け顔をさらす様子は、お上りさん丸出しだった。
そんな少年を迷惑そうに避けながら流れていく人ごみ。ようやく自分が邪魔になっていることに気付いたスクナは、雑踏の人々をよけ小走り気味に開いてある門の中に入る。
そのまま灰色の石畳の上を歩き、チョコレート型の白い重厚な扉までたどり着くと、少し力を入れて開ける。
重たげな見た目に反して軽く開いたそれに取り付けられていたベルが、カランカランと軽快に鳴った。
「失礼しまー、す」
そおっと中をのぞき込みながら、控えめな挨拶で身体を中に滑り込ませる。
天窓から入る光が、その下にあるシャンデリアに反射して館内を明るく照らしていた。
壁際にはびっしりと分厚い本が入る本棚が四方の壁を覆っていて、上を見上げることでようやく白い壁の色を知ることが出来た。
足元には赤い絨毯、花籠が乗っているローテーブルとソファーのセットが七つホールの真ん中にあるエレベーターを囲むように置いてある。
エレベーター横の観葉植物の隣には大きな古時計が飾られていて、カチカチと時を刻んでいた。
本以外はホテルのロビーを彷彿とさせるそこ。
しかし疑問なのは時計の針の音と自分の靴音しかしないことで。そこはがらんとしていて人の気配はみじんも感じられなかった。
誰もいない館内を不思議そうに見渡すスクナ。
「受け付け」と書かれた札の下がっているカウンターにも人っ子一人見当たらない。
「あれ? 勤務時間って九時からだよね?」
観葉植物の隣にある古時計、細かい傷が年代を感じさせるそれが示す時間は八時四十五分。
遅刻ということでもなければ、早く出勤しすぎたと言えるような時間帯でもなかった。
もしかして日にちを間違えてしまったのかもしれないとあわてて斜めにかけたバッグから手帳を取り出した、その背中に。
魔法省は大統領の住まう城の下、四方を白い壁に覆われた堅固な結界の中にある。
「ここが魔法省……」
灰色の石畳に舗装された道、整然と並んだレンガ造りの家々。
どの家も細く長い煙突が空高く突き出ていて、中には青空に延々と白い煙を吐き出し続けているものもあった。
一段高く盛った石で分けられた歩道の中、まだ四ノ月。朝晩の冷え込むこの季節にかっちりとコートを着込んだそんな人々。
その頭上には所々ににょっきりと看板かけが生えている。
その手前には人力の荷押し車や馬車ががらがらと音を立て、何台も行きかっている大通りがあった。
そんな大通りを背景に通勤時間、その雑踏の中。
ぽかんと口を開けて少年、スクナは圧倒されたかのように立っていた。
もともと大使館だったところを移動に伴い買い受けたという建物の、門口の二本の白い柱。
そこからぐるりと黒い柵が周囲を取り巻き、柱には大きく「魔法省」と書かれた木製の看板がかかっていた。
きらきらと朝日に輝くはちみつ色の茶髪、それに彩られた顔立ちは幼く、中学生の服を身に付ければそう見えてしまうだろうほどだった。不安に揺れる瞳は髪と同色で、不安の他にもこれからへの期待がちらほら浮かんで見えた。
黒のスラックスに白いロングTシャツ、右手首にはボロボロのミサンガをつけて、靴は黒いスニーカー。斜めがけのバッグを肩から掛けて。胸の前にきたベルト部分をぎゅっと握り間抜け顔をさらす様子は、お上りさん丸出しだった。
そんな少年を迷惑そうに避けながら流れていく人ごみ。ようやく自分が邪魔になっていることに気付いたスクナは、雑踏の人々をよけ小走り気味に開いてある門の中に入る。
そのまま灰色の石畳の上を歩き、チョコレート型の白い重厚な扉までたどり着くと、少し力を入れて開ける。
重たげな見た目に反して軽く開いたそれに取り付けられていたベルが、カランカランと軽快に鳴った。
「失礼しまー、す」
そおっと中をのぞき込みながら、控えめな挨拶で身体を中に滑り込ませる。
天窓から入る光が、その下にあるシャンデリアに反射して館内を明るく照らしていた。
壁際にはびっしりと分厚い本が入る本棚が四方の壁を覆っていて、上を見上げることでようやく白い壁の色を知ることが出来た。
足元には赤い絨毯、花籠が乗っているローテーブルとソファーのセットが七つホールの真ん中にあるエレベーターを囲むように置いてある。
エレベーター横の観葉植物の隣には大きな古時計が飾られていて、カチカチと時を刻んでいた。
本以外はホテルのロビーを彷彿とさせるそこ。
しかし疑問なのは時計の針の音と自分の靴音しかしないことで。そこはがらんとしていて人の気配はみじんも感じられなかった。
誰もいない館内を不思議そうに見渡すスクナ。
「受け付け」と書かれた札の下がっているカウンターにも人っ子一人見当たらない。
「あれ? 勤務時間って九時からだよね?」
観葉植物の隣にある古時計、細かい傷が年代を感じさせるそれが示す時間は八時四十五分。
遅刻ということでもなければ、早く出勤しすぎたと言えるような時間帯でもなかった。
もしかして日にちを間違えてしまったのかもしれないとあわてて斜めにかけたバッグから手帳を取り出した、その背中に。
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