詩のようなBL SS集

雪帽子

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春の訪れ

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 梅の花は桜よりも早く見られるし、よく見ると花の一つ一つが主張してて存在感がある。あの時、ずっと目を奪われた彼らを思い出す。

 2020年の2月の終わり頃、私は就職を来月に控えた大学生で、単位も足りていたのでほとんど大学にも行っていなかったが、就職先に出す書類を用意する為に大学へ赴いた。私はせっかく来たので、裏門付近にある枝垂れ梅を見ようと思った。そこにいたのは、知らない男の子だった。入学当初から噂になっていたので、その男子学生の存在は聞いていたが、初めて見た。本当にこんな綺麗な男の子が存在するんだと思った。よく考えたら、大人の年齢であるその子に、「男の子」なんて可笑しい。でも、美少年というのが相応しく、大人っぽさもあるのに、それよりも若さ特有の瑞々しさを鮮明に感じる容姿を、彼はしていた。話しかけようと口を開くと、先に彼の方から声を掛けられる。

「桜の木の下には死体が埋まってるっていうけど」
「うん?」
「梅の木の下にはいないのかな?」
「掘ってみる?」
「ううん、ごめん。ここで、彼氏と待ち合わせしてるから」

 彼氏、と聞いて、嬉しい悲鳴をあげそうになったのをなんとか抑えて、「そっかぁ、じゃあまたね」とそこを離れた。20歩くらい進んでからこっそり振り向くと、これまた驚くほど容姿端麗な男性が、先ほどの彼に近づいて何かこそこそ話をしている。なるほど年上の彼氏ってわけね、と私は納得した。
 二人が一言、二言、話した後、大学生の男の子の方が涙を流すのを、自分の手で覆い隠すのが見えた。背景の枝垂れ梅が、まるで現実世界から二人をかけ離しているように見えた。でも、確かに二人は存在していて、ドラマの登場人物のような彼らでも上手くいかないことがあるのだと知った。

 春の訪れは出会いの季節でもあるが、別れの季節でもあるのだ。私と彼とのちっぽけな出会いと、彼と彼との忘れられない別れ。私が神様なら、彼らに再会を——。
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