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復讐?編
4話 復讐計画 その2
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その映画はミニシアターで上映されていて、観客は俺と上条しかいないようだ。
その日の取材は、映画を見ることだった。題材はホラー映画らしく、その仕事を受けた時に、以前上条が怖いものが苦手だと同僚に話していたことを思い出した。俺は宮口さんにこの取材も上条と行って良いか確認をとり、二つ返事で許可を得た。
(これで、上条は怖くて夜眠れないはず!)
「やば、つまんなー」
「……」
「つまんないよね? レンゲちゃん」
「こういうレビューが最低の映画が好きなマニアはいますからね。たぶん記事に需要はあるんでしょう」
ゾンビの首が取れるシーンがあるのだが、明らかに血糊と分かる色をしていて、断面も杜撰で、自主制作映画でもないのに端的に映像が安っぽい。
残念ながら予定外に怖くない。
復讐計画その2、失敗。
「最近はレンゲちゃんがかまってくれるから嬉しいなー」
映画にはもう飽きたのか、劇場内に二人しかいないので上条が話しかけてきた。
「仕事です」
「私情が入ってるのは気のせい? 嬉しくない私情な気がするけど」
「……ジョセ先輩は、何で眠れないんですか?」
「気になる?」
「何か悩みがあるんでしょう?」
人の深みに入っていくのは好きじゃない。
他人の心情なんて、考えるのもめんどくさい。
心に寄り添って共に悲しめば誰かの役に立てるのかもしれない。でも、その瞬間、相手が喜んでくれたとして、その気持ちは永遠じゃない。
その気持ちはいつか消え去って、後悔に変わるかもしれない。そんな不安定な人の心に、一々振り回されるのは嫌だ。
「……実は俺、ゲイなんだ」
その唇は痙攣していて、上条には珍しく緊張しているように見えた。
「今まで誰にも言ったことない。親が聞いたら卒倒するかも。でも、何でだろうね? レンゲちゃんには言えたよ」
「……男が好きだということですか?」
「相手の男から誘われて、付き合ったこともある。誰にも言わなかったけど」
俺には分からない世界だが、きっと上条は男性からもモテるのだろう。
「気持ち悪いかな?」
「別に今の時代、珍しくないと思います」
「でも、そいつに好意を持たれてたら? 気持ち悪くない?」
「……人から好意を持たれたことがないので……分からないです」
「レンゲちゃんは、『責任感があって真面目な人』が好きなんだっけ?」
「今までそうですが、これからどんな人を好きになるかは……分からない……です」
「それは期待して良いってことかな?」
上条は肘掛けに置いてある俺の手を暗がりの中で見つけて、自分の手を乗せた。指を絡ませてくる。そして、上条は肩に凭れ掛かってきて、少しすると、寝息が近くで聞こえてきた。
先ほどからずっと鼓動が高鳴って、身体が変で気持ち悪い。どうしてか上手く動けない。
(こんなの知らない!)
ガタッと音を立て座席から立ち上がると、上条が起きた。
「どうしたの、レンゲちゃ……」
俺はそこから走って、劇場外に出て行った。
ずっと遠くにあると思っていた彼が、近くに感じられて、その眩い明かりに俺からも近づくことができたかもしれないのに素直じゃない。俺はそういう人間だ。
※上映中におしゃべりはやめましょう。
その日の取材は、映画を見ることだった。題材はホラー映画らしく、その仕事を受けた時に、以前上条が怖いものが苦手だと同僚に話していたことを思い出した。俺は宮口さんにこの取材も上条と行って良いか確認をとり、二つ返事で許可を得た。
(これで、上条は怖くて夜眠れないはず!)
「やば、つまんなー」
「……」
「つまんないよね? レンゲちゃん」
「こういうレビューが最低の映画が好きなマニアはいますからね。たぶん記事に需要はあるんでしょう」
ゾンビの首が取れるシーンがあるのだが、明らかに血糊と分かる色をしていて、断面も杜撰で、自主制作映画でもないのに端的に映像が安っぽい。
残念ながら予定外に怖くない。
復讐計画その2、失敗。
「最近はレンゲちゃんがかまってくれるから嬉しいなー」
映画にはもう飽きたのか、劇場内に二人しかいないので上条が話しかけてきた。
「仕事です」
「私情が入ってるのは気のせい? 嬉しくない私情な気がするけど」
「……ジョセ先輩は、何で眠れないんですか?」
「気になる?」
「何か悩みがあるんでしょう?」
人の深みに入っていくのは好きじゃない。
他人の心情なんて、考えるのもめんどくさい。
心に寄り添って共に悲しめば誰かの役に立てるのかもしれない。でも、その瞬間、相手が喜んでくれたとして、その気持ちは永遠じゃない。
その気持ちはいつか消え去って、後悔に変わるかもしれない。そんな不安定な人の心に、一々振り回されるのは嫌だ。
「……実は俺、ゲイなんだ」
その唇は痙攣していて、上条には珍しく緊張しているように見えた。
「今まで誰にも言ったことない。親が聞いたら卒倒するかも。でも、何でだろうね? レンゲちゃんには言えたよ」
「……男が好きだということですか?」
「相手の男から誘われて、付き合ったこともある。誰にも言わなかったけど」
俺には分からない世界だが、きっと上条は男性からもモテるのだろう。
「気持ち悪いかな?」
「別に今の時代、珍しくないと思います」
「でも、そいつに好意を持たれてたら? 気持ち悪くない?」
「……人から好意を持たれたことがないので……分からないです」
「レンゲちゃんは、『責任感があって真面目な人』が好きなんだっけ?」
「今までそうですが、これからどんな人を好きになるかは……分からない……です」
「それは期待して良いってことかな?」
上条は肘掛けに置いてある俺の手を暗がりの中で見つけて、自分の手を乗せた。指を絡ませてくる。そして、上条は肩に凭れ掛かってきて、少しすると、寝息が近くで聞こえてきた。
先ほどからずっと鼓動が高鳴って、身体が変で気持ち悪い。どうしてか上手く動けない。
(こんなの知らない!)
ガタッと音を立て座席から立ち上がると、上条が起きた。
「どうしたの、レンゲちゃ……」
俺はそこから走って、劇場外に出て行った。
ずっと遠くにあると思っていた彼が、近くに感じられて、その眩い明かりに俺からも近づくことができたかもしれないのに素直じゃない。俺はそういう人間だ。
※上映中におしゃべりはやめましょう。
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