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酒場のビール
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木の下、低い草木のなか。まっすぐに伸びた木の枝が一本置かれていた。少し白く光沢がある枝肌でほのかな花の香りがする。
日があるうちに確かめておきたいと
ジョナサンは雪弥がこの世界で最初に意識を取り戻した時にいた場所へ案内するように言った。
室内にいたから気がつかなかったが
夏の日差しが強く照りつけ、肌を焼くようだった。雪弥は真っ白な光の眩しさに目の前に手をやって、目を細める。
日本で住んでいた地域は湿度が高く、夏場は外に出るとすぐに汗ばんだ。この世界はからっとしていて風も強いため、汗をそこまでかかないがすぐに喉の渇きに襲われる。
全身をオーブンの中に突っ込んだらこんな感じかなとふと思いながら、白い石畳を踏みしめゆっくりと進んでいった。
『離れないように』
市場はいまも人が多く行き来し、にぎわっていたからジョナサンは雪弥の肩に手をかける。雪弥は前を向いたまま無言で頷き、行き交う人に揉まれながら通りまで一緒に歩いて行った。
『市場を経由するほうが早いと思ったが、この暑さじゃ遠回りした方がよかったかもな。』
ジョナサンが肩越しに苦笑する。
『うん。ちょっと多いよね。』
やっと人混みをぬけて、街の門へと続く石畳を歩く。
家の壁も地面も白いから、まぶしい。
石畳を通って見上げるほど高い門をぬけるとうっそうとした森林が広がっている。
ここの世界では人が住む場所は極端に樹木がないが、一歩外に出ると地理のほとんどが自然のまま残っている。
日が枝葉に遮られ、木漏れ日がさす。
『すごい。』
風を感じながら、つい上を見上げてしまう。
ジョナサンの視線を感じたので、そちらを向く。
『僕がいた場所では、こんなに森が身近になかったんだ。人が住む地域が発展していて道なんかも土じゃないんだ。』
僕は自然のままの森が好きだったから、にっこりと笑顔になっていたと思う。
だからジョナサンが同じように『そうか。』と優しく笑顔で返す。
『ここだよ。ここに立って向こうを見つめていたんだ。』
山のふもと、街よりは高い位置にあるこの場所。
少しひらけた枝葉の隙間から白く美しい街並みがのぞく。
ジョナサンは周囲を見て周り、考え込んでいるようだった。顎に手を当て、怪訝そうな顔をしている。
『おかしい。ここには、崩れ掛けた岩があったはずだ。ちょうど君の立っていた位置に。
野道を行く時の目印になっていた。それから』
ジョナサンは体の向きを変え、近くの茂みに足を踏み入れる。
ガサッ。と音を立てて持ち上げたのはまっすぐのびた木の枝だった。
『あっ』と声をあげ雪弥は驚いた顔をする。
それは雪弥が意識を取り戻したとき左手に持っていたものだ。
そして持ち上げた木の枝をもて遊びながら、ジョナサンはふっと満足げに笑う。
『行こう、お腹すいたな。昼食を取ろう。』
日があるうちに確かめておきたいと
ジョナサンは雪弥がこの世界で最初に意識を取り戻した時にいた場所へ案内するように言った。
室内にいたから気がつかなかったが
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日本で住んでいた地域は湿度が高く、夏場は外に出るとすぐに汗ばんだ。この世界はからっとしていて風も強いため、汗をそこまでかかないがすぐに喉の渇きに襲われる。
全身をオーブンの中に突っ込んだらこんな感じかなとふと思いながら、白い石畳を踏みしめゆっくりと進んでいった。
『離れないように』
市場はいまも人が多く行き来し、にぎわっていたからジョナサンは雪弥の肩に手をかける。雪弥は前を向いたまま無言で頷き、行き交う人に揉まれながら通りまで一緒に歩いて行った。
『市場を経由するほうが早いと思ったが、この暑さじゃ遠回りした方がよかったかもな。』
ジョナサンが肩越しに苦笑する。
『うん。ちょっと多いよね。』
やっと人混みをぬけて、街の門へと続く石畳を歩く。
家の壁も地面も白いから、まぶしい。
石畳を通って見上げるほど高い門をぬけるとうっそうとした森林が広がっている。
ここの世界では人が住む場所は極端に樹木がないが、一歩外に出ると地理のほとんどが自然のまま残っている。
日が枝葉に遮られ、木漏れ日がさす。
『すごい。』
風を感じながら、つい上を見上げてしまう。
ジョナサンの視線を感じたので、そちらを向く。
『僕がいた場所では、こんなに森が身近になかったんだ。人が住む地域が発展していて道なんかも土じゃないんだ。』
僕は自然のままの森が好きだったから、にっこりと笑顔になっていたと思う。
だからジョナサンが同じように『そうか。』と優しく笑顔で返す。
『ここだよ。ここに立って向こうを見つめていたんだ。』
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少しひらけた枝葉の隙間から白く美しい街並みがのぞく。
ジョナサンは周囲を見て周り、考え込んでいるようだった。顎に手を当て、怪訝そうな顔をしている。
『おかしい。ここには、崩れ掛けた岩があったはずだ。ちょうど君の立っていた位置に。
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ジョナサンは体の向きを変え、近くの茂みに足を踏み入れる。
ガサッ。と音を立てて持ち上げたのはまっすぐのびた木の枝だった。
『あっ』と声をあげ雪弥は驚いた顔をする。
それは雪弥が意識を取り戻したとき左手に持っていたものだ。
そして持ち上げた木の枝をもて遊びながら、ジョナサンはふっと満足げに笑う。
『行こう、お腹すいたな。昼食を取ろう。』
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