【完結】契約結婚。醜いと婚約破棄された私と仕事中毒上司の幸せな結婚生活。

千紫万紅

文字の大きさ
10 / 40

10 思ってたより

しおりを挟む


 好きな人に『醜い』とか言われて婚約破棄されてしまった絶望で、お仕事を何日も休んでしまっていたら。

 魔塔にある私の机の上には、うず高く積まれた書類の山がいくつも出来上がってしまっていた。

 婚約破棄されたのも勿論悲しいし辛いが、書類の山を一つ一つ片付けていくのも辛くて苦しい。

 正直放り出して逃げ出してしまいたい気持ちにはなりますが、仕事中毒の上司が目を光らせておりますので逃げられません。

 それにこの上司には、これから公私ともに大変お世話になる予定ですので。
 
 私は黙々と仕事を片付けていきました。

 そして夕方過ぎ。

 死に物狂いで終わらせました書類の山を、半分意識を飛ばして眺めていましたら。

「ブランシェ、仕事が終わったならすぐに出かける準備をしなさい。今から私の屋敷で謁見用のドレスを試着してもらう予定だ」

 と、業務連絡のようなお誘いを頂きまして。

 アレクセイ様の乗り心地の大変よろしい馬車に同乗させて頂きやって参りましたのは、私が今まで見たお屋敷の中で一番豪華なお屋敷でした。 

「うわぁ……すごぉ……! なんかよくわかりませんが、とりあえずすごいですよアレクセイ様のお屋敷!」

「語弊力が壊滅的だな君は……」

「いや、だってすごい! うちも昔はそれなりに裕福で、立派なお家に住んでいましたが流石はお貴族様ですね! 贅の極み! でも……アレクセイ様っぽくないような?」

 アレクセイ様ならもっとこう実用性重視で、質実剛健的な感じのお屋敷を想像していましたが。

 このお屋敷は絢爛豪華を絵に描いたような美しい外観の、私好みなロマンチックなお屋敷で。

「これは私が建てた物ではない、兄に贈られたんだ」

「ほほぅ、これを王様が……! だから贅の極み! 国民の血税が惜し気もなくこれでもかとこのお屋敷には注ぎ込まれているのですね!」

「……ブランシェは王族や貴族に、なにか恨みでも?」

「貴族に恨みならありますね! ついこの間、お貴族様の婚約者に『醜い』とか言われて婚約破棄されたばっかりですしー?」

 お貴族様には恨み辛みだらけです!

 主に婚約破棄の件で。

 あとは後妻とか、継母な件で。

「知っていると思うが私も貴族だからね? 君はそれ、わかって言ってる?」

「あら、不敬で処罰でもなされますか? アレクセイ様、これからはお仕事一人で頑張って下さいませね? ブランシェは影ながら応援しております!」

「……やはり私は教育を間違ったのだろうか?」

「大して教育されてませんよ、私。成人の儀をした会場から誘拐されるように魔塔に連れてこられて、『これを読みなさい』とアレクセイ様に本を与えられた後ちょっと補足事項を説明されただけですし……?」

 アレクセイ様に有無を言わさず成人の儀式会場から、魔塔に連れていかれてしまった十五歳の私。

 よく泣きませんでした!

 とっても偉いですよ!

「それで十分だろう? 君は文字の読み書きが最初から出来たし、渡した本の内容も全部覚えたし」

「いやいや……本の内容をちょっと覚えたからって、実際に出来るとは限りませんよ?」

「でも実際に君は出来ているだろう?」

 そうおっしゃったアレクセイ様は微笑まれ。

 そして微笑まれたアレクセイ様のお顔は、目映いほどに美しく、それは人外のようで。

 ゾワリとした悪寒が私の背中を撫でました。

 『仕事が忙しいから愛するつもりはない』と言うような愛の枯れた冷たい男性と結婚するなんて、やはり私は判断を間違えてしまったのかもしれません。

 ですが婚約の書類にサインをしてしまいましたから、今さら止める事なんて出来ません。

 なのでもう私に逃げ道はありません。

「そりゃ……一応出来ていますけど、それで教育間違ったとか言われても私は困るわけでして……」

 そして先に馬車を降りてアレクセイ様は、私に手を差しのべられました。

「さあお手をどうぞ、レディ?」

「あ、はい……」

 でも触れたアレクセイ様の大きな手は、私が思っていたものよりとても温かくて。

 何故か安心できるものでした。
 
しおりを挟む
感想 134

あなたにおすすめの小説

追放令嬢は六月の花嫁として隣国公爵に溺愛される

星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
「えぇいっ! オレは聖女リカコとの真実の愛に目覚めたのだっ。婚約は破棄。セリカ・アーカディア嬢、今日をもって我がメサイア国から追放だっ」 「捕えろ! セリカ嬢を国外へっ」 「きゃはは! 国外追放、おめでとう! けど、果たして標本の檻から逃げられるかなぁ? セリカさまぁ」 (良かった。お母様達の本当の確執がバレなくて……) 青い蝶々のように麗しいと評判の公爵令嬢セリカ・アーカディアは、母親同士が姉妹のように育ったという新興国家メサイア国の王太子と婚約していた。だが、異世界より現れた聖女リカコの策略にハマり、国外へと追放されてしまう。だが、殆どの者は知らなかった。噂以上の確執が、セリカと王太子の母親同士にあるということに。 * 六月の花嫁を題材にした作品です。 * 序章追加。過去編イリスsideが全11話、前世編セリカsideを数話予定しております。 * この作品はアルファポリスさん、小説家になろうさんに投稿しております。

「可愛げがない」と婚約破棄された公爵令嬢ですが、領地経営をしていたのは私です

希羽
恋愛
「お前のような可愛げのない女との婚約は破棄する!」 卒業パーティの会場で、婚約者である第二王子デリックはそう宣言し、私の義妹ミナを抱き寄せました。 誰もが私が泣き崩れると思いましたが――正直、せいせいしました。 だって、王子の領地経営、借金返済、結界維持、それら全ての激務を一人でこなしていたのは「可愛げのない」私だったのですから。 「承知しました。では、あとはミナと二人で頑張ってください」 私は手切れ金代わりに面倒な仕事を全て置いて国を出ました。 すると、国境で待っていたのは、隣国ガルガディア帝国の冷徹皇太子ことクライド様。なぜか彼は私を溺愛し、帝国で最高の地位と環境を与えてくれて……。

【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します

佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚 不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。 私はきっとまた、二十歳を越えられないーー  一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。  二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。  三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――? *ムーンライトノベルズにも掲載

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

お前との婚約は、ここで破棄する!

ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」  華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。  一瞬の静寂の後、会場がどよめく。  私は心の中でため息をついた。

婚約者に裏切られた女騎士は皇帝の側妃になれと命じられた

ミカン♬
恋愛
小国クライン国に帝国から<妖精姫>と名高いマリエッタ王女を側妃として差し出すよう命令が来た。 マリエッタ王女の侍女兼護衛のミーティアは嘆く王女の監視を命ぜられるが、ある日王女は失踪してしまった。 義兄と婚約者に裏切られたと知ったミーティアに「マリエッタとして帝国に嫁ぐように」と国王に命じられた。母を人質にされて仕方なく受け入れたミーティアを帝国のベルクール第二皇子が迎えに来た。 二人の出会いが帝国の運命を変えていく。 ふわっとした世界観です。サクッと終わります。他サイトにも投稿。完結後にリカルドとベルクールの閑話を入れました、宜しくお願いします。 2024/01/19 閑話リカルド少し加筆しました。

婚約破棄は綿密に行うもの

若目
恋愛
「マルグリット・エレオス、お前との婚約は破棄させてもらう!」 公爵令嬢マルグリットは、女遊びの激しい婚約者の王子様から婚約破棄を告げられる しかし、それはマルグリット自身が仕組んだものだった……

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

処理中です...