18 / 40
18 騒がしい貴族達
しおりを挟む何度自分達が縁談を持ちかけても。
美しいと評判のご令嬢が誘っても、全く見向きもしなかった王弟アレクセイ。
だがそんな男がとうとう結婚を決めたという。
だから暇をもて余した貴族達は、お相手はいったいどこのご令嬢かと興味津々で謁見の間に集まった。
そんな貴族達から向けられる好奇の視線に、ブランシェは晒される。
だけどブランシェは気にもとめず。
にっこりと微笑んで。
「国王陛下、お初にお目にかかります。フォール商会、商会長の娘ブランシェでございます。普段はアレクセイ様の下で働かせて頂いております」
「ふむ……話はアレクセイから聞いているよ、そなたが我が愚弟に結婚を決心させたブランシェか」
だがブランシェのその言葉に、驚きとざわめきが謁見の間に広がった。
王弟アレクセイが連れてきた相手は平民。
いくら臣下に下った身といえど、王家の血を引く人間が平民と結婚するなどあり得ない。
だから謁見の間に集まった貴族達は。
『そんなどこの馬の骨ともわからぬような平民女を嫁に貰うくらいならば、是非うちの娘を貰ってくれ』
『どうしてうちの娘を断っておいて、そんな平民なんかと……』
『まさか王は承認するつもりじゃないだろうな!? いくらアレクセイ様が側妃の子といえど……』
等と、好き勝手に言い始めた。
今は王がブランシェと話している最中だと言うのに、貴族達は騒がしく口々にそんな事を言う。
だからそんな騒がしい貴族達に、国王は。
「お前達、その減らず口を慎め! 今は余がアレクセイの婚約者と話をしている最中だ、黙らんならここから出ていかすぞ!」
そう貴族達を一喝した。
国王に一喝された貴族は罰が悪そうな顔で黙り込む、だが不満そうな顔を隠しもせずブランシェを睨みつけた。
そんな貴族達の様子に国王は嘆息をついて、ブランシェに再び向き直る。
「すまんなブランシェ、気を悪くさせただろう? 余はただアレクセイが選んだ女性を一度この目で見て、話をしてみたかっただけなんだが……」
気遣わしげに微笑んだ国王は、平民のブランシェ相手に謝罪の言葉を口にした。
国王はただ、弟のアレクセイが決めた相手に会ってみたかっただけで。
まさか謁見の間に入る事が許された貴族達が、こんな反応をするとは思ってもみなかった。
だってブランシェは平民だが魔塔の魔法使い。
一人前になれば爵位を得る事ができる特別な人間で、平民だと侮っていい人間ではない。
『アレクセイ様の下で働いている』
その言葉で普通は気付くはずなのに、目先の欲望に目が眩んだ貴族達は気付けない。
「過分なご配慮ありがとうございます。ですが私がどこの馬の骨かもわからない平民というのは事実でございますので……。それに国王陛下にお会い出来てブランシェは光栄でございます」
「そうか、ブランシェはいい子だな? アレクセイ、お前にも嫌な思いをさせてしまったな」
「そう思うのなら、ここに呼ばないで頂けますか? ですがまあ……この私と敵対したい貴族を見つける事が出来たので、それはそれで良かったですが?」
「またお前はそんな物騒な事を……まあ今回は貴族達が悪いから、余は何もいわんが」
「それはよかった。そろそろ誰のおかげで安心して生活できているの理解させなければいけないと思っていたんです。なので先ほど私の結婚を反対した貴族達の領地は魔物の間引き、今期は無しに致しましょう」
「おいアレクセイ? それはいくらなんでも……」
「元はといえばブランシェに会いたいと我が儘言った兄さんが悪いので、口出しは無しにしていただけます? それに何も言わないのでしょう?」
アレクセイはブランシェの隣で、結婚について口々に不満を垂れる貴族達を黙って観察していた。
自分の結婚について少なからず反対する者がいるだろうとは、アレクセイも思ってはいた。
だがこんなにも多いとは。
これは自分達の立場を理解させなければ。
……是非この機会に。
それは仕事量を減らす為でもあるし、ブランシェとの幸せな結婚生活の為には必要不可欠だから。
299
あなたにおすすめの小説
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました
歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と
罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが
やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、
エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」
辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。
商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。
元夫が「戻ってこい」と泣きつくが——
「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」
婚約破棄ですか?構いませんわ。ですがその契約、すべて我が家のものです
ふわふわ
恋愛
王太子ユリウスは、王立学園の卒業舞踏会で突然宣言した。
「カリスタ・ヴァレリオンとの婚約を破棄する!」
隣には涙を流す義妹ルミレア。
彼女は「姉に虐げられてきた可哀想な令嬢」を演じ、王太子はそれを信じてしまう。
だが――王太子は知らなかった。
ヴァレリオン公爵家が
王国銀行の資金、港湾会社の株式、商人組合の信用保証――
王国経済の中枢を支える契約のほとんどを握っていたことを。
婚約破棄と同時に、カリスタは静かに言った。
「では契約を終了いたします」
その瞬間、王国の歯車は止まり始める。
港は停止。
銀行は資金不足。
商人は取引停止。
そしてついに――
王宮大広間で王太子の公開断罪が始まる。
「私は悪くない!」
「騙されたんだ!」
見苦しく喚き暴れる王太子は、衛兵に取り押さえられ、床を引きずられるようにして連行されていく。
王太子、義妹、義父母。
すべてが破滅したとき、カリスタはただ静かに告げる。
「契約は終わりました」
『無能な聖女』と婚約破棄された私、実は伝説の竜を唯一従える『真の守護者』でした。~今さら国に戻れと言われても、もう遅いです~
スカッと文庫
ファンタジー
「魔力値たったの5だと? 貴様のような偽聖女、この国には不要だ!」
聖女として国を支えてきたエルナは、第一王子カイルから非情な婚約破棄を言い渡される。隣には、魔力値を偽装して聖女の座を奪った男爵令嬢の姿が。
実家からも見捨てられ、生きては戻れぬ『死の森』へ追放されたエルナ。しかし、絶望の中で彼女が目覚めさせたのは、人間には測定不能な【神聖魔力】だった。
森の奥で封印されていた伝説の銀竜を解き放ち、隣国の冷徹皇帝にその才能を見出された時、エルナを捨てた王国は滅びの危機に直面する――。
「今さら謝っても、私の結界はもうあなたたちのために張ることはありません」
捨てられた聖女が真の幸せを掴む、逆転劇がいま幕を開ける!
婚約破棄された宰相です。 正直、婚約者も宰相も辞めたかったので丁度よかったです
鍛高譚
恋愛
内容紹介
「婚約破棄だ! そして宰相もクビだ!」
王宮の舞踏会で突然そう宣言したのは、女性問題を繰り返す問題王太子ユリウス。
婚約者であり王国宰相でもあるレティシアは、静かに答えた。
「かしこまりました」
――正直、本当に辞めたかったので。
これまで王太子の女性問題の後始末、慰謝料交渉、教会対応、社交界の火消し……
すべて押し付けられていたレティシアは、婚約も宰相職もあっさり辞任。
そしてその瞬間――
王宮が止まった。
料理人が動かない。
書類が処理されない。
伝令がいない。
ついにはトイレの汚物回収まで止まり、王宮は大混乱。
さらに王太子の新たな女性問題が発覚し、教会は激怒。
噂は王都中に広がり、王宮は完全に統治不能に。
そしてついに――
教会・貴族・王家が下した決断は、
「王太子廃嫡」
そして。
「レティシア、女王即位」
婚約破棄して宰相をクビにした結果、
王宮を止めてしまった元王太子の末路とは――?
これは、婚約破棄された宰相が女王になるまでの
完全自業自得ざまぁ物語。
「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました
唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」
不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。
どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。
私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。
「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。
身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる