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21 聞いてればよかった
しおりを挟むあの後、アレクセイ様は私に何もお聞きになられなかった。
ただ私に優しく微笑まれただけ。
きっと私の態度で、全てお気付きになってしまわれたのでしょう。
それから。
トントン拍子で私達の結婚式の日取りが決まりました、
そしてその日は、エクトル様が新しい婚約者の方と結婚式を挙げる日で。
アレクセイ様がわざと結婚式の日にちを被せたのだと、ふと浮かべた不敵な微笑みで察しました。
なんとも性格がお悪い。
アレクセイ様は、エクトル様達から結婚式の列席者を奪ってしまわれるおつもりです。
ただの貴族の結婚式と、王弟で魔塔主の結婚式。
お貴族様達がどちらに出席したいかなんて、わざわざ聞かなくてもわかる事で。
少しだけ気持ちがすっきりと致します。
ですがそのせいで結婚式の日取りが近い。
今からウェディングドレスを仕立てるには、時間が足りないのではないかと心配していたのですが。
ドレスの採寸から仮縫いまでたったの三日。
そこから出来上がりまで一週間とかからず、私のウェディングドレスが出来てしまいました。
それもまた一等豪華なドレスで。
ドレスに沢山縫い付けられた宝石の重みで、肩こりをしてしまいそうなほど。
このウェディングドレスを着てバージンロードを歩くのは、骨が折れそうです。
「ですがこれは……いくらなんでも豪華過ぎやしませんか、アレクセイ様?」
「そうか? このくらいは至って普通だろう」
「普通……?」
「私の妻になる君が着るドレスだ、これくらいは普通だよ。それにまだ足りないくらいだ」
王族の方がお考えになられます普通と、一般庶民が考える普通は全然違うらしいです。
しかも足りないって。
……どれだけお金持ちなのでしょうか?
そして結婚式の日が近付くに連れて、私とアレクセイ様はどんどん多忙になっていきました。
何が忙しいかと言えば。
私は、公爵夫人となる為の教育。
契約結婚をするにあたり。
必要最低限の淑女教育を、私はばぁやさんに叩き込まれる日々を送っています。
そしてアレクセイ様は……なにをなさっていらっしゃるのか私にはよくはわかりません。
ですが毎日楽しそうにされていらっしゃるので、きっと碌な事ではないのでしょう。
たぶん私達の結婚に反対されるお貴族様達の対応や、魔物の間引きの件について。
だとは思うのですが。
下手にアレクセイ様に聞けば、絶対に手伝わさせられてしまいます。
なのでそこは部下としての長年経験から、何をしているかなんて決して聞きません。
触らぬ神に祟りなしです。
そして結婚式が明日に迫り。
アレクセイ様が裏で何をやっていたのか、最悪な形で私は知ってしまいました。
突然ドレスを着せられて。
何も教えて貰えず。
アレクセイ様に王宮に連れて来られたかと思えば。
謁見の間に通されて。
そこで待ち構えておられた国王陛下に、私は何故か侯爵位を授けられてしまいました。
「へ……?」
「これからはブランシェ・エルマレ侯爵と名乗るように。まぁ……それも我が愚弟アレクセイと結婚する明日までだがね?」
「は、はいぃ?」
「おめでとう、ブランシェ・エルマレ侯爵」
ざわめくお貴族様達。
そりゃそうでしょう。
私もとっても驚いています。
平民が侯爵位を授与するだなんて、あっても騎士爵か一代限りの男爵位まで。
だから私は、終始ニコニコとご機嫌に微笑んでいらっしゃいますアレクセイ様に。
「どういう事ですか、アレクセイ様! これ!」
「君に爵位をプレゼント?」
「ちょ、プレゼントって……アレクセイ様? こんなの職権濫用ですよ? いくらなんでも平民に侯爵位ってやり過ぎです!」
いくらなんでもこんなのあり得ない!
「……魔塔の魔法使いとして一人前となれば、平民にも爵位を与える。それがこの国の法だな?」
「イヤイヤイヤイヤ! 魔法使いとして一人前になったら陞爵って……そんな法律、私は知りませんよ!?」
初耳なのですが……?
「君が勉強不足なだけだ、もっと一般教養の勉強時間を増やさないといけないかもしれないな……?」
アレクセイ様はそうおっしゃって、ニンマリと微笑まれました。
ああ、これはまんまと謀れてしまいました。
触らぬ神に祟りなしとか悠長な事を言っていないで、何をしていらっしゃるのかアレクセイ様に聞いておけばよかった!
そうすればせめて。
覚悟くらい出来ましたのに。
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