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15 お節介
謁見の間でユーフェミアが、国王や父親であるシュバリエと顔を会わせている頃。
ナサリアの王太子ユリウスを一人で接待するのは、宰相であるアレクサンドで。
「それで……ナサリアの王太子ともあろう方がいったい何のご用で我が国の王都を護衛も伴わずお一人でほっつき歩いていたんですか?」
接待しているというより。
尋問に近いようなその会話。
「ああ、それは妹が輿入れする国を今一度よくみておこうかと思ってね……! そして妹が輿入れを諦めてくれるようなこの国の欠点を探りに! やっぱり嫁に出すなら国内が良い……会えなくなるし?」
「うわ……シスコン……」
その王太子の返事に、宰相はとても引き気味で。
「はは、何か言ったー? 意中の女性に求婚すら録に出来ない癖に。いやそれにしても宰相が王妃に懸想していたなんて……ドロドロだね?」
少し苛ついたのか宰相に言い返すナサリアの王太子は、笑っているが言葉にはどこか刺がある。
「……貴方には関係ありません。街中を下手にうろちょろされて王太子である貴方に何かあっては面倒です、早々に自国へお引き取りを」
「いやいや関係あるよ? 私の可愛い妹がここで暮らすんだ、憂いは払拭しておかなければ! それに面白そうだし」
この状況を面白そうだと本人に言うのはどうかと思うが、そこに悪気はない。
「面白そうって……」
「それで、いつから彼女の事が好きなの? どこら辺が好きなの? やっぱりあの嫋やかな雰囲気? さあ、宰相君の求婚が成功するように、この私自らが協力してあげるから、言ってみなさい!」
宰相アレクサンドに協力するといって嬉々として質問するナサリアの王太子は、とても楽しそうで。
「貴方の協力なんて必要ありません! もう……全ては終わったことですから……」
「未練タラタラにしか見えないけど……? 彼女のことまだ好きなんでしょ? 大丈夫このユリウスにまかせな! 私はね、国で恋に悩む令嬢や子息達を何組もお節介して結婚させてきたんだ!」
「……人の恋路で遊びたいだけにしか見えませんが?」
「なに人聞き悪い事を、大して遊んでない! さあ、宰相君っ! 相談に乗ろうじゃないか?」
「取り返しのつかない事を……私は……」
裏表なく本当にお節介したがるナサリアの王太子ユリウスに、宰相アレクサンドは。
まるで観念でもしたかのようにこれまでの経緯を相談した、相談した所でどうしようもないと思いながら。
「……うん、あれだ! 君たち馬鹿だね! 彼女の事を舐め腐り過ぎ、なにもわからない籠の鳥? そんなんで王妃が勤まるわけ……ないでしょ?」
「……それは、そうですが」
「君がいま出来ることは、全てを話し謝る。そして彼女の意思を尊重する! 話はそれからだね……?」
「……意思、ですか」
「そう、決めつけないで話し合う事。この国は考えが古いなあ……貞淑に清楚にってそれじゃ女性はなにも本音が言えないね」
「……そうですね」
「じゃあ、早くいきな? 善は急げだよ?」
「……貴方のような方が国王だったら、よかったのに」
「えー? 私、こんな大国の王なんて絶対に嫌だよ!? 仕事尽くめで妃とイチャイチャする時間無くなるじゃん……! なんにもない小国最高……!」
「あはは……」
そして宰相アレクサンドは、ナサリアの王太子ユリウスと友人になった。
アレクサンドにとって初めての友人らしい。
そしてアレクサンド曰く、自国の国王フェリクスは友人ではなく仕事上の知人らしい。
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