【完結】用済みと捨てられたはずの王妃はその愛を知らない

千紫万紅

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16 決められた人生



「っいや……!」

 ぞわりと全身に鳥肌が立つ。

 王妃になった時こういった事は覚悟していた、だけどさっきの発言もあいまって嫌悪感が溢れ出た。

 廃妃の次は、側妃にするって?

 また勝手に、私の未来を決めたんだ。

 今まで私の人生は全て事後報告のみで、本人に何の相談なく全て決められてきた。

 それは王妃になったあの時でさえも。

 ただそう決まったと、告げられた。

 なにも相談されることなく自分の事なのに、蚊帳の外でなにも知らないままに人生を左右されて。

 王妃としてこの10年必死に生きてきた。

「ユーフェミア……」

「やめて……!」

 国王フェリクスから逃げようとユーフェミアは暴れて叫ぶ、その声は悲鳴のようで。

 そんな時。

 唐突に扉は開かれる。

「どうされましたか! ユーフェミア様!?」

 扉を突然開いたのは宰相アレクサンドで。

 ユーフェミアに今までの事を全て話し、謝罪しようとして王宮まで一人やってきたら。

 ユーフェミアの悲痛な悲鳴が聞こえて。

 宰相アレクサンドはユーフェミアの入室許可を取らずに、その扉を勢い良く開いた。

「えっ、アレクサンド……!?」

 まさか宰相アレクサンドがここにやって来るだなんて、思っても見なかった国王フェリクスは。

 ユーフェミアから目をそちらに向けた瞬間に。

 ガン……!

 という音と共に、王妃ユーフェミアに国王フェリクスは大きなトランクケースで殴られた。

 その大きなトランクケースはユーフェミアが王宮から逃げようとして、いそいそ用意していたもので。

 ちょうどユーフェミアの手元にあった。

 そして床に手を付いてその痛みに涙目になるのは、一応まだ自分の夫らしい国王フェリクスで。

 ユーフェミアはこれはちょっと不味いかもしれないと、やってしまった事を反省するその一方で。

 『すっきりした』と、フェリクスを見下ろしながら思う部分もユーフェミアの中にはあって。
 
「あーあ。やっちゃった……まぁ、いっか!」

「全然良くはないと思いますが……ユーフェミア様?」

「あら……うーん、そうかしら?」

 長年に渡ってやってきた嫋やかな微笑みを浮かべ、笑って宰相をいつものように誤魔化しにかかる。

 こういう時はもう笑って誤魔化すに限る。

 きっと宰相性悪の事だ、絶対に後でネチネチと嫌味ったらしくごちゃごちゃと言ってくるからだ。



 そしてユーフェミアにトランクケースで殴られ腫れた顔面を、自分の執務室に戻り氷嚢で冷やす国王フェリクスに。

 宰相アレクサンドが声をかける。

「……フェリクス、大丈夫か? 医者……呼ぶか?」

「全然大丈夫ではないが、医者はいらん……妃に殴られて医者を呼んだとか……そんな事が貴族達に知られたら私は一生笑い者だ」

「そりゃ……まあそうだな。それにしてもお前は何やってたんだ? ユーフェミア様の悲鳴が聞こえたが……どうして部屋に」

「……もうアレクサンドお前に何も遠慮する必要がないからな? ユーフェミアを……私は抱こうとしていた」

「っ……フェリクスお前! ユーフェミア様はもう廃妃になったんだ、なに馬鹿な事をして……」

「ユーフェミアは側妃にする。アレクサンド、前に言ったろ? 私も彼女の事が好きになったって」

「側妃って……! お前、もうあんな醜い争いは懲りごりだから妃は一人しかいらないって、そう言ってたじゃないか!」

「……お前達が王女を私に宛がってきたんだろ?」

「いや、それは……!」

「……私はいつまで国の為だけに生きねばならない? それは一生か? なら好きな女をこの手に欲しがるくらい……それぐらいなら別にいいじゃないか……」

 と、言って拗ねたように国王フェリクスは。

 もう十分いい大人なのにも関わらず、そっぽを向いて不貞腐れていた。
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