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17 爽やかな朝に
しおりを挟む爽やかな朝なのに。
お通夜みたいな表情の宰相が、そこにはいた。
『お話があります、できればお一人で』
と、それだけ言われ呼び出され。
やっぱり国王を殴ったのは不味かったかな?
でもすごくスッキリして気持ち良かった!
あの国王の私に殴られた時の驚いた表情が、たまらなく愉快で。
だがあの性悪の事だ。
国王をトランクケースで殴った事をネチネチ嫌味ったらしく淑女がどうのこうのと言って来るはずだ。
私とはもう一切関わらないと言っていたはずなのに、呼び出すなんていったい何を考えているのだろうか。
と、どうこの状況を有耶無耶にして切り抜けようかとユーフェミアは考えながら、どこか清々しい爽やかな気分で豪勢な朝食を完食し。
優雅に食後のお茶を飲み干して、食後の運動がてら性悪の執務室まで侍女を撒いてやって来てみれば。
そんな辛気臭い顔が、私と目があった瞬間にこちらを切なそうな表情でじっ……と見てくるから。
その場で回れ右して見飽きたはずの王宮の庭にでも、気分転換に散歩しに行きたくなった。
「ユーフェミア様……」
「……宰相様がこのワタクシにお話とは、どういったご用件ですの? もう関わらないのでは……なかったのですか?」
アレ言ったの昨日の今日だぞ?
もう忘れてしまったのかな?
「私は貴女に話さないといけないこと、そして謝らねばならない事があります」
……ん?
宰相が私に謝る……?
アレを殴った件について、あーだこーだと口喧しく言われるのではなくて?
「……側妃に位を下げるという馬鹿げた件について、ですか? ワタクシに何のご相談もされず宰相様がお決めになったのですね?」
「いいえ、その件については私の預かり知らぬ所です。たぶん……国王陛下とシュバリエ公爵が決めたと思われますが、それについては此方でそんな馬鹿げた事がないように潰しておきました」
……狸親父、またお前だったのか……!
私の前では甘言ばかり言う癖に、裏で私の事を政治の道具として好き勝手しやがって……!
いつか絶対にやり返してやる。
「あら……そう? それはとても助かりましたわ、ありがとうございます宰相様」
うん、でも助かった!
アレの側妃なんてまっぴらごめん。
たまには使えるな性悪も、性格は嫌味ったらしいが仕事だけは出来るからなコイツ。
「……私は……ユーフェミア様に感謝されるような人間ではありません、貴女の幸せな未来を、己の欲望の為に……壊してしまったのだから……」
「……え?」
私の何を潰したと!?
事と次第によっては許さないぞ?
そして。
なにかを思い詰めたように、切なそうな表情をしていた宰相アレクサンドは。
堰を切ったようにユーフェミアに話し始めた。
自分とユーフェミアが内々にではあるが10年前婚約していたこと、そして王位継承争いによって婚約が破棄された事。
ユーフェミアに恋をしていたこと。
王妃となったユーフェミアに対して、その想いを忘れる事が出来ずシュバリエ公爵と途方もない約束を交わしたこと。
国王フェリクスにユーフェミアの身体に指一本触れるなと、脅していたこと。
二人が一緒に過ごす事が出来ないように、裏でこそこそと邪魔していたこと。
ユーフェミアが廃妃になったのは、シュバリエ公爵と自分が交わしたあの途方もない約束が守られたから。
そしてユーフェミアに廃妃になると告げたあの日、本当は求婚しようと思っていて怖じ気づいて出来なかったこと。
今までずっと隠していた真実をすべて話した。
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