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33 初めて知った
普段アレクサンドは前髪を上げているのに、今日は休みだからか下ろしていて。
その姿はいつもと違って幼く見えた。
そんなアレクサンドがつい気になって。
じっと顔を見ていたら、目があって。
優しく微笑んできた。
「っ……あぅ」
「ん? どうしました、ユーフェミア」
「い、いえ……なんでもありません」
……びっくりした。
美形には国王で慣れているつもりだった、けど優しく微笑んだアレクサンドは。
焦げ茶色の瞳はつり目がちで、国王とはまた違ったタイプの美形で。
破壊力が凄まじかった。
馬鹿にするように嘲笑うアレクサンドの冷ややかな笑顔は見慣れていた、けどそんな優しい微笑みを向けられたことなんて今まで無くて。
その優しい笑顔に高鳴り弾む心臓の音が自分でも聞こえるほどで、つい赤面しそうになった。
でも胸が高鳴るその相手は。
大嫌いだったはずの性悪。
……という衝撃の事実に自分自身困惑している。
好きとか言われて?
ちょっと優しくされたからって。
私の心臓よ……チョロすぎやしないかい!?
それにしてもアレクサンドは、本当に美味しそうにケーキを食べる。
甘いものがこんなに好きだったなんて10年間顔をつき合わせていて、初めて知った。
カフェを出て、王宮を脱け出した時に一人で訪れた酒場の前にアレクサンドとやってきた。
「ユーフェミア、少し早いですが……お腹も空きましたし入りましょうか?」
「え、お腹空いたって……貴方、確かケーキを三つも召し上がっていませんでしたか!?」
「三つくらいじゃ全然足りませんよ? ……確か酒場って食事もありましたよね! 楽しみですね」
開店直後の酒場は人がまばら。
「お姉さん! とりあえずエール二つ!」
勝手知ったるなんとやら、席に座るなりエールを手早く注文して乾杯である。
「なんでしょう……? 注文が手慣れすぎてやしませんか、ユーフェミア?」
「んふふー! そうですか? こんなものでしょう! 前回は屋台で飲んでから酒場に来ました!」
「……人が血眼になって探してる時に、貴女は楽しくはしご酒をしていたのですね」
「あら、そんな懸命に私を探されていたのですか? 全然気付きませんでした」
げんなりとした表情で、私を見たアレクサンドはエールを一気に飲み干した。
そんな必死に私を探していたなんて初耳だ。
「おっ! あの時の別嬪なねぇちゃんじゃねーか! 今日は男連れか! 次は捨てられんなよー!」
と、王宮から脱け出した時に絡み酒して、愚痴を聞かせていた平民のおっちゃん達が声をかけてきた。
「はい! 捨てられないように気をつけます!」
「……いつの間に平民と仲良くなったのですか?」
「残りの人生を幽閉されて監視されて生きるくらいならば、私は平民として残りの生涯を一人で生きていこうかなと思っていましたからね? ……あの時」
「説明不足……というか、貴女の人生を勝手に決めてしまい……今は大変申し訳なく、なんと謝ったらいいか……」
「……もう謝らないでください、アレクサンド?」
「ですが私は……! 貴女が王妃として、フェリクスの隣で幸せになる未来を……潰した」
申し訳なさそうに目を伏せるアレクサンドの手は強く握られていて、少し震えている。
「前にも言いましたが、廃妃にしてくれて貴方にはとても感謝しているんですよ? たぶん邪魔されなくても私とフェリクスは上手くはいかなかったと思いますしね?」
……フェリクスに触られると鳥肌立つし。
アレとは気が合わないし生理的に受け付けない。
「ユーフェミア……ですが……」
「だから……もう、謝らないでくださいな?」
ほろ酔い気分でアレクサンドと街を歩く。
「ユーフェミア……また貴女をお食事にお誘いしても……良いでしょうか?」
「え……」
「……ユーフェミアを不快にさせてしまうと思って関わらないでおこうと思っていました、でも……どうしても私は貴女を諦められそうにない、好きなんだ」
夜の街は危ないからと繋がれた手が熱い。
「でも……私は普通の令嬢ではなく廃妃ですよ? 一緒に居れば貴方の名誉まで……嫌じゃないのですか?」
「……っ嫌な訳があるか! 私がっ……貴女を廃妃に落としたんだ、名誉を傷つけるとわかっていながら……」
「アレクサンド……」
「どれだけ貴女を王家から取り戻すのに私が必死だったか……わかりますか? ユーフェミアがいい、貴女が欲しいんだ、正直このまま私の屋敷に連れて帰ってしまいたい」
熱を帯びる瞳。
そんな目で熱く見詰められて欲しいなんて言われたら、つい頷いてしまいそうになる。
「え、つ……連れて帰られるのは……その、侍女達が私の帰りを待っていますので……」
「……侍女が待ってなければいいの? ユーフェミアは私のことどう思ってる?」
「え……えっと……」
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