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12 社畜の残業

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 仕事の効率化を計りもっと沢山の埋もれてしまうような仕事量にしてしまいたいな

 ……と社畜は床を磨き上げながら妄想する。

 みんなで屍のようにその場で仮眠し風呂にも入らず着替えもせずに、次の現場に向かったあの頃……。

 なんという充実感に満ち溢れていたのか。

 数十人いた同期達はみんな辞めていったが。

 転生前の充実した日々を、つい思い出してしまうのは仕方ない。

 それはあまりにも、神殿の仕事が楽すぎるのだ。
 
 普通に栄養満点の食事の時間もあるし、お祈りの時間もあるし、風呂にも毎日入るし、睡眠時間もキッチリとあるのだ。

 仕事時間も決められていてその時間内で終わってしまう。

 人手不足と聞いていたのに全然余裕すぎるし仕事内容も楽すぎて全然物足りない。

 ……自主的に居残って勝手に残業したくても礼拝堂の鍵が閉められてしまい入れない。

 ので、夜な夜な社畜は頼まれてもいない仕事を勝手に見つけ出し、勝手に残業を初めてしまう。

 その勝手に始めた残業行為が、この訓練された社畜の元悪役令嬢スカーレットが、聖女へと奉り上げられる事への布石になろうとは、ご本人は全く気づかなかった!

 それによってまさか大事な承認欲求を満たす、この社畜にとってかけがえのない仕事を全て奪われる事になろうとは……、この時の社畜は知るよしもない。

 訓練された社畜は、とりあえずめぼしい場所の掃除を夜な夜な他の神官達に隠れて行う。

 会社の美化活動は……社畜の基本。

 神殿を清らかに保つのは神官の勤めであるから勝手にやったとしても怒られないかな?と思った為である。
 
 だがそれだけでは社畜の勤労意欲は疲労感は全然満たされない。

 やはり眠るときは疲労困憊で死んだように眠りたいのである。

 なので、孤児院にいそいそと出向き夜泣きする赤子や幼児を見つけては抱き上げて、あやすというまるで聖母のような行いまで始める。

 これはなかなかに疲労感が溜まり満たされた。

 孤児院長にもなぜか褒められて承認欲求まで満たされて社畜はご機嫌だった。

 昼間は本業の礼拝堂の掃除に、礼拝参加者の案内をこなし

 夜は神殿を頼まれてもいないのに勝手に清掃し、それから孤児院に出向き、幼子達の世話をして程よい疲労感に満たされて、深夜に眠りにつく。

 早朝のまだ日もあがらぬうちから、自分の疲れた身体に、社畜してると喜び、礼拝堂に出向き、自主的に清掃を始める。

 多少物足りなさも感じるが、なかなかに満たされていた日々だった。

 ……なぜか、礼拝堂の礼拝に攻略対象者の一人が、やってくるまでは。
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