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35 不思議
しおりを挟む孤児院で勝手に働いていた事が上司……神殿長に見つかってしまった社畜スカーレットは、神殿長の後に続いて神殿内を神殿長室まで連行されていた。
目の前を優雅に歩く神殿長は、見目だけならまるで神が創造したような、神がかった美しさで、男性なのに兎に角美しい。
薄い水色の髪はここは乙女ゲームの世界ですと、再確認させてくれる。
たが、スカーレットにとってはやはり神殿長は自分から何よりも大事な仕事を取り上げた敵。
見目が良すぎるだけの糞上司だった。
それに乙女ゲームの舞台である学園で無駄に容姿の優れた攻略対象者や婚約者にあまり良い扱いを受けていなかった為に
美形の男性にスカーレットは苦手意識があった。
だから神殿長のご尊顔がどんなに優れていようと年頃の女の子であるはずのスカーレットの心はピクリとも動かなかった。
そしてその神殿長も、この良すぎる容姿の為に幼少期から大変な苦労があったらしくあまり自分の容姿は好きになれないし
この容姿に騒ぎたてたり、顔を赤らめられるのはとても不快だった。
だからかもしれない。
神殿長はこの後に段々と自分の顔をみても特に態度の変わらないスカーレットに対して好意を抱いてしまったのは。
そしてスカーレットは出家した神官で自分もこの神殿に縛り付けられた身でスカーレットへの自身思いに苦しむ事になる。
ただそれは、まだまだ先の話だが。
そして現在、社畜は神殿長室の応接セットに座らされて、なぜか神殿長自らお茶を入れてくださり、なぜか茶菓子まで提供されておもてなしされていた。
プロの社畜はこんな賄賂で騙されないぞという無駄な意気込みで、応接セットの端に座り神殿長に今からどんな叱責をされるのか、ほんのちょっとだけひびっていた。
「スカーレット、君の奉仕したいという気持ちもわかるが、私は前に君にお話をしたよね? 君が倒れたら悲しむ者がいると。なぜそれがわからない? 君が無理して孤児院で倒れてみなさい、子ども達が悲しむと言うことが君にはわからないのかい?」
「それは……」
「それに私だって、他の神官達だって、みんな君を家族だと思ってるんだ。ほら、そんなにまた痩せてしまって…遠慮しなくていい、菓子は好きかい? 食べれそうならたくさんお食べ。」
「……はい」
スカーレットは正直驚いていた。
怒られると、叱責されるとおもっていた。
なのに神殿長は怒るどころか優しくスカーレットが心配だと言う、それにお茶まで入れてくださり、菓子まで進めてくるこの上司に神殿長に驚いていた。
普通自分の命令を聞かず好き勝手している部下が居れば上司は怒るもののはずなのに。
社畜はスカーレットはこの時不思議な生物を見るような気持ちで神殿長と対峙していた。
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