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55 公爵令嬢

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 邪魔だった。

  私より家柄も財産も地位も名誉も下の癖に、私の初恋の人と、私が産まれる前から婚約しているなんて。

 なにが血統がいいよ、私は私の家は王家と血の繋がりがあるんだから私のほうがいいに決まっている。

 公爵家のご令嬢レオノーラは、王太子サミュエルに幼い頃に連れて行かれた王宮の母達のお茶会で、サミュエルに恋をした。

 一つ上の王子様、容姿も申し分なく、誰にでも優しく接するサミュエルに、幼いレオノーラは憧れた。

 幼いレオノーラは知らない、知るはずもない、目の前の優しい王子様はもう将来の伴侶が決められているなんて。

 だからどんどん、好きになっていく淡い恋心は、年を重ねる毎に強くなって、だけど偶然レオノーラは、片想いの相手にもう婚約者がいると知ってしまう。

 いつか、告白して恋人になれたら、私は公爵令嬢だし、王家に嫁ぐのにも申し分ない身分だしと期待していた。

 会うたびに優しく笑いかけてくれる、サミュエルお兄様に婚約者がいたなんて、それに国が大人達が決めたと言うことがわかって、レオノーラは絶望した。

 好き同士で婚約したならまだ諦めは着いたのに、大好きなサミュエルお兄様が好きな人と結ばれるなら、悲しくて苦しいけれど、応援したのに…。

 ただ血統がいいというだけで、私の大事なサミュエルお兄様を手に入れようとしている、侯爵令嬢スカーレット。

 私より下の癖に、お兄様の事なんて好きじゃないと見ていたらわかるその態度。

 こいつさえいなければ…、スカーレットさえ存在しなければ、そこは私の居る場所だったのに。

 学園に入学して、サミュエルお兄様を見ていたらスカーレットではなくて、スカーレットの妹と仲良くするお兄様……。

 ……それはもう友人の領域を越えていて、直ぐに恋仲だと、気付いてしまうほどに甘い雰囲気で、紛い物の癖に、婚約者の妹という立場を利用して、私のサミュエルお兄様に近づいた平民の穢れた血。

 腹が立って嫌がらせさてていたら、やり過ぎてしまったらしく、公爵家のライリーが、それを調べ始めたからめんどくさい事になるのも嫌だし、丁度いいかなっておもって侯爵令嬢スカーレットに罪を擦り付けてあげた。


 そしたら!

 面白いくらいに、馬鹿なライリー達が勘違いして!

 侯爵令嬢スカーレットが私の罪を被って断罪された。

 ただ残念な事に、サミュエルお兄様は、紛い物と婚約してしまって、だから、偽物の侯爵令嬢と噂を流した。

 だって事実だもの、スカーレットが居なくなって、フローレンスをその地位から落とせば、高位貴族でサミュエルお兄様と年の合う令嬢は、もう私だけ…。


 なのに…私が流してない噂が流れ始めた。

 濡れ衣を着せられた悲劇の侯爵令嬢スカーレット

 聖女スカーレット、

 慎ましく清らで健気な聖母のような慈しみ深い敬虔な…

 正に、国母に相応しい。

 せっかく落としたのに、私の邪魔ばかりする。

 フローレンスなんて、落とすのは簡単なのに…!

 建国から存在する素晴らしい血統ってなによ。

 私以上に王妃に相応しい女なんていないのに。
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